被災地復興は地元業者の力で 中小企業グループ補助認定=岩手・一関
岩手・一関民主商工会(民商)の会員でつくる二つのグループが3月18日、「中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業(*グループ補助)」の認定を同時に受け、計1億2000万円余りの補助金が交付されることになりました。民商会員でつくるグループの補助認定は気仙沼本吉民商(2例)、石巻民商(1例)に続くもの。一関市に本社を置く企業グループ認定でも4、5例目となる快挙です。
共同事業アイデアに特色
認定を受けたのは、建設・土木業者など35社でつくる「両磐地域住環境・インフラ復興支援グループ」(小野寺喜久雄代表)と、スナック、美容、映画興行会社など20社でつくる「一関なりわいサービス業再生グループ」(松本健樹代表)。補助金交付企業は「住環境」が7社(14%)、「なりわい」が4社(20%)で、申請企業数に占める補助金交付企業の割合が小さいのが特徴です。
岩手県ではグループ認定申請にあたり、(1)サプライチェーン(2)経済・雇用効果大(3)基幹産業(4)商店街-の四つの類型から一つを選択、申請することになっています。
基幹産業軸に
民商2グループが選んだのはいずれも基幹産業型。そのため、被災した企業だけでなく「地域の復興は地域の業者で」をモットーに多くの業者を組織、地域の“基幹産業”としてのグループをつくりあげました。
「住環境グループ」は35社を組織して、市内の県知事建築許可業者の完成工事高トップの会社を上回る規模に。「なりわいグループ」は、20社を組織することで、一関市内における映画興行、居酒屋、弁当・仕出し事業、自転車修理・販売でそれぞれシェア100%を占めるなど、地域の基幹産業として、グループを押し出しました。
震災によって、542棟が全壊、半壊1441棟、一部損壊は4579棟に及んだ一関市の建築物被害。13年間に470店が廃業した商業分野は、いっそうの打撃を受け「買い物難民」の深刻化、地域経済の衰退に拍車をかけました。
両グループは、被災実態を踏まえた上で事業計画書に盛り込むグループの共同事業も具体的で特色あるものを打ち出しました。
「住環境グループ」は沿岸における損壊住宅の修繕、専門業者の派遣とともに、「高品質のモデル住宅の建設」も掲げ、すでに設計は終了。注文も受け付けています。「なりわいグループ」は「高齢者・生活弱者、仮設住宅居住者」に対する生活必需品の移動販売・宅配事業、共通優待クーポンの発行、ミニシアターの開催などを計画しています。
学習会を重ね
認定までの道のりは厳しいものでした。
一関民商は震災直後から市に対し、事務所や工場に対する直接支援を8回にわたって要望したもののこれを拒否。岩手県独自の支援事業も沿岸部だけが対象で、内陸部は適用外で、グループ補助だけが頼みの綱でした。
翌12年5月にはグループ補助獲得に向け、二つのグループを結成し、補助申請。しかし、「予算が足りない」として不認定に。
グループと民商はあきらめることなく、県や中央省庁とも交渉を重ね、補助金申請者を中心に、グループ補助の制度、共同事業のアイデアなどの学習会も連続して開催(計8回)しました。
お互いの仕事や夢、共同事業のアイデア、沿岸部への支援など多岐にわたった議論。住環境グループの小野寺代表は「自らの商売や『地域経済を支えるグループ』の役割についても突っ込んだ議論ができ、何でも話し合える関係になった。民商の将来についても語り合えた楽しい時間だった」と振り返ります。
こうした努力の積み重ねは県の姿勢をも変化させました。10月に入ると、県から民商に対し「一緒に認定に向けて頑張りましょう」と逆提案。民商とグループは、今年1月半ばに再度、事業計画書を練り直して提出、一時は難しいといわれた「なりわいグループ」についても、新たに数社を加えることで、同時認定となりました。
被災で事務所が傾き、3000万円余りの被害を受けた千葉徳男さんは言います。「認定の知らせを聞いて涙ぐんだ。本当にうれしい。民商の仲間たちが真剣に取り組んだおかげです」
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グループ補助 被災した中小企業がグループで復興に向けた事業計画を作成し、県に認定された場合、費用の4分の3(国2分の1、県4分の1)を補助するもの。
全国商工新聞(2013年3月25日付) |