東日本大震災の関連被害で資材不足・高騰など深刻=全商連実態調査
東日本大震災による被害が拡大しています。各県商工団体連合会(県連)は、アンケートや聞き取り調査を実施(震災後から4月下旬)。原発事故の風評被害も含め、多くの業種で経営に深刻な影響が表れていることが明らかになりました。
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観光関連、料飲業者は自粛ムードや計画停電の影響で、大打撃を受けています。「5月連休までもキャンセル。当分東北には行かないと言われた」(山形・旅館)、「電車の運行本数が減り客足が激減」(静岡・ラーメン店)、「宴会がほとんどキャンセル」(福岡・居酒屋)などの声が上がっています。浜松市では、地域のまつりが中止となるなど、地域産業全体が影響を受けています。
また、仕入れ品・資材不足と値上げが深刻です。電線、断熱材、コンパネ、外壁などの建築資材や、銅・塗料といった製造資材、牛乳、アルコール類、海産物、お茶、たばこなどの仕入れが困難になっています。
値上げの状況では、「石油・ビニール製品が4月から20%アップ」(クリーニング)、「金網、フェンスが1割くらい値上げ」(職別工事)、「銅、電線、管材が値上げ」(空調工事)、「4月から車部品、タイヤが値上げ」(車販売)など、日を追うごとに値上げ傾向が高まっています(福岡県連の調査)。
建設資材でも同様の傾向が。「合板は薄手のものでも少量しか入手できない。しかも2〜5割値上げ」「厚手の合板は品質保証をしてくれない」、断熱材では「グラスウールがどこでも入らない」「塩ビパイプ、継ぎ手がない」「ユニットバスの排水トラップがない」という状況です(長野県連の調査)。
回復感あったが
一方、震災前(2月下旬から3月中旬)に全商連付属中小商工業研究所が行った「2011年上期営業動向調査」(民商会員1703人を対象、759人から回答)では、中小業者の景況は弱いながらも回復基調を示しました。しかし、原油や仕入れ値の高騰が顕著で、販売価格に反映できずに苦しむ声が多数寄せられていたこと、その後の県連調査の傾向を加味すれば、景況は大幅に悪化していることが予想されます。
国土交通省はこのほど、経済産業省、林野庁、環境省と連携し、「住宅建設資材に係る需給状況の緊急調査」(3月25日〜31日)を公表しました。「今後は震災前の生産量を確保できる」という見込みを示していますが、現場の実感と乖離しているのは明らかです。資材不足のすみやかな解消と値上げ動向の把握、それに対応した中小業者への支援策は待ったなしで求められます。
全国商工新聞(2011年5月23日付)
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