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急減する需要とたたかう全国畳振興会
変わる業界―伝統を守りながら畳の可能性探求
新しいアイデアと消費者への提案が業界活性化のカギ―。畳業界関係者の口から共通して出てくる言葉です。日本の生活文化に根ざし独特の空間をつくりあげてきた畳。しかし生活・建築の洋風化に伴って、畳業界は大きな曲がり角を迎えています。
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イグサのよさを体感できる「畳の名刺入れ」 |
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♪お部屋の空気をキレイにするなら 畳を敷くのが一番よ だってイグサは吸うのよCO2 畳パワーは湿気も吸っちゃう♪
イグサ生産者や畳店、畳材の商社などの団体でつくられた「全国畳産業振興会」のホームページ。「畳メイド」が歌い上げる「畳ビズのうた」です。
「畳を使って地球温暖化を防ごう、そして畳需要の底上げをと考えたんです」。振興会の神邊謌皷長は言います。急減する畳需要をどう回復させるか‐。その中で出てきたアイデアの一つでした。
同振興会では、畳の新市場を開拓するため、07年に「新時代の畳活用法のアイデア」を初めて公募。「業界内だけでは新しい発想は出てこない」(神邊会長)という思いからでした。最優秀賞は「たたみでゴロ寝カー」。自動車内の内装を畳で作るというアイデアでした。
「畳ビズのうた」の発表は翌08年。このほかにもイグサを使った「畳の名刺入れ」「合格の畳におい袋」などを発売、今年は「畳の表替え無料モニター」を募集しています。
「畳業界はこれまで、消費者、お客に積極的に新しい提案をしてこなかった。だからいま新しい挑戦が求められているんです」。神邊会長の言葉にも力が入ります。
減っていく和室
「『和室はあっても一部屋か二部屋』、今ではマンションなどの集合住宅では和室そのものがなくなり、その現象は都心だけでなく地方にも広がっている」と全日本畳事業協同組合の紅楳能久事務長は指摘します。
イグサで作る畳表の年間需要量も、93年に4500万畳だったものが08年には1720万畳とほぼ3分の1に減少。畳業者数も全国で約1万4000人(05年国勢調査)で、「10年前に比べ半減」しました。
神奈川県大和市の畳工業組合の阿部實組合長(大和民商会長)も業界の「衰退」を実感しています。
同組合に加盟している畳業者は20年前に比べ3分の1の9軒。阿部さんの3月の畳の出荷枚数は七十数枚(9割が表替え)で、「月100枚を切ったのは、45年の畳屋の人生で初めて」という厳しさです。
「店の前で行われていた畳の手縫いが、今は機械織となって、消費者に畳屋の姿が見えなくなっている」と話す阿部さん。店の前に畳の良さを伝えるチラシなどを張り出したり、低農薬で生産したイグサ農家との連携も模索しています。
畳の良さ伝えて
「畳の良さをどうやって伝えていくか」と模索しているのは全国畳事業協同組合の増田勇会長です。いつもパソコン、プロジェクター、ブルーのシーツを持参。シーツをスクリーンにして、「建築士さんや建設業界、近所の集まりでもちょっとした時間があれば、どこでも話をします」
畳屋になって52年の増田会長。「なりふり構っている時じゃありません。みんなが恥も捨ててチャレンジしていくこと。それでこそ業界は活性化するのではないでしょうか」
全国に7億枚も
1300年の歴史を持つ日本の畳文化。今、需要減の一方で、畳をクッションとして使ったり、インテリア的な要素として注目を集めています。
先の神邊会長はいいます。「日本全国に敷かれている畳は約7億枚。大企業には1枚1枚違う畳を部屋に敷きこむ作業はできない。現状は厳しいが、大きな可能性を秘めています。伝統を大事にしながら、新しい提案、アイデアをどう出すか。問われているのは業界そのものです」
畳の豆知識
・健康・安全な畳の効能
(1)優れた吸放湿性がある。部屋を快適に保ち、高温多湿な日本の住まいに適している
(2)シックハウスの原因となる二酸化窒素やホルムアルデヒドを吸着し、空気を浄化
(3)イグサの成分に含まれる香りには鎮静効果がある。心身ともにリラックスできる
(4)断熱性と保湿性に優れていて、夏は涼しく、冬は暖かい
(5)弾力性、防音性にも優れている
・畳のリフレッシュ
裏返し=新畳を入れてから2〜3年目に畳表を裏返しにして張りかえる作業
表替え=裏返しをした畳表が傷んだら、畳床を生かして新しい畳表に取り替える作業。3〜5年目が目安
畳床替え=畳床を含め全体を取り替えること
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