全国商工新聞が果たした役割
〜激動の90〜2000年代のたたかい〜
全国商工新聞は、1952年3月10日に発刊されてから今号で3000号を迎えました。その歩みは業者に寄り添い、業者運動を励ましてきた歴史でもあります。融資獲得、災害支援、仕事おこし、高金利とのたたかい…。どの問題でも読者から「商工新聞を読んでいたから」「読んでいなかったら…」との声が寄せられてきました。2000号(91年5月6日号)以降の商工新聞の役割をみてみると…。
増税反対の世論を広げ
権利掲げ納税猶予に道
消費税増税中止を!日本型インボイスの導入やめろと怒りのこぶしを突き上げる中小業者決起集会(1996年7月15日、東京文京区の後楽園ホール)
1989年、国民・中小業者の反対を押し切って強行された税率3%の消費税。97年には5%に引き上げられ、日本経済を未曽有の不況へと落ち込ませました。
商工新聞では、23年間、一貫して消費税廃止と増税反対を求める運動を報道し続けてきました。
「生活費への課税を許すな」と各界へ呼びかけ、輸出戻し税のカラクリなど専門家の解説も掲載。他団体との共同を広げ、さらなる税率引き上げを阻止してきました。
また、納税者の権利確立をめざす「納税者の権利憲章(案)」など全商連の提言も掲載し、違法な税務調査を許さぬ各地の運動を伝え、全国の仲間を励ましました。
自殺者まで生み出した強権的な地方税徴収に対しては、「納税緩和措置」について特集し、自治体に活用を迫り、各地で「納税の猶予」「換価の猶予」などを実現する大きな力となりました。
国保引き下げを実現
社会保障守る運動を報道
広範な市民との共同で国保料引き下げを実現させた福岡市内の民商など(市役所前座り込み行動、08年2月)
84年以降、国保財政への国庫負担が相次いで削減され、所得200万円で国保料(税)が年間50万円など払いたくても払えない実態が生まれ、保険証の取り上げが各地で起きました。商工新聞は保険料引き下げや集団減免申請、自治体交渉、請願署名に取り組む会員の姿を伝えるとともに、京都や福岡など全国の引き下げ実現を知らせ、全国の運動を励ましました。
00年4月に導入された介護保険では、「保険あって介護なし」という実態を知らせ、制度改善と保険料減免の運動を掲載しました。
01年の年金支給年齢引き上げや社会保険の医療費自己負担3割への引き上げ、生活保護の母子加算の廃止など社会保障が連続して改悪されるなかで、改悪を許さない民商・全商連の運動を伝えました。08年には年齢によって医療を差別する後期高齢者医療制度の問題点を伝え、廃止を目指す運動推進の力となりました。
融資獲得運動を応援
住宅ローン負担軽減に大反響
金融円滑化法成立の大きな力となった全中連主催の国会内集会
結成以来、中小業者の融資相談や、融資制度の改善を求めてきた全商連。01年6月には「出世払い融資」なども含めた「地域経済振興と中小業者・国民本位の金融めざす提言」(金融ビジョン)を発表しました。
リーマンショック、円高、デフレの同時進行で業者の経営と暮しが危機に直面した09年10月、「元利返済猶予」などを求め、全中連が国会内で集会。亀井静香金融担当相(当時)が出席し、国分稔代表幹事(全商連会長)と握手を交わし、金融円滑化法を「臨時国会で成立させる」と約束しました。商工新聞はこの集会をトップで報道。翌年2月には「危機を生き抜く金融対策交流会」での各地の困難突破事例を紹介、融資獲得運動を側面から支えてきました。
円滑化法を活用した「電話一本で住宅ローン金利引き下げ」の記事は大きな反響を呼び、「私も下がった みんな下がった」の記事を毎週掲載。金利引き下げ記事を週刊誌や一般紙も取材するなど、金利引き下げ運動を全国に広げました。
多重債務問題を解決
貸金業法改正への道開く
商工ローンなどの高金利規制を考えたシンポジウム(高金利引き下げ全国連絡会主催、04年5月)
異常な高金利と過酷な取り立てで、中小業者を食いものにしてきた「商工ローン」。商工新聞はその手口などを告発、被害者の勇気ある行動と共にその解決方法などを伝えてきました。
99年10月4日号では「商工ローンだましの手口」と、内部資料などを使い、貸付限度額を超える極度額を保証人の契約額に書き込むことで、追加融資を重ねていく手法を暴露。同時に利息制限法に基づく計算方法も示し、解決策を明らかにしました。
勇気を持って、商工ローンと対峙する業者も相次いで商工新聞に登場。
借金地獄から脱出した業者の手記も掲載し、多くの中小業者を励ましました。
全商連は99年10月、「商工ローン問題解決への緊急提案」を発表。商工新聞はその後も「日栄(現ロプロ)」をはじめ商工ローンのの非人道的な取り立ての告発や貸金業規制法及び出資法の上限金利見直しなどの動向も報道、多重債務問題解決に向けた系統的な報道を続けました。
異常な高利貸し付けの原因となった「グレーゾーン」を撤廃させ、貸金業者が利息制限法の金利15〜20%の上限を超える貸し付けができなくなった報道は、多重債務問題を解決する力になりました。
仕事おこし運動推進
リフォーム助成制度の拡大に弾み
地域も業者も住民も喜ぶ「三方よし」の経済活性化対策として、全国に広がる住宅リフォーム助成制度。商工新聞が06年以来、全国調査を行い、創設運動を励ましてきたものです。
調査開始当時の06年は72自治体でしたが、10年には154自治体に、11年にはその2倍を上回る330自治体で創設されています。
商工新聞は同制度が業者の仕事おこしだけではなく、地域経済にとっても大きな経済効果があることを自治体のデータなどをもとに報道。
とりわけ岩手県宮古市の「使い勝手のいい」制度の紹介は、自治体との交渉・懇談などでも大きな力となり、地域経済を担う民商の役割や値打ちにも光を当てるものとなりました。
小規模工事事業者登録制度は、調査開始の04年当時262自治体でしたが、09年には411自治体に増加。各地の経験が商工新聞で紹介され、小規模工事の仕事おこしを支えてきました。
地元業者に優先発注を
地域経済振興を正面から提起
「地元企業優先の分離・分割発注を」と要請する京商連の役員(左側・10年3月)
「地域の中小業者に受注機会を」―。2010年に京都市では政府の緊急経済対策事業の一つとして、公立学校のテレビの地デジ化を進めていました。
この事業の「入札」の結果、家電量販店のヤマダ電機(本社・群馬県高崎市)が「独占」落札をしていることが分かり、京都府商工団体連合会(京商連)は入札基準の見直しを京都市長に申し入れました。
この行動を商工新聞が報道し、地元のマスコミも注目。発注者の市教委は緊張に包まれていたとの情報もありました。
その後行われた入札ではヤマダ電機は入札を一部「辞退」することになり、地元の電器店が落札しました。
京都府が発注する高等学校のパソコンへの入札でも同様の問題が発覚。京都電気商組合とともに地元業者への分離分割発注を要求しました。府は6月の議会で分割して入札を行うことを明らかにしました。
また、全国各地の地域経済(中小企業)振興条例づくりの実例も取り上げ、地域振興を世論にしてきました。
これらを通じて、地元業者と地域経済を大切にする民商への信頼が高まりました。
基地反対闘争大きく
平和と憲法問題の動向伝え
9万人以上が普天間基地の国外・県外移設を求めた「4・25沖縄県民大会」(10年4月25日)
平和でこそ商売繁盛―。商工新聞はこの立場から、全国各地の平和と民主主義を守る運動や憲法をめぐる動向を伝えてきました。
99年8月9日号では故井上ひさしさんをインタビューし、「日本国憲法は世界史の傑作」と1面で紹介。
同年9月6日号からは「憲法をめぐる動き」(後に憲法動向)として、時々の憲法と民主主義にかかわる動きを欠かさず紹介してきました。
とりわけ沖縄県連、名護民商を中心とした辺野古沖の新基地建設反対闘争や「集団自決」をめぐる史実の歪曲問題を重視。島ぐるみのたたかいとなった県民大会には記者も派遣。新基地建設反対の稲嶺進市長を誕生させた歴史的な名護市長選も業者の立場で報道、その一翼を担ってきました。
核兵器廃絶のための6・9行動や国民平和大行進、原水爆禁止世界大会も毎年報道。00年、10年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議などの国際的な動向も伝え、平和でこそ商売繁盛の立場を貫いてきました。
助け合い共済を守って
不当干渉に抗し論陣
「自主共済をつぶすな」と訴えた懇話会のデモ行進(07年11月)
保険業法「改正」による、全商連共済会への不当な干渉にたいしても論陣を張り、共済制度を守る上でも商工新聞は大きな役割を果たしました。「改正」保険業法が成立したのは05年4月。06年4月17日号で「健全な自主共済つぶす『改正』保険業法 守ろう助け合いの全商連共済会」を特集、その本質が「日米の大手保険会社が自らの市場を拡大しようと圧力をかけた」ことにあるとし、「適用除外」をかちとろうと呼びかけました。
全商連による連続的な国会議員要請や金融庁交渉も系統的に報道、06年9月には「助け合い共済を破壊する憲法違反の規制とは断固たたかう」とした全商連見解を全文掲載し、全国のたたかいを励ましました。労山、民医連、保団連、全商連によって結成された「共済の今日と未来を考える懇話会」の画期的な意義についての座談会も企画(07年4月16日号)しました。
保険業法の見直しと団体自治に干渉しない要請署名も160万人分を超え、金融庁は「共済金の一部表記を見直せば、制度と組織を認める」(09年1月)と表明。商工新聞は共済制度を守る運動と世論の広がりをつくってきました。
56条廃止運動が発展
業者婦人活動生きいき報じ
「私たちの働き分を認めてほしい」―。所得税法第56条廃止を求める国への意見書採択は338自治体に広がり、世論と運動をつくり出してきました(10月末現在)。
商工新聞は所得税法第56条廃止を目指す各地の民商婦人部の活動を生きいきと伝えてきました。
全婦協が2年に1回開いている「全国業者婦人決起集会」では、全国で集めた「業者婦人の地位向上を求める署名」を持ち寄り、各省庁と交渉すると共に衆参両院の全国会議員に働きかけ、理解と共感を広げてきた運動を紹介しました。
国会でもこの問題が取り上げられ、日本共産党の吉井英勝衆院議員が「56条は廃止すべき」との追及に峰崎直樹財務副大臣は「税制調査会のメンバーで家族従業者の労働の対価としてどう保障するか考えていきたい」と回答(10年3月19日)。こうした報道は読者や婦人部員を励まし、運動に弾みをつけました。また、99年には国会で「業者婦人の施策の充実を求める」請願が採択され、内閣府の「男女共同参画プラン」に「女性起業家に対する支援」「家族従業者の実態把握等」が盛り込まれるなど運動を発展させてきました。
コンビニ・FC問題が改善
本紙スクープが国会動かす
「見切り販売」制限で損害を受けたとして、セブン・イレブン本部を提訴したコンビニオーナーたち(09年9月29日)
本部だけがもうかる不公正なコンビニ・FC業界を先陣を切って追及、オーナーたちの運動を励ましてきたのも商工新聞でした。
97年7月、本部から根こそぎ利益を奪われ、家庭生活も崩壊、自殺に追い込まれた店主の実態を告発しました。
国会でも取り上げられ、当時の通産大臣は調査を約束し「商工新聞の報道が国会を動かした」と言われました。
98年にはサークルK本部が一方的に契約を解除し、深夜0時にトラックを乗りつけ、商品を強行的に運ぶ横暴をスクープ。大きな反響を呼び、98年4月のコンビニ・FC加盟店全国協議会(その後全国FC加盟店協会に改称)結成へとつながりました。
オーナーたちの継続的な運動の結果、09年には公正取引委員会が、弁当などの「見切り販売」問題で、コンビニ最大手のセブンーイレブン・ジャパンに「排除命令」を出すまでになりました。
そして今、公正なルール確立を求めるFC法制定が大きな課題となっています。
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