全国商工新聞 第3332号10月15日付
「社会保険料を払い切れず滞納してしまった」「売掛金の差し押さえなど、厳しい処分に苦しんでいる」-。こうした声を届けようと、岐阜北民主商工会(民商)は9月28日、岐阜北年金事務所と懇談しました。
岐阜北民商と岐阜北年金事務所の懇談で発言する本村伸子衆院議員
冒頭、岐阜北民商の伊藤次雄会長が要請書を提出。「売掛金差し押さえありき」といった徴収姿勢を改めること▽一方的に“悪者”と決めつけて暴言を吐くのではなく実情をよく聞くこと▽納付緩和制度や救済措置を積極活用すること▽今後も懇談を継続すること-などを求めました。
岐阜北年金事務所との懇談で要請書を手渡す岐阜北民商の伊藤次雄会長(正面中央)
木野村要所長は、滞納整理にあたって「滞納者の事業継続に配慮して対応していく」と明言。「個別事情の把握に努めたい」と述べました。さらに、一部職員の暴言については「誤解を与える対応だった」として、再発防止に向けた指導を約束しました。
出席した会員からは、切実な訴えが相次ぎました。
「分納を続け、あと2年で滞納が一掃できるはずだった。しかし今年2月、徴収担当の年金事務所が岐阜南から岐阜北に突然移管され、一方的に納付期限と金額が提示された。『応じなければ売掛金を差し押さえる』と圧力がかかった。個別の事案にしっかり向き合ってほしい」(田中良治さん=仮名、金属加工)
「納めるのは義務だと思い、何とか分納してきた。ただ、去年から商売が厳しくなっている。年金事務所からは『次の段階(差し押さえ)に入らざるを得ない』と言われたが、何とか緩和措置をお願いしたい」(西田一郎さん=仮名、請負)
民商側は「民商に相談しにきた業者には、滞納を減らした人はいても増やした人はいない。事業継続に配慮して対応すべきだ」と強調。
所長も「われわれも会社をつぶすつもりはなく、適正な納付に戻してほしいと思っている」と応じました。
岐阜北年金事務所の強引な対応をめぐっては、全国中小業者団体連絡会(全中連)の交渉(9月21日)で、厚労省と年金機構が「一部行き過ぎがあった。実態を調査し指導した。申し訳なかった」と謝罪。これを受け、今回の懇談で所長は「そういう受け止め方をされてしまったことに対しては申し訳なく思っている」と陳謝し、「職員を指導していく」と表明しました。
最後に民商側から、「今後も必要な機会に話し合いを持ってほしい」との要望を改めて伝えました。
懇談は、日本共産党の本村伸子衆院議員(東海ブロック選出)を通じて厚生労働省と日本年金機構に申し入れ、初めて実現したもの。本村議員も同席し、社会保険料の滞納で苦しむ会員ら10人が参加しました。岐阜北年金事務所管内では昨年4月以降、「徴収方針が変わった」などとして、滞納金を分納してきた業者に対する差し押さえ処分や「一括納付」強要事例が頻発。滞納事業者から岐阜北民商に相談が多数寄せられていました。