ヤマダ電機が学校テレビ独占「地元業者に発注を」=京都
入札基準の見直しを求めて京都市教委に申し入れる京商連
政府が緊急経済対策事業の一つとして推進している「スクールニューディール構想」(注1)で市立学校にデジタルカラーテレビの導入を進めている京都市。「入札」の結果、家電量販店大手のヤマダ電機(本社・群馬県高崎市)が「独占」落札していることが分かりました。京都府商工団体連合会(京商連)は8日、「中小企業の受注拡大につながらない」として、同構想にかかわる入札基準の見直しを門川大作京都市長に申し入れました。
問題となったのは、1日に実施された市教委発注の市内全区の校長室・職員室用の入札。ヤマダ電機が、4417万円(税抜き)ですべてを落札し、中小業者の受注拡大とはまったく無縁な落札結果となりました。
申し入れで京商連は、スクール・ニューディール構想推進にあたって塩谷立文部科学相(当時)が「地域の中小企業の受注機会に増大に努め…地域の活性化に資するよう」自治体に要請していたことを指摘。「市は要請に対する配慮や柔軟な運用がまったくないまま、大企業優先の施策を進めている」と厳しく批判しました。
市側は「WTO(世界貿易機関)の協定(注2)で、3500万円以上の入札は一般競争入札になる」と回答。京商連は、福岡県では同構想の入札で「今年度に限り県内中小企業であることを条件としている」ことを紹介し、入札基準の見直しを強く求めました。
京商連の申し入れもあってか、10日の入札で、ヤマダ電機が落札したのは1カ所にとどまっています。同構想をめぐる入札では、昨年10月末に行われた横浜市立の全513校にデジタルテレビなどを配備する入札でもヤマダ電機が7割弱を“独占”受注し、議会で取り上げられたことがあります。
〈解説〉
中小業者に恩恵はない
スクール・ニューディール構想をめぐって大手量販店が独占落札したことは、文部科学省がうたう「中小企業の受注機会の増大」が「絵に描いたもち」であることを示しました。今回、浮かび上がったのが、日本政府も加わる「WTO政府調達協定」です。外国企業の参入を促すことが目的で、政令指定都市などが一定額の物品調達をする場合、原則として一般競争入札を実施することが定められています。
調達協定それ自体の検討も必要ですが、京都市の場合、家電量販店大手のヤマダ電機が独占落札したことです。市内の電器商から「国内大手企業の参入を促しているだけではないか」と批判が上がるのも当然です。
一方、福岡県では同構想にかかわる入札参加企業について「今年度に限り、県内中小企業であること」を条件にしています。
当然、福岡県も政府調達協定の適用を受けますが、京都市と違い「事務委任規則」によって物品などの発注権限を、財務担当所(学校長、保健所長など)に委任。より小さな単位で発注できるため、入札条件を「県内中小企業」とすることが可能となっています。
文科省が「中小企業の受注機会増大」に本気で取り組むなら、こうした発注の仕組みも含めた真剣な検討が求められています。
(注1)スクールニューディール構想…政府の追加経済対策として09年度補正予算に盛り込まれたもの。学校施設における(1)耐震化(2)エコ化(3)情報通信技術‐の推進。このうちICT(情報通信技術)化の事業費総額は4000億円で、主な内容は(1)すべてのテレビをデジタル化(2)校務用コンピューターは教員1人1台の設置(3)教育用コンピューターは児童生徒3・6人に1台の設置(4)すべての普通教室に校内LANを設置‐というもの。
(注2)WTO政府調達協定…1996年1月に発効した政府調達に関する国際条約。政府調達に国外企業が参入しやすくするように、一定額基準額以上の物品やサービスの調達に際して所定の手続きを取ることを定めたもの。物品やサービスによって基準額は異なる。
適用範囲は中央政府、政府関係機関と都道府県、政令指定市。政令市では、3500万円以上の調達の場合、原則として一般競争による入札実施が定められている。発効以来国内で違反に問われた事例はない。
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