クリーニング業建築許可 国が運用方針 経営維持に配慮を
引火性溶剤の使用をめぐってクリーニング業界が揺れています。大手クリーニング会社が建築基準法に違反して操業していたことが発覚したことを機に、国土交通省はクリーニング事業者の本格的な実態調査に乗り出しました。その結果をまとめ、6月末をめどにクリーニング業の建築許可にかかわる運用方針が示されます。町のクリーニング店からは「営業が続けられるのか」との不安の声が広がっています。
クリーニング機材商 営業継続へ支援要請
ことの始まりは昨年7月。大手クリーニング会社が建築基準法に違反して、引火性の石油系溶剤を使用していたことを商業紙が報道しました。年末にも別会社の違法操業が新たに発覚し、立て続けに行政指導を受けました。事態を重く見た国土交通省は1月28日、ドライクリーニング業を営む工場3万2000社を対象に実態調査を実施する通達を都道府県に出しました。
千葉県鎌ケ谷市で「CST」を営むTさんは送られてきたアンケート用紙に記入し、返送しました。「引火性溶剤を使用しているので、絶対に火災を起こしてはいけないと保管や火の元には特に気を使っている。近隣の人たちが安心して生活できるような環境を確保するのは当然のこと」と話します。
溶剤許可の基準不明確
クリーニング業者が引火性の溶剤を使用する場合は、建築基準法第48条で用途地域が制限され、住宅地や商業地域などでの建築(操業)は禁止されています。しかし、同法は「但し書き」で例外許可を認めており、住宅地域であっても地方自治体が許可した場合、建築ができるようになっています。
ところが「但し書き」は地方自治体が例外許可をする場合の具体的な基準を示さず、国土交通省は、安全対策などの基準を運用方針で示そうとしています。一方で、開業の届け出時に建築基準法の規制がチェックされないなど、地方自治体の対応の不十分さが指摘されています。
国土交通省の馬淵澄夫副大臣は国土交通委員会で(1)引火性溶剤の保管方法(2)乾燥機等の爆発防止策(3)建築物の防火装置―対策を講じることを「例外許可」の解釈にする方向を示しました(表)。Tさんは「乾燥機の爆発防止策で新たな設備を導入しなければならない可能性がある。クリーニング店は原油高騰以来、どこも厳しい。設備資金を確保するための低利の融資や補助が必要」と訴えます。
建築基準法違反の発覚後、石油系ドライ機関連の予約契約の解除やストップ、買い控えの状況が広がり、組合員が経営危機に直面する全日本クリーニング機材商協議会(機材商)は1日、国土交通委員会理事の村井宗明衆院議員(民主)に要望書を提出。(1)石油系ドライ機について洗浄用洗剤を適正に使用する(2)内胴ドラムにアースを設置する(3)石油系溶剤の保管は熱源から一定の距離をとり、室温で保管する(4)石油系乾燥機の日常の保守点検の励行(5)石油系ドライ機内の溶剤はマイナス15度以下の温度を保つ―の安全性向上対策を示し、クリーニング事業者が廃業に追い込まれずに操業できるように要望。同時に対策を講じるための融資や金利、税制上の優遇措置、補助金などの支援を求めました。
資金面で支援を
機材商は約150社の卸業者が加盟し、クリーニングにかかわる資材、洗剤、機械の販売と流通、機械導入からメンテナンス、情報の提供などを行い、クリーニング事業者と密接に関係しています。「古い機械になれば、静電気モニターや溶剤冷却装置など後付けできない場合もあり、新たな設備投資が必要になる。経営が厳しいなかで資金繰りがネックになって安全対策がとれないケースも出てくる。資金面での支援を」と田中栄一事務局長は強調します。実際に、クリーニング店からは「新たな機械を入れるなら、廃業だ」との声も上がっています。「個人のクリーニング店は地域に密着して頑張っている。クリーニング店が廃業に追い込まれることのないような対策を講じてほしい。同時に、われわれも地域住民の信頼を回復させるための責任を果たしたい」と田中事務局長は話しています。
経営指示に配慮を
全商連 国交省に要望書
全国商工団体連合会(全商連)は3日、「地域密着型のドライクリーニング店の経営維持に配慮したガイドラインの作成と柔軟な対応を求める要望書」を国土交通省に提出しました。
国交省へ提出した要望書の詳細はこちら
⇒ドライクリーニング業・建築基準法48条「但し書き」の運用方針に関する緊急要望の報告
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