全国商工新聞 第3369号2019年7月15日付
ジャーナリスト 斎藤 貴男さん
きわめて重大な選挙である。争点にならなければならないテーマはいくらでもあるが、ここでは消費税と沖縄、何よりも憲法の問題を取り上げたい。
消費税とは社会的弱者のわずかな富をまとめて富裕層や巨大資本に移転するための税制だ。あらゆる商取引において、常に弱い立場の側がより多くを負担させられてしまう。これ以上の増税は、イコール中小・小規模事業者の撲滅と、国民生活の破壊を意味することになる。
“社会保障の充実”や“安定化”の財源だ、という政府のアナウンスなど、詐術以外の何物でもありはしない。それは、この間に施行された社会保障制度改革推進法や社会制度改革プログラム法が「自助」--自己責任ばかりを謳い、政府の責務を極端に矮小化している事実だけでも明白だったが、最近の「老後2000万円問題」の実態と顛末によっても、私たちはつくづく思い知らされたはずである。
沖縄の基地問題は、日本国民がどこまで人でなしであり続けるのかどうか、というリトマス試験紙だ。辺野古に米海兵隊の新基地が完成し、稼働を始めれば、あの美しい琉球は、従来にも増して、米国の戦争とともにある島々にされていく。
一朝一夕に、解決できる話であるはずもない。それでも、機会のあるたびに明確な意思表示を重ねていくことができなければ、私たちは魂を持った人間としての資格を失う。
そして、あらゆる争点を包み込みかねない、喫緊の重要課題として憲法改正の問題がある。安倍晋三政権あるいは自民党の思惑通りにされたら最後、この国は再びファシズムに陥り、絶えず米国の戦争に付き従う戦時体制が完成されるだろう。
安倍首相は2020年中の新憲法施行を公言している。今回の参院選で態勢が整えば、あとは一気呵成に事が運ばれるに違いない。
人間が人間であるためには、どうしても負けられない選挙なのである。