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もうがまんできない、原油高
農協、漁協、バス協会など共同連帯
岩手 緊急対策求め大集会
「共同と連帯の力を感じた集会だった」‐‐。5日、岩手県盛岡市の教育会館で開かれた「もうがまんできない!原油高!消費者・生産者・事業者緊急大集会」。農協、漁協、バス協会など県内12団体(別項)が主催した画期的な集会には800人を超える人たちが参加しました。「石油備蓄を取り崩して税金を引き下げよ」「投機マネーを規制せよ」の要求を掲げ、「手を横につないで原油高の危機を打開しよう」と商店街でのアピール行進でも市民の注目を集めました。
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緊急大集会のデモ行進。生産者や事業者、消費者の代表らが怒りのこぶしを突き上げました |
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原油高騰への怒りがうず巻いた緊急大集会。800人が参加しました |
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民商の仲間も「下げろガソリン!上げるな消費税!」の声を上げ、デモ行進に参加しました |
12団体が一堂に
原油高に対して消費者、生産者、事業者の団体が共同して集会を開いたのは全国でも初めて。生協や消費者団体が幅広い団体に共同を呼びかけ、実現したものです。
制服で参加したバス会社社員、鉢巻きをしめた農協関係者、パレードで「諸物価値上げ小○」のむしろ旗や「つぶされてたまるか」などのプラカードを掲げた民主商工会(民商)会員…。そろわないシュプレヒコールも幅広い共同の象徴でした。
集会では、主催者あいさつした岩手県生協連の加藤善正会長理事が「地震、大雨の被害に遭った岩手に原油高という台風が直撃した。今こそ横に手をつないで共同の取り組みを」と強調。12団体代表が壇上で紹介されると、会場から大きな連帯の拍手が響きました。
「生産者・事業者・消費者からの訴え」では、それぞれの立場から深刻な現状が語られました。
農業もギリギリ
JA岩手県青年組織協議会の岩崎隆さんは「石油の高騰で飼料・肥料の価格は上がり、もうギリギリの状態を超えている。生命維持産業の農業は危機に立っている。私たちは安心・安全にこだわり、食卓を守っていきたい。そのためにも緊急対策を確立してほしい」と強調。
林業も限界超え
「『立ち木を見る』と書いて親という字になる。林業者は、50年、100年かけて木を育て、100年後のために木を植えている」と切り出した岩手中央森林組合の菅原和博さんは「木材価格の低迷に加えて原油高。もう林業は限界を超えている。環境問題を考えても、自国や自分のためだけという考え方は許されない」と訴えました。
お客の足が第一
バス会社を経営する松坂陽子さんは「どこかの総理のように『や〜めた』と会社を辞めるわけにはいかない」とユーモアを交えながらも「燃料の軽油が上がったからといってバスの運賃は上げられない。従業員の生活、何よりお客さまの足を守るために必死。物価は上がり、下がるのはどこかの内閣の支持率と私の給料だけ。おとなしくしないでみんなで声を上げましょう」と呼びかけました。
胸に響き元気に
「興奮を覚えた集会でした」と話してくれた米農家の伊藤智雅子さんは「一人ひとりが真剣な言葉で語っていた。これから稲刈りで、また燃料代がかさむ。でも元気になりました」。バス会社の制服を着て集会にも初めて参加した20代の女性は「原油高騰が本当に他人事ではないと思いました。集会は楽しかった。新聞やニュースを見る目もこれからは変わってきそうです」。
生協に勤めて30年以上になる渕向ちえさんは「灯油が高くなると生活が大変と思っていましたが、農業や漁業、バス会社も本当に大変なんだと実感できました。皆さんの言葉が胸に響きました。この思いを全国に伝えたい」と決意を語ってくれました。
大勢の民商会員も集会に駆けつけました。盛岡民商のIさんは「月20万円だった燃料代が40万円に上がった。とてもやっていけない。国の責任が大きい。もう自公政権には政治は任せられない。連帯をさらに広げて政治を変えたい」と力を込めて話していました。
石油値上げ解明
集会では二宮厚美神戸大学教授が「石油製品はなぜ値上がりしているのか」と題して講演。アメリカのサブプライムローン市場の崩壊後、投機が原油から、資源・食料にも広がっていることに触れ、営業と暮らしを守るためには、投機マネーの監視・規制とともに「家計や企業への直接の所得保障が必要だ」と語りました。
緊急大集会で決議した要求項目
(1)原油高騰の要因となっている「投機マネーの流入」について、日本が率先して各国と連携し、規制を行うこと
(2)石油備蓄の取り崩し、石油諸税の引き下げなど、石油製品高騰への緊急の対策を行うこと
(3)「福祉灯油」の拡充をはじめ、石油への依存度が高い農林漁業、運輸業、中小零細企業などへの緊急の支援対策を行うこと
(別項)集会主催の12団体 岩手県農業協同組合中央会、全国農業協同組合連合会岩手県本部、岩手県漁業協同組合連合会、岩手県森林組合連合会、岩手県クリーニング生活衛生同業組合、社団法人岩手県バス協会、岩手県商工団体連合会、岩手県労働組合連合会、岩手県学校生活協同組合、いわて生活共同組合、岩手県消費者団体連絡協議会、岩手県生活協同組合連合会
とにかくガソリン下げろ 岩手県緊急大集会
業界幹部が国に緊急要求
岩手県で5日に開かれた「もうがまんできない!原油高!消費者・生産者・事業者緊急大集会」には、生産者や事業者・消費者団体の役員が多数参加しました。連帯して声を上げ、国に緊急対策を求めようと業界・団体あげて行動に立ち上がっています。
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むしろ旗を上げて対策を求める集会参加者 |
材料高騰ひどい
県クリーニング生活衛生同業組合理事長
原油高騰の影響でクリーニング業界は極めて深刻です。洗浄溶剤、ボイラーの燃料、ハンガー、包装用のビニール、集配時のガソリン代など営業に必要なありとあらゆる材料に石油が使われています。ですから、原油高騰の影響は生半可ではありません。とにかくひどい状況です。
組合では都道府県への申し入れを強めています。都道府県知事が業界の実態を国に訴え、対策を求めるように要望しています。
原油高騰の影響は2、3年前から出始め、倒産に追い込まれたクリーニング店もあります。家族経営の店も大変ですが、従業員を抱えているところでは、人件費を払うのも困難な状況で、さらに経営が追い込まれています。価格競争が激しい中では、材料の値上げ分を価格に転嫁することに踏み切ることができない。
われわれの業界は「公衆衛生に寄与」するという社会的役割があります。このままではその使命を果たすこともできなくなります。
とにかく、原油の価格を引き下げ、安定させてほしい。個人の力ではもう限界。今回の集会に参加したのは自治体や国の支援が今こそ必要だということを訴えたかったからです。多くの組合員がそのことを強く求めています。
バス燃料3倍に
県バス協会専務理事
バス燃料の軽油は4年前に比べ3倍に高騰。走れば走るほど赤字になるというのが今のバス業界です。
赤字分を補てんしようとすると、運賃を上げるしかありませんが、地方では難しい。もともとお客さまが減少傾向にあるわけで、運賃を値上げすれば、ますますバス離れが加速してしまう。
バスというのは車を持たない高齢者や弱者にとってはなくてはならない交通手段です。しかし、燃料高騰が続けば、経営そのものがやっていけなくなる。会社によっては赤字路線をカットする動きも出ています。
燃料価格をとにかく下げてほしい。それができなければ、国、県、市などによる燃料価格への直接補助をお願いしたい。高速料金の引き下げもやってほしい。自治体財政では限界があるわけですから、国に何とかしてほしいというのが率直なところです。
今回こうした集会にバス協会として参加したのは、バス業界の実態を消費者の人たちにも分かってもらいたいという思いからです。お互いに力を合わせなければこの危機は打開できません。
再生産できない
県農業共同組合中央会会長
今、農家で大変なのは畜産、特に酪農が厳しい状況にあります。原油、資材、餌代が高騰し、やめざるを得ないという声も出ていますし、すでにやめた農家もあります。それから施設園芸の農家も大変困っています。
なぜかというと、再生産ができない状況だからです。それぞれの農家は経営を成り立たせるために、一生懸命に努力していますが、限界を超えています。
緊急対策として、原油高騰に歯止めをかけ、投機マネーを規制してほしいと思っています。
長期的には農業が、そしてすべての生産物が再生産できる政策をきっちり打ち出してほしい。国が農家やJAグループと話し合い、実態をつかんでほしい。それに対して一過性のものではなく長期的な展望を持った政府の施策を示してほしいと強く願っています。
後継者問題も深刻です。これまで農業について、精神論で話が進んできた面があるように思います。しかし、これからは所得論というか経営論について深めることが必要です。指導していくわれわれの責任も大きいと感じています。
木材価格は下落
釜石地方森林組合代表理事組合長
木材の価格は下がっているのに物価や燃料代は上がっています。もうむちゃくちゃです。市民運動を盛り上げ、声を上げていかなければ政治は動かない。これほど国民が苦しんでいるのに、よその国は助けても、国民に手を差し伸べないというのは何なんだと、怒っています。
われわれは、油がなければ仕事ができない。人夫を山に運び、切った木を製材所に運ぶのにガソリンが。チェーンソーで木を切るのに重油が必要。原油高騰が経営を直撃しています。
製材所も同じように苦しみ、耐震偽装事件以来、住宅建設も進まなくなっています。なんでこんな社会になってしまったのか。
国には「ガソリンを下げろ、税金の使い方を考えよ」と言いたい。同時に経済を根本的に変えていかなれば駄目。先に外交ありきで、食料品も外国に頼ってばかりでは国は滅びる。自給自足ができる国にならなければ、国の未来は描けない。
底辺から立ち上がる時です。行動を起こさなければ、なにも変わらないし、始まらない。これまで農林水産業の政策は、後回しにされてきました。一緒に声を上げましょう。
漁に出れば赤字に
県漁業協同組合連合会指導部指導課兼振興課
船の燃料は5年前に比べて3倍に跳ね上がっています。ところが、魚の値段は3分の1に下がっています。原油高騰の影響で廃業する漁民も出ています。個人の努力ではどうしようもない事態です。
20万隻の漁船が7月15日、全国いっせいに休漁し、国はその後、直接支援するこことを決めました。大いに歓迎しています。同時に支援内容が限られていますので、制度の拡充を求めていきたいと考えています。
漁港では「漁に出れば出るほど赤字になる」と悲鳴が上がっています。船を出せば2、3人の漁師をつけます。人件費と燃料代を払えば、もう手元には残らない。ただ働きしているのと同じです。
漁では燃料を少しでも節約するため、沖合いに出るときに、スピードを上げずにゆっくりと船を走らせています。しかし、燃料代が節約できても労働時間が15時間ぐらいになり、心身ともにクタクタ。ギリギリのところで生活をしています。
いろんな人たちと連携して、国への対策を求めていきたいと思っています。 |
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