下請け製造業者585社からアンケート=愛知
「元気な愛知はどうなっているのか」‐こんな議論から始まった愛知県商工団体連合会(県連)の「下請け製造業者1000社アンケート」。浮かび上がってきたのは単価の切り下げを半数以上が要請され、7割が将来不安を抱える深刻な実態です。訪問した先々で県連・民主商工会(民商)への信頼と期待も語られた対話活動は苦境打開と要求実現へ新たな活力を広げています。
「民商です。仕事についてのアンケートにきました」。名古屋市内の(有)久野鉄工所(久野孝善社長)を訪問した愛知・中川民商の磯部周史副会長=理容=が声をかけました。
「仕事はどうですか」とアンケートを広げる磯部さん。久野社長は油で真っ黒になった手を見ながら「いつ倒産するか分からないよ。売り上げはリーマンショック(08年9月)前の4割。材料費が上がっても単価は同じ。実質工賃の値下げだね」とため息をつきました。
中川民商は70社を訪問し、50社と面談。磯部さんも7社を訪問し、5社からアンケートを集めました。
「工場を訪問するのも初めて。アンケートをしてからまちの工場に目がいくようになりました」といいます。
トヨタショック
愛知県は日本有数の自動車産業の集積地。4万5000社を数える製造業がそれを支えています。リーマンショックで仕事が激減したところへ追い打ちをかけたのがトヨタショック。そのトヨタは「中国並み価格を部品各社に要請」し、下請け製造業者は苦境に追い込まれています。
ところが、県が4月6日に発表した「中小企業業況調査」は「中小企業の業況判断、改善続く」でした。
「苦しんでいる中小業者の生の声をつかんで、県や中部経済産業局にぶつけよう。今こそ民商の存在意義が問われている」。県連の常任理事会が出した結論が1000社アンケートでした。
県連にとっても製造業に絞った本格的なアンケート調査は初めて。仕事量の変化、今後の見通し、単価切り下げ要請の有無など県連・26民商が、4月12日から対面調査を実施。2週間で845社を訪問し、585社から回答を得ました。
仕事減9割超に
仕事量の変化では、9割以上が「仕事減」と答え、「仕事の今後の見通し」では「良くなる」は6%に過ぎず、「悪くなる」は30%。「わからない」との回答を合わせると7割以上が不安を抱えていることが判明。県の調査項目に入っていない「単価の切り下げ」では「あった」と回答した業者は52%と半数を超えました。
「今こそ民商の出番」
愛知県連 結果踏まえ県交渉へ
県の調査と正反対の結果が出た県連・民商の調査。対話でも「とにかく仕事がほしい」「単価の切り下げだけはやめてほしい」などの切実な声とともに、「もっと早く来てほしかった」「県などとの交渉結果をぜひ知らせてくれ」など、かつてない民商への期待の声が寄せられました。
会外業者を飛び込み訪問した津島民商の戸田敏男会長も、民商への期待を実感した一人。「訪問をすると対話も弾む。それだけに今大事なのは、地域の業者と対話のキャッチボールをすること。民商の実績を宣伝し、交渉の結果も伝えていく。それでこそ民商の魅力も伝わるのではないか」といいます。
県連ではアンケート結果をもとに、今後、愛知県や中部産業局とも交渉を予定。その結果を、訪問した業者すべてに伝えることにしています。
長引く不況に加え、ガソリン車から電気自動車へと大きな産業構造の転換に直面する自動車業界。下請け業者の多くがその波にさらされています。
訪問を通じ「今こそ民商の出番」と力を込める太田義郎県連会長はいいます。
「仕事の見通しに不安が広がっているのは、産業構造の大きな転換もあるが、一人ひとりの業者が情報からも孤立しているからだ。これまで民商を見向きもしなかった業者も同じ悩みを抱えている。全業者を訪問し、対話し、その結果を返していく。そうした活動が今求められているし、それができるのは業界の利害の枠を超えた組織である民商ではないか」
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