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三菱自動車系の下請いじめ=告発手記
「もう下請けいじめには黙っていられない」―。顔も名前も出して、親会社を相手にたたかっている中小業者がいます。岡山県美作市の松田孝二さん(50)=アルミ鋳造業。今年2月、三菱自動車の一次下請け会社「共和鋳造所」(岡山県井原市)を下請代金法違反で中小企業庁に告発し、4月24日には減額された代金の返済などを求め三菱自動車や「共和」本社にも交渉に訪ずれました。松田さんはメーデー会場(岡山)でも実態を訴え、民商、労働組合などによる共闘支援組織も生まれています。
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三菱自動車水島製作所に申し入れる松田さん(右から2人目)ら |
別項=松田さんの手記
「共和」さんとのつき合いはオヤジの代からでもう40年になります。
オヤジの会社は1981年、多額の負債を抱えて倒産。当時、私も大学から戻って手伝いをしていました。破産も考えたのですが「共和」の前社長(現会長)から「親子でもう一度立ち上がれ」と励まされて、500万円を借り、会社を再建しました。
低単価押し付け 91年から急に
「共和」との関係が変わったのは91年。三菱自動車の増産に伴うエンジン関連部品を「共和」から頼まれました。しかし単価が低すぎる。私は断りました。ところが会長から「ラインを止めると三菱から違約金を取られる。単価を上げるから」と泣きつかれたのです。
結局、単価を引き上げてもらって、承諾しましたが、そのやり方は「単価を上げずに空伝票を共和に入れる」というものでした。
3カ月後には「もっと生産性を上げろ。そのためにロボットを導入しろ」といわれました。再三断ったのですが、共和はロボットメーカーまで連れてきて、導入させられました。代金は950万円かかりました。
突然の製造停止 民商が助けに
ところが導入から5カ月後、会長から直接「共和でラインが整った。製造をやめてくれ」と突然連絡が入りました。10日後には「単価の上乗せ分を引かせてもらうから」と通告されたのです。
届いた伝票を見たら、1130万円が引かれていました。下請け代金は毎月1500万円ぐらいですから、その9割ですよ。このなかには従業員の給料や材料費、買掛金も含まれています。
従業員は35人いましたが、25人に辞めてもらいました。それでもお金は足りない。退職金や買掛金などで必要な資金は3700万円にもなりました。
そのときにまた共和の会長が提案してきたのです。「それをまとめて借り入れにさせてやる」と。しかも7・5%の利子付きです。私はそれでも毎月払ってきました。仕事を確保するため仕方なかったのです。でもそれが「借金地獄」の始まりでした。
資金繰りに困ってサラ金にも手を出しました。もちろん、自分のことには一切使っていません。それを助けてくれたのが、津山民商でした。
「共和」と取引をしていたら、殺されてしまう。そんな思いで、昨年秋以降、単価値上げの交渉と不当な代金差し引きの返還を求めたのです。その結果が12月26日の金型の強制撤去。高い利息分を含め、私が「共和」に返したお金は1億円近くになるでしょう。
それなのに、一番困ったときに手を差し伸べてもくれない。その非情さ。あくどさ…。もう黙ってはいられない。許せない、というのが今の私の気持ちなんです。
もう黙っていられない=下請代金法違反で交渉
「共和」との交渉には、松田さんのほか岡山県商工団体連合会(県連)、津山民主商工会(民商)、日本共産党の武田英夫県議ら8人が参加。
「共和」による下請け代金法違反事件とは、同社が91年から05年まで下請け業者である松田さんに代金をいったん支払ったにもかかわらず、「ラインができたから」「もう部品がいらなくなったから」などの理由で、総額4600万円にも上る代金を不当に差し引いてきたもの。
松田さんは昨年11月以降、代金の返金とそのための協議を求めてきましたが、「共和」は昨年12月26日、突然「金型の引き渡しを求める」強制執行を行い、以後話し合いにも応じてきませんでした。
この日の交渉で松田さんは、共和による下請けいじめの実態を告発し(別項)、誠意をもった話し合いを求めるとともに、下請代金法違反項目((1)書面の交付・書類の作成・保存義務(2)下請代金の減額(3)返品(4)買いたたき(5)不当な利益供与)について文書での回答を求めました。
共和社長と交渉 文書で回答約束
社長は、話し合いについては「やぶさかではない」と応じる姿勢を明確に示すとともに、指摘された5項目についても「5月末をめどに文書で回答する」と約束しました。
また松田さんの告発以降、中小企業庁から同社の下請け先10社に調査が入ったことを認め、「7月7日までに文書で改善報告を求められている」ことを明らかにしました。
松田さんらはこの後、三菱自動車水島製作所にも出向き、「発注者として問題解決を図るよう」に要請。応対した管理部門の幹部らは「本社に伝える」と答えました。
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