全国商工新聞 3351号2019年3月4日付
本紙1面(1月28日号)に「1700万円の納税義務が消滅へ」(東京・杉並民商)が掲載されました。事業を継続しながらの、滞納処分の執行停止は画期的な成果です。
当該会員は23年もの間、滞納税金を毎月誠実に払い続けてきました。会員が民商の仲間と共に、税理士とも相談し、これ以上支払いを続ければ事業の存続を危うくするとして、納税義務を消滅させる滞納処分の執行停止(国税徴収法153条)を国税当局に認めさせたということです。
滞納処分の執行停止は税務署長の職権に基づいて行われますが、税務署長の裁量に委ねられたものではありません。同法153条1項柱書で「することができる」とあるのは、同条1項各号の要件を充足していれば、必ず滞納処分の停止をしなければならないという意味なのです。
本件は10年以上前に執行停止の要件を充足しており、本来税務当局の判断で滞納処分の執行停止を行うべきでした。一層の運用改善を切望しつつ、「ついにここまできたか」と運動の前進に感慨深いものがあります。
忘れもしない2004年9月。北海道・札幌市内4民商の合同税金学習会で、役員の一人から「消費税を滞納している。どうすればよいのだろうか」との質問がありました。
私は「滞納処分の執行停止」の活用を提案しました。その後、神奈川、埼玉、福島、東京でも多くの人が滞納で苦しんでいることが分かりました。負担能力を無視した消費税の導入から5年が過ぎていました。
早速、本紙編集局と相談。2004年11月29日号1面で「滞納処分を取り消させる方法」の大見出し記事を掲載。「国税徴収法153条を活用」「生存権に基づく納税者の権利」「執行停止は税務署長の義務」を紹介しました。こうして国民の権利として違法な徴収とのたたかいが各地で行われ、成果が生まれるようになりました。
運動を先駆的に取り上げ、滞納者を励まし続けた商工新聞の役割は特筆に価します。その結果として、申請型「換価の猶予」が2015年4月から実施され、納税緩和制度の活用が飛躍的に広がりました。
消費税、住民税の所得割の一律10%課税、国民健康保険(国保)税(料)、国民年金保険料などは憲法の応能負担原則に違反しています。滞納は必然的に生まれます。滞納者は税制の被害者なのです。
消費税をはじめとする応能原則に反する税は、勤労国民の生活破壊に通じる問題です。
滞納問題を解決する運動は、応能原則に反する税制の出現に対応し、発展してきた創造的な実践なのです。