最低工賃13年ぶりに引き上げ=京都・丹後絹織物業
労働局に指導要請 実施徹底へ監督強化を
京都・丹後絹織物業に従事する家内労働者などの最低工賃額が10月に、13年ぶりに引き上げられます。丹後、与謝の両民主商工会(民商)では実際に工賃の引き上げを実施させるため、京都労働局や賃金室と交渉を重ねてきました。
国会質問受け
工賃が引き上げられるのは、京都府丹後地区(京丹後市、宮津市、舞鶴市、綾部市、福知山市、与謝郡)で絹織物の製織業務に従事する家内労働者。13年11月に日本共産党の倉林明子参院議員が国会で取り上げたことが追い風になり、「家内労働者の高齢化や後継者不足のため、工賃引き上げなどの環境改善が必要である」との観点で、今年6月、京都労働局が全5品目平均で32・7%の引き上げを決定しました。
しかし、委託者・受託者・代行者など複雑な販売・生産体系のある着物業界では、基準ができてもそれが採用されることは難しく、前回改定以後も最低工賃が守られないまま、現在では13年前に決められた最低工賃さえ下回っている状態です。
産地守る機会
事前に丹後民商の111人、与謝民商の14人にヒアリングを行い実態を把握した上で、両民商は8月22日、「従業者の7割が60歳以上という丹後織物の現状を考えれば、今回の改定は丹後産地を守る最後の機会」として、京都労働局へ要請を行いました。倉林明子参院議員や市・府会議員なども同席しました。
「監督官庁として10月1日以降の管理監督を強めること」「未組織の委託者、受託者に対する周知徹底を強化すること」「監督官庁として『お願い』ではなく契約上実現すべき事項として『指導』を強めること」の3点を求めました。
労働局は「京都市内で説明会を重ねながら、それぞれの立場の意見を聞いているが、組織されていない業者のことは頭の痛い問題」と実態を説明。「上京、丹後の両監督署が中心に行政指導を行っていくが、メーカーとの直接取引以外の指導は、根拠法がないため『お願い』になってしまう。皆の協力がないと最低工賃の実現はうまくいかないので最大限対応していきたい」と話しました。
参加者は「受託者が最低工賃の順守を委託者に要請するには、仕事を失うリスクを覚悟しなければならない。その部分をフォローする仕組みがないと踏み切れない」と指導を重ねて要請しました。
懇談に先立ち5月14日、民商では、会内織物関係、受託者、代行店、京丹後市会議員、府会議員など30人が集まり、意見交換。受託者からは「仕事が来なくなるのではないかという怖さから工賃の引き上げ要求はできない」「これまで守られなかったから今度も同じ」という率直な意見が出る一方、「不十分だが上げさせた」という経験も語られました。
民商では、「今後もさまざまな立場の人の声を集めて、課題を浮き彫りにしながら交渉を進め、最低賃金を実現させていこう」と話しています。
全国商工新聞(2014年10月6日付) |