納税緩和措置 被災者の滞納処分の停止要件を緩和
確定申告期のさなかに東日本大地震が発生。被災者の多くが、納税困難な状況に陥っています。国税庁は4月5日、「東日本大震災により被害を受けた滞納者に対する滞納整理について」の通達(指示)を発出。この通達の活用を呼びかける税理士の角谷啓一さんに聞きました。
なお、震災により相当な損失を受けたことの確認方法について、この通達が引用している事務運営指針「『災害被災者に対する租税の軽減・免除、納税の猶予などに関する取り扱い要領』の全部改正について」もあわせて掲載します。
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「被災と納税の緩和・軽減」に関する現行の制度として、(1)通則法11条(地方税法20条の5の2)に基づく「納期限の延長」(災害のやんだ日から2カ月以内、延長可)、(2)通則法46条1項の「相当の損失」を受けた場合の納税の猶予(損失の度合い応じた納税の繰り延べ・分納制度ではない)、(3)通則法46条2項1号の災害等に伴い納付が困難になった場合の納税の猶予(分納制度)、(4)法人税法75条による災害等に起因する「申告書の提出(納付)期限の延長」制度、(5)「災害等の場合における延滞税の免除」(通則法63条6項3号)等があります。また、状況に応じて徴収法151条の換価の猶予も活用できます。
しかし、このような制度があるものの、被災あるいは災害関連の納税者を救済する上で、何をどうしたら、どのような「緩和・減免の措置」が受けられるのか、わからないというのが現状です。この点について、当面の対応策として現行制度上の不備を補うための、より具体的な「通達」等が一般にも公開されるべきです。今回の国税庁通達(指示)は、佐々木憲昭衆院議員(日本共産党)の国会質問によって明らかにされたものです。国税当局が、大災害に対応した徴収行政を現場に指示している点で一歩前進で、活用できる面もあります。
(1)行政の基本的な対応としては、「被災の状況や心情にも十分配慮」しながら、「被災状況・資力状況を的確に把握し、適切に緩和制度の適用を行う」と、被災した納税者の心情も含め、「配慮ある行政」を指示していることが注目されます。
(2)指定地域(前記、通11条の「納期限延長地域」に国税庁によって指定された宮城、福島、岩手、青森、茨城の5県)の滞納者等に対して納税の猶予(通46(2)一)を行う場合は、特別な場合を除いて「担保を徴しないこととして差し支えない」など、要件の緩和を示唆しています。
(3)換価の猶予(徴151)についても、特段の事情がない限り、原則として「納税の誠意を有するものと認めて差し支えない」と、猶予適用への配慮を現場に求めています。
(4)指定地域の納税者(滞納者)で、震災により納税することができない事由が生じた場合には(猶予等の適用がなくても)、災害発生時から「その事由が消滅した日以後7日を経過した日まで」の延滞税は全額免除するとしています(通63(6)三)。
(5)滞納処分の停止(徴153)については、上記指定地域の滞納者で、相当の損失を受けた場合などのときは停止見込み事案に指定するとともに、財産調査は原則的方法によらなくても、「妥当な方法でよい」とし、特に滞納税額が100万円未満の事案については、「実地調査を省略し、官公署等の調査のみによってもよい」など、大幅に適用要件の緩和を指示しています。
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※「通則法」または「通」=国税通則法、「徴収法」または「徴」=国税徴収法、(例示)通則法63条6項3号または通63(6)三…国税通則法第63条第(6)項第3号
全国商工新聞(2011年5月16日付)
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