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  トップページ > 震災情報のページ > 全国商工新聞 第2970号 4月11日付
 
 

原発事故 出荷制限で自殺 東電に殺された


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福島県南相馬市内で立ち入りが禁止されている福島第一原発から20キロ圏の国道114号(南相馬市在住の大宮篤史さん撮影)

 地震、大津波、福島第一原発による放射能漏れ事故に襲われた福島県。須賀川市ではコメやキャベツを作る民主商工会(民商)会員が自ら命を絶ちました。避難指示や退避地域に指定された地域の住民は今なお、避難生活と移動を強いられる毎日。安否確認も困難ななかで、県内の民商は救援物資の支給、地域住民の支援に取り組んでいます。

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放射能対策でマスクと防護服をつけ、警察が行方不明者の捜索を続ける(大宮篤史さん撮影)

ついに犠牲者が
 「農業が大変なことになる」―。こんな言葉を親しい友人に残して一人の農家が3月24日、自らの命を絶ちました。
 食品衛生法の暫定規制値を超える放射性物質が検出されたとして、政府が福島県産のホウレンソウ、キャベツなど11品目の出荷・摂取制限を指示した翌日のことでした。
 福島県須賀川市でコメ、キャベツ、キュウリなどを生産。須賀川民商の元副会長で、地域からの信頼も厚かった人物でした。
 「悔しいの一言だね」と話すのは、元副会長と親しかった須賀川民商副会長の根本清さん=園芸。須賀川民商大桑原班に所属するメンバーです。亡くなる前日まで、地震の被害を受けた元副会長宅のガレキを一緒に片付けていました。
 「自殺するそぶりなんて何にもなくて。『明日もくっから』と声をかけて別れたばかりなのに…」。
 27日に行われた葬儀では友人代表として「あなたは良いことは良い、悪いことは悪いときちっと方向付けをしてくれた。ここまで導いてくれてありがとう…」と声を詰まらせながら言葉を振り絞りました。
 元副会長は須賀川民商の草創期のメンバーの一人。「原発の話とかよくしてね。大桑原班をわずか3人から15人にまで大きくしてきた中心人物だったんですよ」

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福島県須賀川市内で生産されるキャベツ

農業は大変に
 篤農家―。元副会長を知る誰もが口にする言葉です。土壌の研究、有機農法にも取り組み、食の安全には人一倍の関心を寄せていました。地域でも1週間後には区長に選ばれる予定でした。
 数年前からは学校給食にキャベツなどの野菜も納入。そのキャベツが出荷停止を受けたのです。根本副会長は言います。
 「あの人は『原発の放射能漏れが止まらないと農業は大変なことになる』といっていた。先の先まで読める人だからこそ、ショックが大きかったのかな」
 200人を超える地元住民が参列した葬儀では、こんな声が聞こえてきました。
 「あの人は東京電力に殺されたんだ」

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第一原発から23キロ地点にある相双民商の事務所に詰めて支援活動を続ける松本事務局長(右)と事務局員の大槻富美枝さん

避難生活は限界
 放射能漏れ事故を受け、政府は福島第一原発の20キロ圏内に避難指示。20〜30キロ圏内は屋内退避区域・自主避難を呼びかけ、数万人が退避しています。
 「みんな2、3日ほどの避難と考えていたから着の身着のまま。見通しもなく、限界にきている」と、第一原発から23キロ地点にある相双民商の松本寿行事務局長は言います。
 自宅が20キロ圏内にあるため松本事務局長自身、病弱の実父を実姉宅に預け、相双民商の前副会長の中島宏さん宅から民商の事務所に通う毎日。「住民も民商会員も、避難先は北海道から関西までさまざま。避難先も転々とし、連絡を取ることすら難しい。それに自主避難というがどこに行けというのか。補償問題についても住民には何ら情報がない」と語気を強めます。
 南相馬市から新潟県長岡市に避難している原田悍さん=建設=も避難場所を転々としている一人。「家族も家も何とか無事だった。とにかく原発を何とかしてもらわないと生活も落ち着かないし商売もどうにもならない」といいます。

福島県内の避難指定区域

食品衛生法に定める暫定規制値を超える放射性物質が検出された11品目(福島県産分)

風評被害も深刻
 野菜などの出荷停止で風評被害にも拍車がかかっています。
 須賀川地方農民運動連合会の丹治実会長は「東京や千葉の小売業者から『今年のコメの取引は分からない』と電話連絡があった」と語り、昨年のコメについても返品が相次いでいるといいます。
 同市内で旅行会社を経営する八木大作社長は「6月までの予約は全部キャンセルされた。今までにない最悪のケース」と話し、南相馬市でも「牛や馬の取引はできるのか」などの相談が民商に寄せられています。
 福島労働局によると、30キロ圏内で労働保険に加入しているのは4626事業所、従業員は約5万7000人。「放射能漏れが長引けば、多くが解雇や休業に追い込まれる可能性もある」といいます。従業員100人以上の事業所対象の調査では、分かった範囲内でも68事業所で6046人が休業、928人の解雇や解雇予定が判明しています。
 福島県連の紺野重秋副会長は言います。「民商会員の自殺にしても、政府がはっきりと補償をうち出していれば防げたこと。放射能漏れの情報を正確に伝え、住民の暮らしと営業を支える対策をはっきりうち出さなければ、地域そのものが崩壊してしまう。原発は廃炉にすべきだ」

全国商工新聞(2011年4月11日付)
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