全国商工新聞 第3344号2019年1月14日付
前回に引き続いて経費の話になります。今回は減価償却関連以外の経費について触れたいと思います。
まず経費で注意すべき点は、「日頃からの心掛け」です。請求書や領収書、各種レシートをしっかりと保存し、それらがない場合には出金伝票などで管理しておきましょう。
税務調査で問題になりやすいのが家事関連費です。本来、生きていかなければ事業を存続できないわけですから、個人事業者にとっては家事関連費のすべてを「必要経費」と捉えるべきです。しかし現在の所得税法では、家事関連費で必要経費に算入できるものについて、家事関連費と事業を合理的に案分することが求められています。租税公課、水道光熱費、通信費、地代家賃など自宅と店、工場が一緒の場合は、面積割合や使用割合などの合理的な方法で案分しましょう。
税務調査で「コンビニのレシートはすべて否認された」などという話を聞きますが、とんでもないことです。所得税法施行令96条では、「業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる場合における当該部分に相当する経費」は、必要経費になると規定されています。コンビニであろうがスーパーであろうが、業務の遂行上必要であるならばすべて必要経費です。税務署の言いなりにならずに、その必要性をしっかりと主張しましょう。これは上記の経費の科目だけでなく、接待交際費、旅費交通費、消耗品費、福利厚生費などでも同じです。
具体的にどの経費がどの科目に該当するかについては、全商連作製の「自主計算パンフレット2019」の別表1や巻末の「経費早見表」を参考にするとよいでしょう。
1年間の所得の計算は12月31日が最終日となりますので、例えば仕入れが2018年12月31日までに完了していて、その代金の支払いが2019年1月1日以降であるものについては、2018年の経費になります。外注費なども同様に、2018年中に役務の提供を受けていて、その支払いが2019年以降のものについては、2018年の経費になります。これらは12月31日時点で、まだ支払いがされていないものになりますので、買掛金や未払金として処理することになります。経費の計上漏れがないように、仕入先、外注先からの納品書や請求書などを丁寧に確認しましょう。
また同様の考え方で前年の2017年に仕入れが完了していたり外注費などの役務の提供を受けていて、その代金を当年の2018年に支払ったものについては、2018年の経費にならないので注意が必要です。
税務調査ではこのような年をまたぐ取引に誤りがあるかどうか(これを「期ずれ」と呼んだりします)は必ずといっていいほど確認される項目になります。商品など期末に在庫として残っているものも、その年の経費になりませんので、同じようにしっかりと確認しましょう。
(税理士・中出良)