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  トップページ > 震災情報のページ > 全国商工新聞 第3023号 5月21日付
 
 

被災地に工作機械 地域の復興へ工場再開=宮城・石巻

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贈られたNCフライス盤の前で感謝する阿部秀雄さん(右)、福子さん(中央)、秀浩さん(左)

 「中小業者が元気に仕事ができてこそ、復興につながる」―。この思いで工場を再開した株式会社阿部製缶鉄工の阿部秀雄社長。宮城・石巻民主商工会(民商)の会員です。東日本大震災で工場・自宅が全壊。「もう一度やろう」と奮い立たせたのは、家族・従業員の団結と取引先からの励まし、そして民商の“あったかネットワーク”で愛知の仲間から贈られた工作機械でした。

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機械を操作する副社長の秀浩さん

 「工作機械も治具も全部流された。工場を再開した昨年8月に、使える機械を譲ってもらい本当にありがたかった」と振り返る阿部さん。愛知・豊川民商会員で有限会社タツミEGを経営する松本国光さん、京子さん夫妻が運んできたNCフライス盤を前に感謝の言葉を述べました。
 「きれいにメンテナンスされていたので、すぐに動かせた。大事に使っていたものだと分かった」と話し、機械を操作するのは長男で副社長の秀浩さん。「NCでなければできない加工もあったので助かった。工場再開とのタイミングも合い、もう一度頑張ろうと背中を押された」と笑顔を見せます。

仲間のつながり

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青木勝弥さん

 被災地のすさまじい状況に胸を痛めていた松本さん夫妻は「衣食住の支援の次は、自らが生活基盤を確立する支援が必要になる。仕事再開に役立つならわが社のフライス盤を譲ろう」と話し合い、豊川民商に相談。宮城県連を通して送り先を探したところ、石巻民商常任理事の青木勝弥さん=船舶内燃修理=が「こんなにありがたい話はない」と受け入れました。
 松本さん夫妻は昨年5月26日、フライス盤など機械7点や他の会員が提供した機械工具などを重機輸送の10トントラックで搬送。立派なフライス盤を前に、青木さんは「私も使えるが頻度は少ない。もっと被害を受け、必要としている所で使ってもらおう」と考え、後日、民商仲間で石巻鉄工協会でもつながりがあった阿部さんに申し出て搬入することに。真に求められる支援が仲間のつながりで実現しました。

励ましを力に

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10トントラックで愛知から石巻へ搬送(11年5月)

 世界3大漁場の一つ・北西太平洋漁場に恵まれる石巻漁港、その海岸線から程近い魚町に阿部製缶鉄工の本社工場があります。造船所やメーカーなどを取引先に、油圧関係のメンテナンス、プラント設計施工、金属加工など幅広く事業を展開。創業以来35年、家族同然の従業員14人が高い技術力を発揮して信用を培い、順調に売り上げを伸ばしてきた矢先の大震災でした。
 直後の大津波は、石巻港付近に立地する第2工場と本社隣接の事務所を全壊させたほか、工作機械、溶接機械、車両などすべてを流し去りました。損失は3〜4億円にも。技術力の源であり創意工夫で作り上げた一点物の治具を含めれば、「お金に換算できない」(秀浩さん)被害を受けたと言います。
 高さ15メートルはある本社工場の天井付近にくっきりと残る津波の跡が、未曽有の被害を物語ります。幸いにも人的被害はゼロ。2カ月間は家族・従業員でがれきやヘドロをかき出す日々でしたが、取引先から次々と支援物資が届き、「早く立ち上がってくれ」と激励されました。工場再開前にも東京の船主から「道具も貸すから塩釜港まで出てきて船を修理してほしい」とうれしい依頼がありました。
 贈られた工作機械を活用するとともに、中小企業庁のグループ補助金を利用して震災前の7割まで設備を復旧。二重ローンの問題や沿岸地域の区画整理の問題などの課題はありますが、阿部社長は言います。
 「うちの技術を信頼して仕事を出してくれるお客さんがいる」-。受注量は震災前の6〜7割ですが、「地域経済を支える中小業者が仕事を再開し、働く場をつくり出してこその復興」と決意新たに頑張っています。

暖かい仲間こそ財産

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松本京子さん

 豊川民商で婦人部長を務める松本京子さんは、今年3月に愛知県連婦人部協議会が取り組んだ石巻民商への支援活動に参加。同じく婦人部役員を務める阿部社長の妻・福子さんと初めて顔を合わせました。
 福子さんは「頂いた機械は大事に使っています。民商のつながりってすごい」と感謝。松本さんは「機械だけでは動かない。使いこなしてくれる職人さんがいて良かった。一番良い所へお嫁に出したよう」と笑顔でした。
 二人は口をそろえます。「こんなに温かい全国組織はない。これからはお互いに元気を与えられる付き合いを深めていきたい」

全国商工新聞(2012年5月21日付)
   
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