全国商工新聞 第3345号2019年1月21日付
課税標準の計算が終わると、次に課税標準から「所得控除」をして、課税所得金額の計算をします。ここで求めた課税所得金額に税率を乗じたものが所得税の金額となります。今回は「所得控除」について触れていきます。
所得控除は全部で14種類あります。各控除の目的はさまざまですが、いくつか紹介します、配偶者特別控除について、昨年より控除を受けられる配偶者の所得金額の枠が広くなりました。その一方で、納税者の本人の所得と併せて複雑な表に当てはめて計算することになり控除額を求めるのは複雑になりました。
基礎控除については、2020年より控除額が48万円になることが決まっていますが、その他の控除との調整があるため、減税の効果は感じられないと思います。今回は、控除対象の対処となるかどうかの判断に迷うことが多い、社会保険料控除と医療費控除について解説します。
まず、社会保険料控除ですが、控除の対象となるのは公的な健康保険料、介護保険料や年金保険料などです。自分の分だけではなく、生計を一にする親族の社会保険料についても所得控除の対象となります。ただし、扶養親族であっても年金から徴収されている社会保険料については、年金受給者自身が社会保険料を支払ったとされますので、注意しておいてください。ここでいう「生計を一にする」には、就学や療養で別居している親族で、学費等を送金している場合などが含まれます。同居が絶対条件ということではありません。
次に医療費控除についてです。医療費控除はよく年間の支払額が10万円を超えた部分が控除されると思われていますが、少し違います。正確には、総所得金額等の5%を超えた金額が医療費控除の対象となります。つまり、総所得金額等が100万円であれば、5万円を超える医療費は医療費控除の対象となります(下の表を参照、ただし控除限度額は200万円)。
何が医療費控除の対象となるかについて、判断が難しいものがあります。まずはシンプルに、医師などの診察や治療であるかどうかを考えてみてください。そう考えれば健康診断やインフルエンザなどの予防接種が医療費控除の対象とはならないことが、なんとなく分かると思います。
医療費控除については、昨年より書類が一部改定されました。医療費の領収書は原則添付を必要とせず、その代わりに「医療費控除の明細書」を添付すれば良いことになりました。ただ、明細書に添付する「医療費のおしらせ」については、各健保組合が1月から12月までの集計を確定申告までに行うことが難しく、それに加えて、医療費控除は申告対象者が多く、変更の周知期間も必要ですから、平成31(2019)年分までの確定申告までは、従来通り医療費の領収書の添付または提示による申告もできることになっています。
最後に、ふるさと納税ですが、所得税で寄付金控除として調整する部分があります。詳細については割愛しますが、住民税で全て調整をするわけではないことは知っておいてください。