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<事業継承>今治タオル縫製刺しゅう
注文どおりの仕上げに自信
吸湿性にすぐれ、やさしい肌ざわりの今治タオル−−8割を超す輸入ものにおされるなか、品質のよい製品づくりで地域経済に貢献している業者を訪ねました。
セーフガードとは=政府による緊急輸入制限措置のこと。特定品目の輸入が急増し、自国の産業に重大な損害を与え、または与える恐れのある場合に、その品目について輸入制限を課することができるとWTO(世界貿易機関)で認められています。
今治タオルの特長
四国タオル工業組合は、今治タオルの最高品質を保証するために、吸水性や耐久性などの独自の品質基準を制定。基準に合格した商品には、今治タオルのブランドロゴ・マークが付いています。
同組合は昨年5月、癒やしや自然環境へのやさしさをイメージしたオリジナルブランド「ふわり」を設立。軽くて柔らかな感触、優しい肌触りを体感できる製品をそろえ、マフラーやバンダナといった新分野にも挑戦しています。
タオルに写真を織り込む技術「美写紋」を開発し、特許を取得したメーカーも。写真や絵とそっくりな模様が織り込まれ、人気商品となっています。
こういった業界の努力が実り、今治タオルの認知度もアップ。昨年11月に今治商工会議所などが取り組んだ全国アンケート調査の結果によると「知っている」と答えた人は50・2%に。04年に四国経済産業局が行った調査結果の36・6%を上回っています。
染色・織り・縫製・加工をすべて、最盛期は500社=父親・小野和紀(68)さん
04年に政府が、セーフガード発動を拒否して以来、輸入浸透率が80%を超えました。最盛期に500社を超えていた今治のタオル製造会社は100社にまで減少。造船も不振となって地域経済は壊滅的な状況です。最近は、今治大丸の閉店、ハリソン東芝ライティングの派遣社員削減が相次ぎ、雇用も破壊されています。
今治のタオル業界は、染色、織り、縫製、加工の作業のすべてを地場で行って商品化し、地域の産業と雇用を担っています。地域経済を守るためにも、国や自治体は支援を強めるべきです。家業は息子や社員の奮闘もあって、何とかやっています。私も民商の副会長として、商売や地域を守る運動に尽力したい。
(株)フジショウ
92年に和紀さんが義兄から工場・設備を引き継ぐ。02年に(有)フジショウとしてバスローブ、ベビー服などタオル生地製品の縫製や刺しゅうを始める。現在は、父・和紀さん、母・津奈美さん、妻・実喜子さんで経営。従業員は20人。
愛媛県今治市古谷甲897
Tel:0898・56・2464
複雑な縫いつけ、デザイン重視で=息子・小野譲二さん(40)
「カタカタカタカタ」と、慣れた手つきでミシンを動かす譲二さん。「継ぐことが普通だと思っていた」といいます。
高校卒業後は愛知県の大学に入学。経済学を学び、体育会系の運動部に所属しました。充実した学生生活を過ごしますが、「親元から離れて暮らしても、郷里の風景が常に心の隅にあった」と振り返ります。
友人たちが就職活動で忙しく奔走する最中、実家に電話をしました。
「今治へ帰ろうと思うが、就職はある?」
電話を受けた父・和紀さんは「うちに来い」とだけ返事(当時は和紀さんの義兄が社長)。最も信頼する父の一言で、帰郷を決めました。
今治へ戻って1年ほどした後、見聞を広めようとタオル製造会社に就職。問屋への営業・デリバリーを任されました。
8年ほどたった時、輸入タオルが国内シェアの50%を超えるまでに。今治のタオル製造会社はリストラを余儀なくされ、譲二さんもこの時に退職し、家業に戻りました。
家業はタオル生地を使ったベビー服やバスローブなどを縫製し、アパレルメーカーなどに納品します。
譲二さんは、顧客への営業・配送を主に行っていますが、時には作業場でミシンを動かしたり、製品や材料の管理など「なんでもやる」と笑顔。
デザイン重視の製品が多く、形状が複雑で、縫い付けが難しい注文がきます。
「どうしても無理な場合は仕様を変えてもらうこともあるが、できるだけ注文通りに仕上げるように、食らいついていく」と顧客に満足してもらうための努力は惜しみません。
最近は、2人の子どもが作業を手伝うことも。
「小遣い稼ぎだが、やっぱりうれしい」と、はにかむ譲二さんです。
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