確定申告のワンポイントアドバイス
(9)消費税申告の注意点

全国商工新聞 第3348号2019年2月11日付

納税義務の判定に注意

 今回は消費税申告において、近年の改正で分かりづらくなっている「納税義務の判定」と、中小事業者のための制度である「簡易課税制度の適用」について説明します。

納税義務の判定

 納税義務を判定する方法は複数存在し、そのうち一つに該当すると納税義務がある事業者(課税事業者)となります。ここでは基本的な三つの判定方法をご紹介します。
 (1)2年前(基準期間)の課税売上高が1000万円超かどうか(図1)(2)1年前の1月~6月(特定期間)の課税売上高または支払給与の総額が1000万円超かどうか(図2)(3)「課税事業者選択届出書」が提出されているか-で判定します。

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 このときに注意していただきたいのが判定する際の課税売上高の金額です。2年前に課税事業者であった場合は、課税売上高を税抜処理した金額で判定し、2年前に免税事業者であった場合は、課税売上高を税抜き処理しない金額で判定します。仮に2年前の課税売上高が1080万円であったとすると、2年前に課税事業者であった場合は免税事業者になり、2年前に免税事業者だった場合は課税事業者になる、という不合理な判定基準になっています。
 なお、1000万円以上の棚卸資産や固定資産(高額特定資産)を取得した場合や相続により事業を承継した場合などでは、これら以外の判定方法になりますので、注意してください。

簡易課税制度の適用

 簡易課税制度を使って申告することになるのは「簡易課税制度選択届出書」が提出されており、かつ、2年前の課税売上高が5000万円以下の場合です。納税者が事前に簡易課税制度を選択していることが前提の制度であるため、2年前の課税売上高が5000万円以下の場合は強制適用になります。
 簡易課税制度を選択している場合は、売り上げにかかる消費税より仕入れや経費にかかる消費税が多くても還付を受けることができません。ですので、例えば翌年に多額の設備投資を計画している場合、売り上げにかかる消費税よりもその設備投資にかかる消費税が多いと見込まれる場合などは、事前に本則課税に戻しておく必要があります。

消費税の各種届出書

 消費税の各種届出書は適用制限や提出期限などが分かりづらくなっていますので注意してください。前述したそれぞれの「選択届出書」は「選択不適用届出書」を提出するまで効力が続きます。選択をやめたい場合は、「選択不適用届出書」を前年の12月31日までに税務署に提出しなければなりませんので、ご注意ください。

廃止すべき消費税

 消費税が導入された当初、免税事業者は2年前の課税売上高が3000万円以下という基準でした。簡易課税制度の判定も同様に5億円以下でしたが、対象がどんどん切り崩されています。国税の新規滞納額で圧倒的に多いのは消費税で、中小事業者には重くのしかかる「悪税」です。滞納が増えるということは、事業者の負担能力を超えて税金が課されているということですから消費税はすぐさま廃止すべきです。

(税理士・中出良)

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