全国商工新聞 第3343号2019年1月7日付
今回と次回の2回に渡り、事業所得や不動産所得でいう「経費」について説明していきます。今回は「経費」とは何かに加えて「減価償却」について触れたいと思います。
まず、経費とは何かということですが、売上原価、販売費および一般管理費に記載される支出のことをいいます。「収入を得るために必要な支出が経費」と考えれば分かりやすいと思います。反対に、自分の生活に必要な支出(家事関連費)は経費とはなりません。家事関連分と事業用との両者にかかわりのある支出がある場合には、両者をしっかりと区分しておく必要があります。
また、事業用として明確に区分して支出したものであっても、いったん資産に計上して、時間の経過に応じて経費としていくものもあります。例えば機械や事業用の車両の購入や、修繕費であっても価値を増加されるような支出がこれに当たります。前者を設備投資、後者を資本的支出と呼びます。
設備投資と資本的支出は両方とも、減価償却計算を行い経費を計算します。減価償却とは、「固定資産の耐用期間あるいは有効期間にわたり費用配分をする」ことをいいます。所得税ではこの償却費の必要経費算入は任意ではなく、必ず必要経費に算入することと定められています。なお、減価償却の方法は原則「定額法」と定められています。定額法とは、毎年同じ金額を減価償却費として経費に計上する方法です。例えば、100万円で耐用年数10年の減価償却資産を購入した場合は、1年目から9年目までの減価償却費は各年10万円となり、10年目は9万9999円となります(1円は資産が手元にある限りは備忘価格として記録しておきます)。また、取得した年の減価償却計算は、月割計算を行う必要がありますので、例えば上記の資産を7月に取得したとすれば減価償却費は5万円となります。
減価償却の計算では少額の資産取得については、いくつか別の計算ができるものがあります。例えば、少額の減価償却資産(使用可能期間が1年未満あるいは取得価額が10万円以下の資産)があります。このような支出については、事業に供した年の経費としてよいとされています(表(1)(2))。次に、取得価額が20万円未満の資産は、一括償却資産として、3年で均等に償却することができます(表(3))。最後に、青色申告者しか使えませんが、取得価額が30万円未満の減価償却資産について、支出した金額をそのまま経費とすることができる制度があります(表(4))。例えば、19万円の減価償却資産を取得した場合には、(3)(4)を選択適用できます。
次に資本的支出についてですが、税務調査では着眼点になる項目ですので注意してください。
先ほど書きましたが、価値を増加させる支出や資産の使用可能期間を延長させる支出は「新たに資産を取得」したと考えて、いったん資産計上します。これ以外の通常の維持管理や原状回復のための支出は「修繕費」ということになります。例えば、機械が古くなってオーバーホールをしたり、単純に部品を新しく取り換えたときは修繕費として、支払った金額全てを支払った年の費用とします。一方で、オーバーホールに伴い機械の機能を強化したり、あるいは機能を追加した場合には資本的支出となりますから、減価償却費の計算をすることになります。
具体的に修繕費か資本的支出か不明の場合には、60万円未満の支出、おおむね3年周期で行われている修理などについては、修繕費としてよいとされています。
次回は減価償却関連以外の経費について解説します。
(税理士・佐伯和雅)