地域密着の組合で建設業者が受注拡大=滋賀・大津
民商会員ら建設協同組合を結成 「任せて安心」と評判
「住まいのことなら安心と信頼のネットワークに」―。滋賀・大津民主商工会(民商)の建築業者が立ち上げた「滋賀大津建設協同組合」が受注を拡大しています。ちょっとした改修から増改築、新築、塗装、屋根、造園、太陽光発電まで住宅に関するあらゆる要望に応えています。お客さんから「住まいづくりの相談者」と喜ばれ、建設業者も元気を取り戻しています。
上:協同組合がリフォーム工事を受注したO邸 下:O邸の床を張り替える
力を合わせての共同受注に活路
大津市の日吉台団地。2000戸ほどの住宅が立ち並ぶ一角で、「滋賀大津建設協同組合」の組合員が大粒の汗を流しながらリフォーム工事をしています。左官、大工、塗装、足場、電気、タイル、サッシの建設関連業者が携わっています。その一人、Kさん=塗装=は「せっかく組合が受注した工事なんで、いい仕事をしたいと思ってます。組合に入って知り合いも増えたし、仕事も楽しい」と笑顔がこぼれます。
足場を作ったMさん=とび=は、これまでに6件を受注。「組合結成の話を聞いて、面白そうやなと思った。一人ではできないことも、組合だから受注できることもある。やりがいを感じる」と話します。
Nさん=工務店=は現場のまとめ役。工期が遅れると「何をしとるんや」と厳しい声を飛ばします。「職人は腕に技術があっても営業ができない。一人では仕事を取るのは難しい。組合で共同受注できてうれしい。若い人にも技術を継承したい」と胸を張ります。
依頼主のOさんは「家が生まれ変わるのが待ち遠しい。『湖都』の社長には以前に玄関の土間回りの仕事を頼んで、丁寧な仕事をしてくれた。価格は安いし、任せて安心」と信頼を寄せています。
(上)協同組合の仲間 (下)看板を掲げて協同組合をアピールしています
30件の仕事受注組合員は36人に
「湖都」の社長とは、協同組合理事長の山田啓造さん。大津民商の副会長で拡大推進委員長です。「協同組合を成功させるポイントは、仕事の受注能力がある人が中心に座るかどうか。お客さんはいろいろな要望を持っている。それに応えるためには説明する力が必要で、建築物に関してあらゆる知識がなければ、仕事は受注できない」と強調します。
山田さんは40年間培ってきた知識を生かし、これまでに30件ほど組合の仕事を受注。受注金額は2000万円を超えました。組合で調査した市場価格を参考に見積書を出し、組合員に順番で分離発注しています。「組合が利益を出すことはないので価格は安い。しかも技術力のある職人がそろっているので安心できる。個人住宅のほか特養ホームやグループホームなどの建築も請け負える力があるので年間1億円ぐらいは受注できる」と自信をのぞかせます。
組合は12業種の建設関連業者24人が名を連ね、5月17日に設立登記(組合成立)しました。現在、組合員は36人に増え、そのうち12人は民商の会員外の業者です。山田さんが声をかけ、KさんやNさんを含め全員が商工新聞読者になっています。
結成後、「湖都」を間借りして組合事務所をつくり、事務局員も配置。カラーの宣伝チラシ4000枚を作製し、組合員が手配りするほか、毎月1回ペースで一般紙に折り込んでいます(左の写真)。これらの費用は運営費(受注額の5%)でまかなっています。
仕事おこしで組合づくりへ
組合結成に動き出したきっかけは建築業者からの相談でした。「仕事がない。なんとかならないか」とここ数年、「湖都」に相談に飛び込んでくる業者が増加。中にはまったく面識のない人もいました。
仕事を紹介するものの、個人では限界があると実感した山田さん。思い立ったのが組合による共同受注でした。神奈川県や大阪府の協同組合から資料を取り寄せ、昨年6月に民商の仲間に相談。滋賀県商工団体連合会(県連)の経営対策部長(大津民商常任理事)を務める吉川幸弘さん=鉄工=は「県連でも経営対策を強めたいと話していたので、協同組合の設立は願ってもないことや」と喜び、民商会長の喜多健吉さん=機械組立=とも相談しながら設立準備を進めました。
民商会員600人の中から建設関連の278人に組合づくりへの参加を呼びかけ、山田さんや喜多さん、吉川さんら5人が発起人となりました。滋賀県から設立許可を得るため、定款や事業計画、収支予算書などを作成しました。県とのやり取りで手間取ったのは予算書の作成。何度もやり取りをして5月7日にようやく認可が下りました。
まちづくりにも積極的に参加し
今、大津市では町家を再生した“湖族の郷”のまちおこしの話が持ち上がっています、協同組合にも「知恵を貸してほしい」との相談が寄せられ、山田さんたちは「組合としてもまちづくりに積極的にかかわって仕事を確保し、民商の仲間も増やしたい」と意欲を見せています。
▽建設協同組合とは
中小企業等協同組合法第27条の2第1項に基づいて設立され、都道府県から認可された組合法人です。
認可を受けるには一定の手続きが必要で、別表のような手順となります。
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