全商連トップページ
中小施策 税金 国保・年金 金融 経営 業種 地域 平和・民主 教育・文化 県連・民商 検索
 全商連とは活動方針・決議署名宣伝資料調査婦人部青年部共済会商工研究所発行案内入会申込リンク
  トップページ > 震災情報のページ > 全国商工新聞 第2984号 7月25日付
 
 

エネルギーの「地産地消」へ 手作り太陽電池


 「太陽光」「風力」「水力」「バイオマス」―。福島第1原子力発電所の事故後、次世代の電力として熱い視線が注がれる再生可能エネルギーは、中小業者が参入可能な分野です。17年前から普及活動を進めているのは自然エネルギー事業協同組合「レクスタ」。代表理事の桜井薫さんは、エネルギーの「地産地消」をめざし、手作り太陽電池の普及に取り組んでいます。

Photo
手作り太陽光パネルを手にする桜井さん。黒い部品の太陽電池(セル)をはんだ付けします

 気温30度を超える6月下旬、桜井さんは屋根の上にいました。自身が取締役をしている有限会社エルガが受注した太陽光パネルの設置工事をするためです。「受け渡しをお願いします」と、長男の加藤水生さんから元気な声がかかり、親子連携の作業です。
 「原発事故を目の当たりにして導入を決めた」と話す発注者の波田桂太郎さん。同様に震災後の4月から6月にかけて、住宅用太陽光発電導入のための補助金を申し込む人は急増。前年比6割増の5万3557件となっています(太陽光発電普及拡大センター発表)。
 「200万円以上の高額商品だが、多くのお客さんが私たちの理念に共感し、導入を決意してくれる」と話す桜井さん。急ピッチで工事を進めます。
 太陽電池は、太陽光などを電力に変換する機器で、電卓から街路灯まで幅広く用いられています。最近は、太陽電池をたくさん並べて接続した太陽光パネルを屋根に設置し、自家発電をする家が増えています。2年前から、住宅用の補助金制度復活や「余剰電力買取制度」(注)が創設されたことが追い風となっています。それらの実現に向けて活動したのが自然エネルギー事業協同組合「レクスタ」です。

電力買取制度と設置補助金実現
 「初めは自然エネルギーを趣味とする市民の集まりだったが、研究を重ねるうちに日本のエネルギーを安全なものにしたいと考えるようになった」と桜井さん。そのためには再生可能エネルギーの普及が不可欠と、「レクスタ」は国に電力買取制度と設置者に補助金を直接出す制度の創設を要求しました。「電力買い取りは太陽光だけだが、活動の成果として制度を実現させたという自負がある」と胸を張ります。
 「レクスタ」には現在9社が加盟。「つながり・ぬくもりプロジェクト」(別項)で被災地支援のボランティア活動をしたり、地域の原発反対運動に参加する仲間もいます。
 桜井さんは、手作り太陽電池でエネルギーの「地産地消」の仕組みづくりをすすめるNPO団体「ソーラーネット」の責任者も務めています。
 手作り太陽電池(パネル)は、セルと呼ばれる単一の太陽電池をはんだ付けでつなぎ、ラミネーターという製造機械でガラスに熱圧着させて出来上がります。手作りとはいえ、パネル1枚の電力は約40ワット。約80枚並べれば平均的な家庭の電力をまかなえ、これを販売・設置している会社もあります。
 「はんだ付けができれば誰でも簡単につくれる」と、「ソーラーネット」は全国の高校や高等専門学校に出向き、太陽電池だけではなく、ラミネーターの作り方も教えています。

普及進むよう仕組み作りを

Photo
太陽光パネルの設置工事をする桜井さん

 桜井さんは「全国の公民館にラミネーターを設置したい。例えば町に引っ越してきた人に公民館からパネルをプレゼントするんです。普及が進むそんな仕組みをつくっていきたい」と夢を語ります。
 普及の決め手となるのが「固定価格買取制度」です。太陽光に限らず再生可能エネルギーで発電された電気を電力会社などが固定価格で全量買い取ることを義務付けるもの。環境先進国ドイツなどは、この制度で再生可能エネルギーの供給量を着実に増加させています。
 経済産業省は4月5日、固定価格買取制度を導入する法案を国会に提出しました。
 「太陽光、風力、小水力、バイオマスなど多様な再生可能エネルギーを組み合わせることで、脱原発が可能になる。安心・安全の社会をつくるというレクスタ理念の実現まであと一歩」と目を輝かせる桜井さん。額にたまった汗をぬぐいました。

被災地に電源供給 ― つながり・ぬくもりプロジェクト
桜井さんに聞く

 私が今、もっとも力を入れている活動の一つが「つながり・ぬくもりプロジェクト」による震災支援活動です。避難所や漁協施設などに太陽光パネルなどを設置し、電源供給をしました。
 いままでのエネルギー供給を他者に任せていたやり方から、自分たちの暮らしを自分たちの手に取り戻す、そんな暮らし方をつくりあげていく時代に入りつつあります。自然エネルギーは、そうした暮らし方の道具になると思っています。
 今、どれだけ種をまけるかで、安全で持続可能な未来を早く実現できると信じています。今がちょうどその時だと思います。

(注)住宅用の補助金制度 …国が実施する「住宅用太陽光発電導入支援対策費補助金」制度のこと。太陽光発電の設置費用の一部を補助する。自治体やハウスメーカーによる補助金もある。
余剰電力買取制度 …家庭や事業所などの太陽光発電からの余剰電力(自家消費した分を差し引いた余りの電気)を、法令で定める条件により電力会社が買い取る制度で、09年11月から開始。買い取り費用が電気料金に上乗せして利用者から徴収されるなどの問題がある。

▽自然エネルギー事業協同組合「レクスタ」 …1994年12月に設立(中小企業庁認可)され、自然エネルギー利用関連の事業を行うメンバーにより構成される
【連絡先】 埼玉県比企郡小川町大字角山208の2 Tel:0493-71-1102
【事業】 自然エネルギーに関する機器設計・施工等、個人から自治体までの総括的な導入コンサルタント、政策提言活動、自然エネルギー学校・学習会の開催、海外での普及活動・技術指導、地域活動ネットワークづくり、「レクスタ通信」発行
【加盟企業】 ・株式会社ヴァイアブルテクノロジー(東京)・株式会社エコテック(東京・名古屋・京都・福岡)・有限会社エルガ(埼玉)・有限会社グリーン・ポスト(東京)・グローイングピース(広島)・有限会社サンエー技研(名古屋)・ぶくぶく農園(埼玉)・有限会社フェルナンデ(鹿児島)・ソーラーワールド株式会社(山形)

全国商工新聞(2011年7月25日付)
  ページの先頭