原発損害賠償 埼玉で請求 東電 誠実対応を約束=埼玉
「原発被害は福島だけではない」―。埼玉県商工団体連合会(県連)は2月20日、全国商工団体連合会(全商連)とともに東京電力福島第1原発事故に伴う損害賠償について、東京電力本店と初めて交渉しました。埼玉県連を賠償請求の窓口とすることで合意。事案ごとに事故との相当な因果関係が認められれば賠償すると回答しました。
中小業者への完全賠償を求める東電と交渉する埼玉県連の役員(左から3人目が菊池会長)
交渉には菊池大輔県連会長はじめ10人が参加し、東京電力から福島原子力補償相談室地域相談グループの6人が応対しました。要請したのは(1)県内の農作物、工業製品などの風評被害をすべて損害賠償の対象とすること(2)観光・関連業者の申請を速やかに受け付けること(3)計画停電による被害を賠償の対象にすること―の3点。菊池会長は「福島だけではなく、埼玉にも原発被害はある。すべての損害を賠償の対象にしてほしい」と訴えました。
バス会社を経営する埼玉東民主商工会(民商)の会員は、「3・11以降、仕事がまったくなくなり、営業を続けるため、生命保険を解約した」と被害を訴え。「11月ごろから外国人観光客もようやく戻り始めた。指針は5月末までのキャンセル分を賠償の対象としているが、それでは狭い。前年に比べて売り上げが減少した分も賠償の対象にすべき」と要望しました。国内客についても、指針は福島など4県の業者を対象としていることに対して、バスの場合は送迎地や送迎客が広範囲にわたることを指摘し、「4県に限らず、埼玉のバス業者も賠償の対象に」と迫りました。
顧客減少も対象
東電側は風評被害について、原子力損害賠償紛争審査会の中間指針に当てはまらない事案も、「個別に、事故との相当な因果関係が認められれば賠償の対象とする」との方針を表明。4県以外の観光業者も、「千葉の外房や山形の米沢など、原発事故の影響で顧客が減少したと認められる場合には賠償の対象としている」と説明。申請された事案については誠実に対応し、弁護士に任せるようなことはしない、弁護士に任せる場合でも、必ず事前に伝えると約束しました。
また外国人観光客のキャンセルについて、川口民商の会員は「電話の口約束だけで事を進める慣習があり、正式な契約が3日前になることなど当たり前で、書面が残っていない」と訴え、実態に即した対応と賠償を要求しました。同席した馬奈木厳太郎弁護士は「独特の商慣習があることを認めた上で、証明方法を検討してほしい」と要請しました。
東電が実施した計画停電に伴う賠償は、セキュリティーが機能しなくなり、コンビニが開けなかった事例や、冷蔵の在庫が溶けてしまい無駄になってしまった事例などを紹介し、「一般家庭の停電とは違う。営業への損害という特殊性を踏まえて考慮してほしい」と求めました。
全国商工新聞(2012年3月5日付)
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