電気料金値上げ許せない 東電に怒り
「原発事故のつけをなぜ事業者に押し付けるのか」「電気代の値上げは事業継続に直結する問題」-。4月から事業者向け(契約電力50キロワット以上)の電気料金を平均17%値上げを一方的に通知したことへの怒りが、商工会議所、業界、自治体、医師会にまで広がっています。また東電は、家庭向け電気料金の値上げ(平均10・28%)を経済産業省に申請しました。
東京都千代田区内の東電本社ビル
「事業者にとって値上げは死活問題なんです」。こう語るのは、埼玉・川口商工会議所の伊藤博事務局長。同会議所は3月初旬、「値上げは到底受け入れられない」として、電気料金の値上げ中止を要請するとともに、値上げ分の支払いを拒否。「不払い運動」を続けています。
4月11日には一方的な値上げは優越的な地位を利用した「不公正な取引行為」として公正取引委員会(公取)に排除措置を求めました。
同会議所が今年2月に実施した「電気料金値上げによる影響調査」では、値上げによる負担増が100万円未満は97事業所で、100〜1000万円は67事業所、1000万円以上の負担増は12事業所に及びます。
値上げについては、7割強が「到底応じられない。値上げ分は払いたくない」と回答し、「原発事故の当事者としての自覚が乏しい」「一方的な都合での値上げは異常としか考えられない。廃業という二文字がちらつく」などの意見も寄せられています。
公取への申告直後、東電は電気料金不払いの顧客にも当面電気を供給する考えを表明したものの、支払いを求める法的措置を検討する考えを明らかにしました。
伊藤事務局長は「電気の供給停止の不安や不払いに伴う延滞料についての不安の声もあるが、値上げ分は払わない、という姿勢を貫いていきたい」と話します。
川口商工会議所の不払い運動を機に、値上げ反対の声はさまざまな業界へも広がりを見せています。
医療機関も大打撃受ける
東京都医師会と東京都病院協会は連名で値上げ反対の意見書を東電に提出。その中では「400床の急性期病院で年間約2000万円、150床の一般病院で年間約500万円、400床の医療療養型病院では年間約850万円の出費が強いられる」と試算。全日本民医連の長瀬文雄事務局長は「大幅引き上げは、医療崩壊が叫ばれている中で、医療機関の存続の危機をも招く反社会的な行為」と厳しく批判します。全国医学部長病院長会議も値上げ反対の要望書を提出しています。関東周辺の10都県でつくる関東地方知事会も値上げ中止を求める要望書を提出。東京狛江市議会、羽村市議会が値上げ反対の意見書を上げたほか、東京都ホテル旅館生活衛生同業組合と全日本シティホテル連盟関東支部が、値上げへの反対文を東電に提出するなど、これまでの枠を超えた運動になっています。
県連・全商連も東電へ要望書
埼玉県商工団体連合会(県連)、茨城県連とともに全商連も値上げ反対の要望書を東電に提出しています。
社団法人日本表面処理機材工業会の副会長でもある千葉・佐原民主商工会(民商)の橋沢政實会長は「私のところは、年間約8万円の値上げになります。原発事故を起こしておいて電気料金を値上げするなんて、誰も納得できるはずがない。これに加えて消費税が増税されれば、経営にも日本のモノづくりにも大きな影響となる。値上げはあまりにも横暴だ」と強調します。
全国商工新聞(2012年5月21日付)
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