東日本大震災復興へ5年目の春 被災建設業者が経営再建
地域支える担い手に
―宮城・気仙沼本吉民商 住環境復旧復興支援プロジェクト
東日本大震災から5年。グループ補助金(別項)の獲得で経営再建に取り組んでいる宮城・気仙沼本吉民主商工会(民商)の建設業者がボランティアで、気仙沼市立条南中学校に体育用砂場をプレゼントしました。「地域を支え、支えられる活動」は、民商にも大きな変化をつくり出しています。
吉田芳雄さんの重機を中心に、「子どもたちが安心して使える砂場を」と工事を行う気仙沼本吉民商の建設業者
砂場をプレゼントした気仙沼本吉民商会員らと条南中学の佐藤正幸校長(前列右から2人目)
要望に応えて12社が行動し
このグループは民商会員でつくる「気仙沼地区住環境復旧復興支援プロジェクト」(中舘忠一代表、12社)。
同プロジェクトが砂場をプレゼントしたのは昨年12月20日。きっかけは、民商まつりの会場として借りていた校庭が荒れたため、「何かできることはないですか」と学校に提案したこと。佐藤正幸校長から返ってきた言葉は「校庭に砂場が欲しい」。
同中学の卒業生には昨年、走り幅跳びの県大会で優勝した吉田明星さんがいました。しかし、標準記録(5メートル40センチ)にわずか2センチ届かず全国大会出場を逃しました。「震災後、校庭の砂場のあった場所に仮設住宅が建設され、十分な環境で練習ができなかったんです」と佐藤校長は無念そうに話したのです。
「じゃみんなで作ればいいべっちゃ」。話を聞いて、12社のメンバー全員がすぐに動き出しました。工事に取り掛かったのは、12月20日。メンバーはパワーショベルや木材を持ち込み、午前中で工事を完了。25日には市教育委員会が砂を入れ、深さ50センチ、3メートル×7メートルの砂場が完成しました。校庭を掘った吉田芳雄さん=土木工事=の重機は、グループ補助金で購入したもの。「震災で事務所も作業場も重機類も流されて、4000万円の損害が出てね。もう商売やめようと思った。今こうやって商売が再開できたのは、グループ補助金のおかげ。今回は地域への恩返しみたいな気持ち」と笑顔で話します。
砂場完成から2週間後の1月4日、中学校で砂場のお披露目式「跳び初め」が行われました。
吉田さんが「跳び初め」のため、わざわざ進学先の仙台市内から駆けつけました。「ここでたくさん練習して、私の記録を抜いてほしい」。吉田さんは、後輩に力強いエールを送りました。
豊かな生活へ貢献していく
「プロジェクトのみなさんには感謝しかない。砂場を長く大切に使っていきたい」と佐藤校長と小野寺昭人教頭。「子どもたちは、自分たちが頑張ってる姿を見せて地元のみんなを励ましたい、と前を向き、仮設や公営住宅を訪れて交流しています。震災を機に生まれた、地域とのつながりを大切にして、大きく成長していってほしい」と望んでいます。
校庭仮設に住む感王子美智子さん=飲食=は「津波で失ったものは多いけど、子どもたちは気仙沼の未来。震災前のように陸上競技ができるようになれば、住民にとってもうれしいこと」と笑顔です。
校長先生の一言をきっかけにわずか1日で、砂場を完成させたプロジェクトですが、ボランティア活動での地域支援は、3回目のことでした。
昨年7月には、菅原茂市長に直接提案しヘリポートの道路300bを舗装。10月には「花の道」の整備をボランティアで行ってきました。
ボランティア活動を通じ住民、学校、市役所など新たなつながりを作り出してきた民商とプロジェクトメンバー。
グループ副代表の木村衛さん=建設=は言います。「地域のために何かしないとだめだと思っていた。復興住宅やかさ上げなど大きな工事の先にある、町づくりや豊かな生活に貢献できるよう、プロジェクトのみんなと考え行動し続けたい」。
全国商工新聞(2016年3月7日付) |