確定申告のワンポイントアドバイス
(3)所得税の課税標準

全国商工新聞 第3342号2018年12月24日付

税額計算の基礎となる金額を決める

 所得税の課税標準の計算方法は複雑です。「課税標準」とは、簡単にいえば税率を乗ずる金額のことをいいます。この金額は一般的には「所得金額」と呼ばれています。
 所得税は、収入(所得)の性質によって、所得を10種類に区分(図の※1参照)して各々の所得を計算します。次に計算した各所得金額を合算(合計)します。これを「合計所得金額」と呼びます(図参照)。

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 合計所得金額には、分離課税計算をするもの、例えば不動産や株の譲渡、あるいは株式などの配当を受けた所得も含まれます。分離課税で計算するものは、合計所得金額から繰越控除を加味した総所得金額とは「分離」して計算を行うことになります。
 皆さんが申告する所得では、事業所得、不動産所得、給与所得が多いのではないかと思いますので、これらについて簡単に触れてみます。
 事業所得と不動産所得の計算方法は、両者とも総収入金額からその事業を行うために必要な経費を控除した金額となります。
 何が収入となすのかは、比較的分かりやすいと思います。一方で必要経費とはどのような支出をいうのかは少し分かりづらいと思います。必要経費については、この連載の4回目と5回目で詳しく説明します。
 余談ですが、不動産所得も事業所得ではないか、という疑問があるかと思います。不動産所得は1940(昭和15年)に分類所得税が導入された際に、事業所得より高い税率を設定するために、事業所得とあえて分けて設けられた所得区分です。勤労所得(事業や給料)と非勤労所得(不動産や株の配当など)の性格に着目して税率に差を設けました。この区分は非勤労所得に対する税金を重くするという点で合理的です。
 給与所得者の方は、毎月の賃金給料から差し引かれた源泉所得税を年末調整で精算し、納税が完了しているため確定申告は行わないといった方が多数でしょう。ただし、一見楽なように思える源泉徴収制度は、申告納税制度を採用しているわが国では、実質的な申告納税権の剥奪となりますから大きな問題です。
 その一方で、給与所得者であっても、年収2000万円以上の方は年末調整ができませんし、給料を2カ所以上からもらっている人や、医療費控除を受ける人などは確定申告をすることになります。
 また、不動産や株を売った場合には譲渡所得の計算を行う必要があります。これらには先ほど触れた分離課税のものが含まれていますから、先に書いた総所得金額とは分離して税額計算まで行うことになります。
 このように、税金計算の土台となる「所得金額」を計算するだけでもかなり大変です。このような複雑な計算を一人で行うことは、それだけでも気が重くなるでしょう。
 自主計算・自主申告をする場合に同業の先輩や仲間、あるいは取引先などに相談し、いろいろな工夫をしながら確定申告と向き合うことが重要です。

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