海の邪魔者・アカモクを「おみごと」に活用=岩手・宮古
海藻佃煮で震災復興に一役
「山田のおみごと」をアピールする大杉さん
岩手・宮古民主商工会(民商)の大杉繁雄さん=食堂=が発売している佃煮「山田のおみごと」が注目を集めています。材料は、地元漁師から「ジャマモク」と呼ばれ、嫌われている海藻・アカモク。調理人の知恵で、「海の邪魔者」が東日本大震災からの復興に一役買っています。
食物繊維が豊富
「アカモクは鉄分、ミネラル、食物繊維を豊富に含んでるんですよ。女性には特に食べてほしい」。8月5日、東京都内で行われた「よい仕事おこしフェア」(城南信用金庫主催)に出展した大杉さんの呼びかけに、ブースには人だかりが絶えません。試食をした人たちから「こんな海藻知らなかった」「シャキシャキでおいしい」と驚きの声が上がりました。
山田町で60年前から続く食堂「三陸味処 三五十」を経営する大杉さんは、20年ほど前からアカモクのおいしさに注目。成長すると7メートルにもなるアカモクは船のスクリューに絡まるため漁師に嫌われ、捨てられていたもの。大杉さんは、大学教授を地元に招き栄養価に関する講義を開くなど、漁師に水揚げに協力してもらうための努力を続けてきました。
食堂でラーメンやパスタの具材としてアカモクを使用してきた大杉さん。「お土産用に加工したい」と試行錯誤の末、佃煮「山田のおみごと」が完成したのは2011年3月のことでした。17日にお披露目を予定していましたが、東日本大震災の大津波により食堂は土台から引きはがされ、3日後に全焼。瓶詰されていた「山田のおみごと」もほとんどが焼失し、販売は中止になりました。
三つの味のアカモク佃煮「山田のおみごと」
漁師の収入増に
「一時はぐったりと気落ちして家から出られなくなってね、周りからも死んじゃったと思われてたんだよ」と振り返る大杉さん。周囲からの励ましを受け8月には自宅の1階を厨房に改装し、お弁当の仕出しなどで営業を再開したといいます。一から作り直して発売にこぎつけた「山田のおみごと」は、2012年には優良ふるさと食品中央コンクールで農林水産省食料産業局長賞(国産畜水産品利用部門)を受賞しました。
アカモクの水揚げ量は震災前の半分ですが、その栄養価には製薬会社などから注目が集まっています。大杉さんは、家族とともに仮設店舗で食堂を営みながら、復興フェアなどに積極的に参加し、アカモクをアピールしています。「水揚げが増えれば漁師の収入増も期待できる。アカモクのすごさを多くの人に知ってもらい、地域の復旧につなげていきたい」
甘じょうゆ味、青じそごま味、みそ南蛮味の3種類で各620円。
Tel・ファクス 0193・82・3510
全国商工新聞(2014年8月25日付) |