経産省が東電指導 原発賠償で和解求める
埼玉県商工団体連合会(県連)と全国商工団体連合会(全商連)は7月18日、経産省資源エネルギー庁原子力損害対応室と交渉しました。
岩槻民主商工会(民商)のAさん=運送=と埼玉東民商のTさん=運送=が請求していた損害賠償に対して、ADRが示した和解案に東電が合意するよう指導を要請したもの。広瀬富治県連副会長や勝部志郎全商連常任理事など8人が参加。同室の企画調整官が対応し、東電への指導を約束しました。
Aさんは「東電は1年半、損害賠償を拒否してきた。税務調査でも出さないような何百枚もの書類を提出して必死に因果関係を証明する努力をし、やっとADR(裁判外紛争解決手段)が事故との因果関係を認め和解案を示した。それなのに東電が応じないとは絶対に許せない。和解案を尊重するよう強く指導してほしい」と要請。調整官は「ADRの調整に行政として口出しはできないが、東電の事業再建計画でも和解案を尊重するとしている。さっそくヒアリングして和解案に適切に対応するよう指導する」と回答しました。
Aさんは、北関東のゴルフ場の送迎委託を受けバスの配車、運行業務を行ってきました。原発事故で送迎業務はぱったりと途絶え、12年4月、東電に対してキャンセルに伴う損害賠償請求書を提出。ところが翌5月、「観光業ではなくサービス業のため賠償請求の資格がない」と書類一式を送り返してきました。その後、東電本店や経産省との交渉を繰り返したものの前進がないため、13年1月、弁護士を通じてADRに申し立てました。
東電は「地震の影響で道路アクセスが悪化した。事故前から売り上げが落ちていた。消費マインドが減退したから」などと主張しましたが一つひとつ反論し、原発事故の因果関係を立証して、ADRの和解案が出るところまできました。しかし東電は賠償を拒み続けています。調整官は「ADRの和解案全部を拒否した例は聞いていない。ただちに東電を呼んで正す」と約束しました。
Tさんも「やっとADRの和解案が出たが、請求額は極めて低い。しっかり指導してほしい」と要請しました。
Tさんは外国人観光客のバスや車両の配車、運行業務を行っています。事故後、主に中国人などからキャンセルが続出。電話連絡のみのキャンセルは契約書などの保存がなく、その証明に苦労しましたが、7月17日、ADRから和解案が示されました。
中国外交部、中国国家旅遊局から発せられた「福島などの深刻な被災地への訪問は自粛」するとした公式文書を今後の請求運動に活用することにしています。
全国商工新聞(2013年8月5日付) |