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  トップページ > 震災情報のページ > 全国商工新聞 第3160号3月16日付
相談は民商へ
 
 
 

震災から4年 生業・くらしの再建めざして

 「打ち切りなんてとんでもない」―― 。国・東電が営業損害、風評被害の賠償打ち切り案を発表してからわずか3カ月。商工業者の大きな批判の前に、東電は「素案」の見直しを迫られました。今なお12万人が避難生活を余儀なくされ、“収束”とはかけ離れた原発事故被害。被害者が求めるのは「元の暮らしに戻してほしい」というささやかな願いです。

子ども現象で経営危機に 賠償実現し事業継続=保育園
福島民商 Sさん

 「東電と賠償金の相談をすると『すみません』と言ってしまうんですよね」。こう話すのは、福島市内でベビーホームを経営するSさん。0歳から6歳まで(現在は4歳まで)の子どもを預かる無認可の保育園です。
 園を開いて15年。原発事故前は29人の子どもを預かり、8人の職員を抱えていましたが、事故が一変させました。
 「事故直後から子どもを放射能から遠ざけたいと、佐賀、山形、佐渡へと転居していった」とSさん。10カ月後には子どもは6人まで減少、職員も一時、3人にまで絞らざるを得ませんでした。
 市からの運営補助金(子ども1人あたり年2万円)を含め、保育料で経営してきました。子どもの急激な減少によって経営そのものが危機に直面しました。
 貯金を取り崩し、保母さんを確保しながらの運営。12年1月、「もうやめるしかない」と考えるまで追い込まれました。そこに「民商で損害賠償請求をしているよ」と、地域に住む民商の班長から声がかかったのです。Sさんは商工新聞の読者でした。
 「無認可保育園でも賠償請求できると思わなかった」とSさん。福島民商に相談し、入会。賠償請求で、保育料収入の8割ほどが賠償されました。「これで園を続けるめどがつきました。本当に助かった」と振り返ります。
 事故前、約50園あった福島市内の無認可保育園。今年1月だけで三つの園が廃業、4月にも廃業予定の園があるといいます。
 気がかりなのは、転居した子どもたち。離婚、別居、転居先でのいじめ…。さまざまな問題が子どもたちを苦しめていることです。
 「子どもが好きで、天職だと思って選んだ」仕事だからこそ、「子どもたちが安心して戻れる福島になってほしい」と考えるSさんは語気を強めて言いました。
 「事故も収束していないのに、原発の再稼働だ、安全だという。それに賠償を打ち切ろうとするなんて、とんでもないことです」

困難な中でも商売続け「生業を返せ」と訴え=コンパニオン委託派遣
福島民商 Tさん

 「被害者にしっかり賠償をし、すべての被害者の健康対策の充実を」―― 。「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟の第3回口頭弁論で、Tさんが裁判長を見据えて語った言葉です。
 土湯温泉でバンケット業(コンパニオンの委託派遣)を創業して27年。事故直後から半年間、開店休業状態が続きました。
 27あった旅館は風評被害で廃業が相次ぎ16旅館に。コンパニオンを旅館やホテルに派遣するバンケット業界を直撃しました。
 「あの時はシルバー人材センターに登録したり、居酒屋のアルバイトをして何とか乗り切ったんです」とTさんは振り返ります。
 売り上げがまったくない月もありました。「たまに仕事が入ってきてもコンパニオンがいなくて、仕事を取れないときもあった」といいます。築き上げた信頼も崩れ、商売の見通しが立たなくなった時、同じ業界の民商会員から声をかけられました。「民商で賠償請求をしているよ」。震災から1年が経過していました。
 当時、負債も抱え、その返済に困っていたTさん。「賠償金が出て、借金を返せたのが一番うれしかった」と、請求を通じて民商にも入会しました。
 震災から4年。土湯温泉観光協会などの地域を挙げた取り組みで、お客も少しずつ戻りつつあります。しかし、放射能による健康不安は今も消えていません。甲状腺検査では、長女の3人の子ども全員から嚢胞が発見され、長女の家族は山梨に避難。今も別居生活が続いています。
 「原発はコントロールされているなんてウソですよ。今も浜通りには、船が打ち上げられたまま。放射線量の高い地域もあるし、汚染水だってたれ流しじゃないですか」と怒りをぶつけます。「賠償打ち切りは許せない」と話すTさんはこう続けました。「復興はまだ序の口。賠償の打ち切り話もそうですが、4年たって『いつまで賠償を求めるつもりか』という雰囲気も出てきています。だからこそ、一人ひとりが口を開いて声に出すことが大事になっているんです」

原発賠償打ち切り素案を撤回 東電、国に継続要望

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「素案」の撤回を求め経産省、東京電力と交渉する福島の被災者

 東京電力は3日、福島第1原発事故で被害を受けた商工業者への賠償を来年2月に打ち切るとした「素案」を事実上撤回し、見直すことを発表しました。福島県商工団体連合会(県連)、民主商工会(民商)はじめ、福島県内の業界団体が強く反対していたもの。2月9日には日本共産党の倉林明子参院議員が国会で取り上げ、賠償継続を求めました。
 今回見直された「素案」は、東京電力と経済産業省が昨年12月に発表した「避難指示区域内の商工業の賠償は16年2月で打ち切る」としたもの。避難指示区域外の賠償についても15年2月以降の賠償は続けない方針を示していました。
 いち早く反対を表明した福島県連は、「素案」の撤回を求めて1月16日に経産省、東京電力と交渉、2月13日には経産省、財務省、文部科学省に素案の白紙撤回を求めて交渉してきました。「震災以後、風評被害が続き、取引先が帰ってこない」「売り上げは全く戻らない。周りの同業者も同じ状況で、賠償がなくなったら商売は続けられない」など被災業者の厳しい実態をぶつけました。
 福島県内の89商工会と10商工会議所も19日までに反対を表明し、1月21日には福島県商工会連合会が再検討を要請する意見書を提出しました。
 帰宅困難区域になった富岡町から避難中の郡山民商のKさん=消防・防災設備=は経済産業省との交渉で「地域で信頼を築いてきたのに、事故後、土地を追われて休業状態になっている。賠償がなくては商売の再起もできない」と訴えてきました。東電の素案見直しを受け、「多方面からの声が届いた結果とは思うが、今後賠償がどうなるのかは分からない。もっとはっきり賠償を続けると言ってほしい」と話しています。

全国商工新聞(2015年3月16日付)
 
   

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