全国商工新聞 3351号2019年3月4日付
確定申告をした人は2017年で約2197万人で、その半数以上の約1283万人は還付申告です。また、所得税の実地の税務調査は2017年7月~2018年6月の1年間に約7.3万人に対して実施されています。
これらの人数から実地調査の接触率を計算すると約0.3%となります。この割合だけを見ると少ない印象を受けますが、実地調査を行う相手は事業所得者が多いでしょうから、接触率の実感としてはこれよりも高いものになります。
さて、税務署が納税者に接触する方法として大きく二つあります。一つは行政指導といわれるもので、もう一つは前述した実地の税務調査です。ここからこの二つに分けて解説します。
まず行政指導(表の(1)、(2))ですが、突然税務署から送られてくる「お尋ね」や「お伺い」といわれるものが該当します。行政指導は単なるお願いの内容になりますので、これに回答する義務はありません。
行政指導は任意により行われるもので、これに従わなかったことを理由に不利益処分をしてはならないということになっています。お尋ねやお伺いといった文書が届いた場合には、すぐに回答せずに仲間に相談すると良いでしょう。期限が設けられている場合も、税務署の都合で目安を書いているだけですので、これにも従う必要はありません。
次に税務調査です。税務調査は国税通則法で「必要がある場合」にしか行えないとされています。これを、まず押さえておかなければなりません。網羅的に帳簿書類や原始記録を見せろという調査官もいるようですが、これでは何の「必要がある」のか分かりません。調査の必要性や目的を納得いくまで聞く必要があります。
一般的な税務調査の場合は、納税者に対して法律で定められた一定の事項を事前に通知することになっています。これを事前通知(表の(3))と言い、税務署が調査を行う手続きとして国税通則法に規定されています。税務調査の連絡と事前通知は電話によることがほとんどですので、しっかりと聞いて対応するようにしましょう。
一方で電話による方法ではなく、突然税務署から「○○税の調査について」という文書が送られてくることがあります。ただこの文書には調査することの記載はありますが、法律で定めされた事前通知事項が網羅されておらず根拠法令の記載もありませんので、呼び出しをして調査する(表の(4))ということが考えられます。このような文書が届いた場合には、事前に税務調査なのか、それとも行政指導なのかを明らかにさせておくようにしましょう。
最後に、税務調査が終わり確定申告の内容に訂正箇所があれば、修正申告するか更正処分を受けるかのどちらかを選ぶことになります。国税庁の税務調査FAQでは修正申告の勧奨を断ったとしても、修正申告に比して不利益な更正処分はしないとあります。
税務調査の内容に納得いった場合のみ修正申告の勧奨に応じることにしてください。
(税理士・中出良)