全国商工新聞 第3338号11月26日付
年末の税務を、税理士の菅隆徳さんが解説します。今回は年末調整の留意点です。
今年の年末調整では、配偶者控除と配偶者特別控除の取り扱いが変更されました。「所得控除」の圧縮による所得税増税の第1弾です。
年末調整に使用する書類は今まで2枚でしたが、今年(2018年分)から3枚になりました。「扶養控除等申告書」「配偶者控除等申告書」「保険料控除申告書」の3枚です。配偶者控除の計算が複雑になったためです。
(1)控除額38万円を適用できる配偶者の収入金額が150万円(給与収入の場合)まで拡大されました。控除額については、配偶者の収入に応じて減額していきますが、最高201万円(給与収入の場合)まで受けることができます。
(2)配偶者の年収だけではなく、申告書提出者本人の年収も、配偶者控除の判定に必要になりました。
(3)次の場合は配偶者控除・配偶者特別控除を受けられなくなりました。
(1)申告書を提出する本人の年間の給与収入が1220万円を超える人。
(2)本人の給与収入が1220万円以下であっても、配偶者の年間所得が123万円を超える人。*配偶者の所得が123万円を超える人とは、(イ)給与収入の場合で201万円超(ロ)年金収入の場合で65歳未満、214万円超(ハ)年金収入の場合で65歳以上、243万円超。
(4)以上の内容を「配偶者控除等申告書」(図)で計算し、配偶者控除の金額を算出します。配偶者控除・配偶者特別控除を受ける人は全員提出が必要です。
従来通り変わりはありません。
控除対象扶養親族
2011年分の所得税から、年齢16歳未満の扶養親族(年少扶養親族)に対する扶養控除が廃止されています。年齢16歳未満は2003年1月2日以後生まれた人です。
給与の支払いを受ける人は毎年、扶養親族などを記入して、この申告書を給与支払者に提出することになっています。これは扶養のない人(独身者など)やパート・アルバイトの人や外国人も同様です。税務調査の現場では、申告書の出ていない人の源泉徴収税額について、「申告書が出ていない人については甲欄の計算は認められません」といって、乙欄(2カ所、所得の人の欄)を適用して、多額の税金を徴収する問題が起きています。年末調整の際には、従業員からは「扶養控除等申告書」を必ず出してもらい、保管するようにしましょう。
2015年10月からマイナンバー法が施行されました。2016年分以降の税務手続きにマイナンバーの記載が義務化されました。従業員の提出する「平成30年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」にも、本人・配偶者・扶養親族の個人番号欄があります。
しかし、万が一の情報漏えいや、それによる犯罪といった不安が完全には取り除かれていない状況です。漏えいも増えています。「マイナンバーはプライバシーの侵害の恐れがある」として、マイナンバーを記入しない従業員がいても、番号記入を強制することはできません。全商連も加盟する全国中小業者団体連絡会との交渉で、国税庁は次のように回答しています。
「確定申告書などに番号未記載でも受理し、罰則・不利益はない」
「事業者が従業員などの番号を扱わないことに対して国税上の罰則や不利益はない」
法人の役員給与については、06年度改正で「定期同額給与」が導入されています。期首から3カ月経過後の役員給与の増減については、「著しい経営の悪化」や「臨時改定事由」などを除き、法人税の申告時に損金不算入とされる恐れがあります。役員給与月額の推移について、しっかりチェックしましょう。