「支援の手 止めない」 青年部員らが被災地へ=東京
東日本大震災から5カ月。岩手県陸前高田市、大船渡市ではがれきの撤去も進み、営業を再開する店や、養殖を再開する漁業者の姿も見られます。一方で、仮設住宅に入れたものの支援を打ち切られて生活がままならない被災者も多く、自助努力は限界に。「支援の手を止めてはいけない」―。東京・八王子、北区、新宿、足立西、清瀬久留米の5民主商工会(民商)青年部や役員ら21人は7月22〜24日の3日間、両市にボランティアに入り、炊き出しを行いました。
震災被災者にかき氷を配る
青年たちは車に分乗し、仮眠を取りつつ10時間以上かけて大船渡へ。大船渡民商に材料や支援物資を運ぶと、休む間もなく炊き出しの準備を始めました。途中、地鳴りとともに震度4(最大5強)の地震が発生。「被災地では今もこんな地震が…」と、騒然となる場面もありました。
子どもらに笑顔
かき氷をほおばる子どもたち。おかわりをする子も
八王子民商が炊き出しを担当した末崎中学校では、グラウンドに仮設住宅が建ち、200世帯500人が避難しています。
豚丼、かき氷、野菜スティックの準備をしている途中、「来てくれてありがとう」「無料なの? 先日は有料で食べられなかった」と話しかけられました。かき氷に目を輝かせる子どもたちも。事前にビラを配っていたこともあり、炊き出しが始まると長蛇の列ができました。
場を切り盛りした青年部長の肥沼寛さん=精密機械=は「被災地の状況や義援金が届かないというニュースを見るたび、直接行って何かしたいと感じていた。民商の被災地支援計画を知り、従業員2人と一緒に来たんです」と話します。
次つぎと被災住民が訪れ、テントの中は大わらわに。「肉が軟らかい」と豚丼は大好評で、かき氷を食べた子どもたちは「冷たくて、甘くておいしい!」と笑顔でした。汗だくになりながら用意した400食は2時間余りでなくなりました。ハエなどの害虫が異常発生していることもあり、一緒に配った蚊取り線香や虫取り紙も喜ばれました。
厳しい仮設生活
末崎中学校のグランウンドに並ぶ仮設住宅
自宅や店舗を流され、夫婦で仮設住宅に入居している大船渡民商婦人部の小川律子さんは「生活費はすべて自己負担となり毎日の生活は大変だけど、炊き出しを手伝って、みんなに喜んでもらって、久しぶりに元気が出ました」と話していました。
帰り際、1人のおばあちゃんが手紙を差し出してくれました。「豚丼は、玉ネギもしっかり味がよく、おいしかったです。ありがとうございました」というメッセージが手描きの絵に添えられており、思いがけない心のこもったお礼に、涙ぐむ部員もいました。
「感無量です。こんな達成感は今まで感じたことがない。被災地はみんな復興に向けて頑張っている」と、友人を連れて参加した畑井将さん=大工=は力を込めます。
「絶対に次の支援の機会をつくりたい。もっと多くの仲間に来てほしい」。こう話す井上道晶さん=部品加工=の言葉は、そこにいた全員の共通の思いです。
元気をもらった
北区、新宿、足立西民商が炊き出しを行った陸前高田市の米崎小学校は、150世帯200人が仮設住宅で暮らしています。用意した焼きそば、かき氷300食は2時間ほどですべてなくなりました。
北区民商の宇津木正志会長=工務店=は「手伝ってくれる方や差し入れを下さる方もいて、逆に元気をもらいました。人のつながりが温かい」と話します。
「継続して被災地に入り、必要とされているものを届けたい」と話すのは、新宿民商の下倉淳介さん=スポーツインストラクター。知人と被災地支援プロジェクト「ノーボーダー支援隊」を立ち上げ、ボランティアを行ってきました。「民商の組織力、ネットワークを実感しました。今、プロジェクトで被災地に軽トラックを贈る計画を立てています。民商とも共同で何かができれば」と語っていました。
「支援の手 止めないで」
今回の被災地支援は、4月から継続して支援に入っている清瀬・久留米民商の中村顕治会長=建築=たちの活動を聞いた、八王子民商青年部や北区民商が「自分たちも」と計画したもの。炊き出しに先行して被災地支援に入っていた中村会長は「震災から5カ月、全国からの支援が徐々に減っていることは否めません」と話します。「働く場所がなく、収入を絶たれた被災者の方も多く、まだまだ物心両面の支援が必要と感じる。みんな必死で頑張っている。今、支援の手を止めるわけにはいかない」と訴えていました。
全国商工新聞(2011年8月29日付)
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