全商連トップページ
中小施策 税金 国保・年金 金融 経営 業種 地域 平和・民主 教育・文化 県連・民商 検索
 全商連とは活動方針・決議署名宣伝資料調査婦人部青年部共済会商工研究所発行案内入会申込リンク
  トップページ > 業種のページ > 製造・小売 > 全国商工新聞 第2977号 6月6日付
 
業種 製造・小売
 

東日本大震災 復興やりとげる! 地域雇用を確保=宮城・石巻


 「そっち持て、そっち! よし、上げるぞ!」―。東日本大震災から2カ月余り、宮城・石巻民主商工会(民商)会長の渡邊金夫さん=電機設備=は、従業員とともに被災地域の復旧に全力を挙げています。「街を再生し、支えるのは中小業者。地域の中小業者の生活と商売を支え、震災を乗り越えたい」と決意を新たにしています。

Photo
崩れた水産団地の工場。渡邊さんはこれらの工場に入り、建て直すため作業を進めています

 石巻市は震災で壊滅的被害を受け、街の姿は一変しました。沿岸部の住宅街や水産団地(加工場や冷凍施設)は跡形もありません。渡邊さんの自宅や作業場にも、1メートルを超える黒い津波が押し寄せました。しかし、幸いにもいくつかの機材は流されずに残りました。「これならすぐにでも仕事ができる」と震災直後から仕事を再開。使える冷凍機や電気機器の修理・設置のほか、1年以上かかる大掛かりな電気系統の設置工事の依頼も受け、従業員とともにフル回転の日々を送ります。
 「信頼を培うことが何より大切」と、開業から24年、お客さんの目線に立つことを心がけてきました。仕事を重ねる中で税金や融資、労働保険などで質問・相談を受けることも多く、そんなときには民商で得た知識を活用して応えてきたといいます。
 「例えば国や自治体がつくった中小業者への新しい融資制度などを教えるとお客さんは喜んでくれ、今まで以上に信頼を寄せてくれます。民商で得た学習や実践は、お金に代えられるものじゃない」

Photo
若手従業員らとともに、使える冷凍機を運び修理します

技術や知識は伝えて残せる
 技術者として生きる中で、「技術や知識は伝えることで残せる」と実感。人づくりを心がけて従業員を育成し、生活を守ることを大切にしてきました。
 震災後、電気配線の改修工事中に地震と津波で自宅と会社が流され、住むところも働く場所もなくなった青年労働者と出会ったときも、考えた末に雇うことにしました。「この大変なときに…と妻に苦笑されましたが、誰も辞めさせるつもりはありません」。
 これまでも、障害や体・心の病を抱え、社会に溶け込むことが困難な青年たちを雇い育ててきました。「辞めてしまうかなと思ったこともあったが、彼らは3年、6年と続けてくれている。1人は経理を統括してくれるほどに成長して、私が逆にパソコンを教わっています」と笑顔。また旅館を廃業した40歳の男性を雇用し、見守り指導してきました。「離婚と破産が重なり、本当に背水の陣だったろうと思います。『車で海に飛び込んで自殺しようと何度も思った』と言っていた彼も、もう57歳。今ではうちの主力社員です」。語る顔には、優しく誇らしげな笑みが浮かびます。
 震災後、「今まで以上に専門分野を学習して技術と技能を磨くことが、技術者として、中小業者として生き残る道だ」と実感しています。

民商と共に必ず復興を
 今なお多くの友人や知り合いが行方不明のままです。「彼らのことを思うと胸が締め付けられる」。いまだに捜索が行われていない地域、人手が足りずに放置されたままのがれき、地盤沈下により大潮時には水没する沿岸部など、復興までにかかる時間は計り知れません。周辺の漁業者の約3割が廃業すると予想され、関連する水産工場や造船・鉄工業なども危機的状況です。
 民商には漁業に携わっている会員も多数います。「今までとはまったく異なる運動が必要」と民商会長として決意しています。先々を見据えて今後の方針を考え続けていますが、1000人もの会員を導くだけに苦悩は尽きません。そんな中でも、税金相談や商売再建に向けて融資相談に訪れる会員も多く、民商への信頼の厚さを実感する毎日です。
 「必ず復興させると、やりとげる意思を持ってやれば必ず実現できる」。渡邊さんは街の復興に向け、民商とともに被災者の救援や仕事確保、震災前の借金をゼロにしてのスタートなどの実現をめざし、国や自治体との交渉に取り組んでいます。


▽東部電機工事
創業=1987年
事業内容=電気・冷凍・空調設備の設置
従業員数=7人
所在地=宮城県東松島市赤井字川前2の203の1
TEL・ファクス=0225-83-4847
全国商工新聞(2011年6月6日付)
   
  ページの先頭