全国商工新聞 第3346号2019年1月28日付
消費税増税中止、公正で公平な税制の確立などに向けて、学習・交流した税研集会
「いのちとくらしを守る税研集会」が12、13の両日、都内で開催され、約250人が参加しました。消費税増税中止、公正で公平な税制・税の応能負担原則・納税者権利憲章の確立に向け、二つの講演、四つの分科会で学習・交流しました。集会実行委員会には、全国商工団体連合会(全商連)、全国労働組合総連合(全労連)、全日本年金者組合、東京土建など21団体が参加しました。
伊藤周平・鹿児島大学教授が「消費税と社会保障」と題して講演し、安倍政権の下で、社会保障の自然増分が抑えられ、6年間で1.6兆円削減されたことを告発。増え続ける社会保障費を賄う財源は消費税しかないという宣伝が繰り返され、「国民が『社会保障財源∥消費税』という呪縛にとらわれている」ことや、財源として大きな比重を占める社会保険料が、低所得者ほど負担が重くなる逆進性が強いことを指摘しました。消費税が法人税減税の穴埋めに使われたことや、中小業者が消費税分を価格に転嫁できず、自腹を切って納税している一方で、大企業が輸出還付金により大きな恩恵を得るなど、貧困と格差を拡大させる究極の不公平税制であることを解説。不公平な税制をただす会が試算した、所得税や法人税の累進性強化による財源確保や、保険料の応益負担部分の廃止、年金積立金の活用などの社会保険改革の方向を示し、消費税増税の中止と5%への引き下げ、社会保障の充実案とそのための財源を提示。「統一地方選挙、参議院選挙、その後の次期衆議院選挙の争点にしていこう」と訴えました。
岡田俊明税理士が7年連続で過去最大を更新し、100兆円の大台を突破した2019年度予算案と税制改正大綱について報告。新「防衛計画の大綱」と中期防衛力整備計画では、2023年までの5年間で27兆円の予算が組まれていることや、消費税増税の反動減対策の問題点を指摘しました。
全体討論では、「イージスアショアは、命中精度を上げる目的で、当初予算以上の金額になった。購入だけでなく、維持・整備費にも注意を向ける必要がある」「インボイスでは、『取引排除』よりも『課税業者への強要』が進むのではないか」「消費税の損税を診療報酬の引き上げで賄うとしているが、医療機関の存続、患者負担の増加の問題が残る」など、問題点や今後の運動方向についての意見が出されました。
講演に耳を傾ける参加者
2日目は、四つの分科会に分かれて学習交流。第1分科会「税務調査と納税者の権利」では、本川國雄税理士が、国税通則法の「改正」により法制化された調査手続きの内容や税務調査の対応などを解説。TCフォーラム(納税者権利憲章をつくる会)の提案する納税者権利憲章(案)が紹介されました。
第2分科会「サラリーマン・年金受給者の税における権利、ゆがんだ税制をただそう」では、斎藤寛生・全労連賃金・公契約運動局長が源泉徴収制度による給与所得者の税への無関心の助長を指摘。増子啓三・全日本年金者組合中央執行委員が、年金過少支給問題について、省庁交渉などを重ね、申告書を改善させたことなどを紹介しました。
第3分科会「社会保障財源と税制」では、菅隆徳税理士が、税制の応能負担の原則が破壊されている実態と消費税が社会保障財源にふさわしくないことを指摘。山口一秀・中央社会保障推進協議会事務局長が、社会保障をめぐる政策動向、骨太方針などに示される社会保障全体の改悪、社会保障費の削減について説明しました。
第4分科会「滞納処分と納税者の権利」では、仲道宗弘・滞納処分対策全国会議事務局長が滞納処分の強化について「滞納に陥った住民の生活再建を図りながら納税できるようにするという、地方自治体の役割を投げ捨てている」と厳しく批判。各地で差し押さえ解除や滞納処分の執行停止を勝ち取った成果を報告し合い、滞納処分に対する適正徴収手続規定や、生存権・財産権を尊重した徴収権行使の限界を明確にするとともに、納税者の権利憲章制定が求められていることを確認しました。