全国商工新聞 第3361号2019年5月20日付
「やむを得ない事情」で税金を滞納してしまった場合、納税緩和制度を活用し、税務署や地方自治体と交渉していきましょう。
交渉に向かう前に、準備が必要です。(1)滞納税金だけでなく、負債等の返済の金額も明らかにしておく。(2)当座の必要資金を明らかにし、すぐに納税等に充てることができる金額を計算する(現在の納付可能資金の算定根拠の作成)。(3)毎月の収支状況を明らかにし、今後毎月いくら納付できるのか算定する(見込み納付可能資金の算定根拠の作成)。(4)向こう1年程度の発生税金等(国税、地方税、国保、年金等)を一覧にする。(5)以上を踏まえて、どこの行政機関にどれだけ払えるのか、分納計画を立てる。
以上が交渉にあたっての諸準備です。「納税の猶予等の取扱要領」第1章で、「分納の申し出があった場合には、納税者の立場に立って実情をよく聴取し、誠意が認められる場合には換価の猶予を検討する」と記載されていることから、分納計画を申し出る際には、原則として換価の猶予を求めましょう。もちろん、これだけではありませんが、これらの準備をしておくと、質問にも答えられ、スムーズに進む可能性が高くなります。
最近の差し押さえケースは、特に地方税で多いのですが、分納計画を約束したものの守られていない場合がほとんどです。したがって、最初の分納計画で無理のない金額を設定することが大切です。
「月3万円では話にならない。最低でも10万円は納めてください。それができなければ差し押さえします」と根拠のない分納計画を強要する事例が後を絶ちません。対応事例を二つ、表にしました。このように、法律だけでなく、基本通達なども活用しながら交渉を進めていく必要があります。
国保・年金を含む地方税の強権的徴収に対抗するには、粘り強い交渉が必要です。4月10日に日本共産党の宮本徹衆院議員が国会で、国保の滞納処分として国の教育ローン56万円が振り込まれた預金口座を京都地方税機構が全額差し押さえた問題について質問しました。国税庁は、「授業料に充てられることが事前にわかっていれば差し押さえはしない」と答弁しましたが、総務省は最後まで、差し押さえをしないと言いませんでした。
この態度を改めさせるためには、国民のたたかいが必要です。納税者・滞納者の権利、滞納処分に関する法律や規定を学び、仲間と力を合わせて交渉していきましょう。(おわり)