政府震災対策本部、東電、経産省に全商連が緊急要請
「無利子融資実行したい」=政府震災対策本部
全国商工団体連合会(全商連)は13日、首相官邸を訪れ「東北地方太平洋沖地震からの復興をめざす中小業者の緊急要請」を提出し、藤井裕久・内閣総理大臣補佐官に要請しました。
首相官邸で藤井裕久・内閣総理大臣補佐官(左)に要請する岩手、宮城、福島各県連の代表と菊池副会長
被災者自ら訴え
岩手、宮城、福島の各県商工団体連合会(県連)の代表が被災の実態と要求を訴えました。
震災前の借入金について、藤井氏は「実際には返せない。不良債権扱いにしないように金融機関に求める」と述べました。
原発事故の被害については「原因をつくった東電が補償するのが原則。払いきれない場合は政府がきちんとする」とした上で、「無利子によるつなぎ融資を実行したい」と答えました。
さらにがれき撤去を「地元の雇用の場に位置づけ、特に海上のがれきは漁業者に撤去してもらう。その費用は国が負担する」と答えました。
参加者は「仮設住宅の建設で4次、5次の下請けになり、単価がたたかれている。自治体からの直接払いを行なうことや住宅と同じように店舗・工場への補償をしてほしい」と要望しました。
「あらゆる償い果たせ」生活・営業の補償を要望=東電
「中小業者への大胆な施策を示し、原発被害の補償を直ちに」―。全国商工団体連合会(全商連)は13日、東京電力本店と経済産業省と交渉しました。岩手、宮城、福島、千葉、茨城の各県商工団体連合会(県連)から40人が参加。借入金の返済凍結・猶予、債務の免除や店舗・工場の再建・補修への補助などこれまでの法律の枠を超えた支援策と原発事故の損害賠償などを要望しました。
「東電はあらゆる償いを果たせ」と迫る福島県連の代表団(右端は菊池大輔全商連副会長)
東京電力本店との交渉には、福島県連から20人が参加。交渉を取り付けていたにもかかわらず、すぐに本店内に入れさせない対応に、参加者は「福島を汚した東電はあらゆる償いを果たせ」の横断幕を張ってアピール。マスコミ各社が押し寄せ、本店前は一時騒然となりました。
応対した広報部原子力センターの担当らは冒頭から、「要望書を預かる」との態度。参加者の怒りは爆発し、東電の姿勢を厳しく追及するとともに、損害賠償を直ちに行うことなどを求めました。
福島県連対策本部の紺野重秋部長=自動車整備=は「仕事ができず、生活費もない。東電は補償すると言っているが、いつ補償をするのか。具体策が見えない。避難所でどんな生活を送っているのかあなたたちは知っているのか。朝はパン2個、ジュースが1本。週1回、ボランティアが炊き出しをするだけで、温かい食事ができない」と怒りをぶつけました。
浪江町に住む相双民商の石川市二郎さん=建築=は「震災翌日に第一原発から20キロのところに避難し、そこも危ないと言われ、避難場所を5回ほど転々とした。機械を取りに戻ることもできず、収入が途絶え、従業員の給料や仕入れ代が支払えない。すぐに補償してほしい」と窮状を訴えました。
会津若松民商の山本鉄雄さん=ペンション=は「6校の中学校の修学旅行がキャンセルになり、今、ペンション村は誰もいない。福島というだけで魚も野菜も売れない。東電に人生を狂わされた。今すぐ補償してほしい」と力を込めました。
東電側は「誠意をもって対応する。原子力損害賠償法に基づいて準備を進めている」との回答を繰り返すだけ。また、「現地に対策本部を設置し、清水正孝社長が本部長を務め、数十人規模で対応している」と説明。しかし、福島県連が東電福島営業所と6日に行った交渉では、「営業所には10人しかいない」ことが明らかになっており、対策本部が機能していない実態が浮き彫りになりました。
さらに、東電担当者は野菜が出荷停止になった翌日に自殺したキャベツ農家がいることを「知らない」と答え、参加者はいっせいに抗議。線香を上げに行くべきとの求めに対し、現地に行くことを約束しました。福島での清水社長との面会についても「努力する」と答えました。
「既存の枠を超え対応を」返済凍結など要請=経産省
東日本大震災で被災した業者の生活と営業を再建させ地域経済の復興を経産省に要望する全商連の菊池副会長(前列中央)と西村副会長(右端)
経済産業省では一刻も早い営業再建・存続を実現するため、(1)事業再建のための資金(2)既往債務の返済凍結・免除(3)店舗・工場設備への支援(4)原発事故による被害に対する補償‐など既存の枠を超えた制度創設や柔軟な対応を迫りました。
宮城・石巻民商の森山久志さん(自動車販売・整備、管工事)は「大津波で工場が全部破壊され、日本政策金融公庫につなぎ資金を申し込んだが、『返済の見込みがないので貸し付けは難しい』」と断られたことを告発し、是正と融資実行を求めました。省側は「その対応はあってはならない」と回答しました。
岩手・宮古民商の大杉繁雄さん=飲食=は「1階が食堂で2階が宴会用のエントランスを準備した建物が大津波で流され、町とともに炎上した。震災前は順調に返済していたが4000万円超の残債がある。再建のため債務を免除してほしい」と要望。
岩手・陸前高田民商の佐藤吉郎さん=漁業=も「新造した漁船を大津波で失い2400万円の借金だけが残った」と債務の免除を求めました。他の参加者も、「『借金を棒引きにしてほしい』との声が多い」「震災前の借入れの返済をすべて免責する『平成の徳政令」のような施策を打ち出してほしい』と要求しました。
宮城・石巻民商の渡辺金夫さん=電気工事=は、水産会社の冷蔵庫に入っていた6トン近い魚がすべて腐り、1億3000万円の損害が出た。失業保険も上限や支給期間を延長してほしい」と訴えました。
省側は「庁内の課の壁を超えた横断的な体制をとっている」「金融庁と話をしなければならない。確認したい」と全力で意向を取り上げるとの姿勢を示しました。
また福島第一原発事故の被害では、福島県というだけで「納品を断られ毎月600万円〜800万円の取引がなくなった」(縫製)、「『福島県でプレカットした木材は使えない』と言われ返品に」(建築)などの実態が次々。営業補償を求めたの対して、「要望はもっとも。原子力安全・保安院と調整している」と答えました。
その他の対策では(独)中小企業基盤整備機構が仮設店舗、仮設工場の整備を決定し、要望を聞くため職員43人を6県に派遣すると説明しました。
全国商工新聞(2011年4月25日付)
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