全国商工新聞 第3388号2019年12月2日付
今回は確定申告の際に必要な提出書類と提出期限について説明します。
最初に、消費税増税による複数税率の導入に伴う、簡易課税の届出の特例について説明します。簡易課税の適用を受けるための提出期限は、個人事業主が2019年に簡易課税の適用を受けるには2018年12月31日までに届出書を提出しておく必要がありました。しかし複数税率の混乱を受け、取引を税率ごとに区分することが困難である場合には、簡易課税の適用を受けるための届出を2019年12月31日までに提出すればよい、という特例が設けられました。また、2020年に簡易課税の適用を受けたい場合には、2020年9月30日までに届出を行えばよいということになりました。
簡易課税の届出をしておけば、「みなし仕入率」を用いて消費税の計算を簡便に行うことができます(2年前の課税売上が5000万円以下)。ただし、簡易課税制度を選択した場合に消費税の「損税」が生じることもありますので、簡易課税制度の選択は慎重に検討してください。
次に所得税の提出書類について説明します。
確定申告で控除を受けるために必要な書類で、代表的なものを表にしましたので確認してください。
事業所得(不動産を含む)で申告をされる方の収支内訳書について、国会の付帯決議で、小規模事業者に過大な負担を押し付けてはならないとしました。収支内訳書の提出よりも、自主計算をしっかりとやっておくことが重要です。
寄附金があった場合の控除書類は、発行団体の関係で申告期限に間に合わないこともありますが、その場合であっても、後日、控除書類を提出すれば構いませんので、当初申告時に寄附金控除の記載をしてください。
医療費控除と住宅借入金控除については、連載9回目で説明することを予定しています。
次に、確定申告に影響を及ぼす提出書類で、特に重要なものを紹介します。税額計算に影響を与える届出の代表的なものに、青色申告承認申請書があります。
所得税は原則として、白色申告です。青色申告には記帳義務が課され、代わりに青色専従者控除や青色申告特別控除などの特典を与えました。一般には白色申告でも記帳義務があるという人もいますが、法律には税務調査の際に帳簿を確認すると書いてあるだけです。事業規模にあった記録がしてあれば問題ありませんので、小規模事業者においては、申告書を作成できたのならば、作成の基礎となった帳簿もできていると考えてよいでしょう。仮に青色の承認を受けたい場合には、青色申告書による申告をしようとする年の3月15日(2020年から青色申告で申告したい場合には2020年3月15日)までに青色申告承認申請書を提出してください。なお、消費税の申告期限は所得税と異なり3月31日です。
このように、届出一つによって税金計算のやり方が異なる場合もあります。諸先輩や仲間のアドバイスを得ながら進めてください。
(税理士・佐伯和雅)