全国商工新聞 第3347号2019年2月4日付
安倍政権発足から7年連続で、当初予算での国債発行額を減らしていることを理由に政府は「財政健全化と両立」する予算と主張しますが、補正予算で国債発行を除外するなどごまかしがあります。
また、歳入の面でも、経済成長率は名目で2.4%と、民間予想より高めに設定し、税収の増額を見込み、預金保険機構から利益剰余金8000億円など税外収入の繰り入れなど、「裏技」的操作も行われています。
そういう操作をしながらも公債依存度は32.2%。歳出全体の4分の1は、借金の返済に充てる国債費が占めます。19年度末の長期債務残高は1100兆円を超えるなど財政の行き詰まりはいよいよ深刻です。価格変動リスクのある国債や株式を、日銀のように大量に保有する中央銀行は世界にありません。円の信用失墜も懸念されています。政権維持のための財政規律も失いバラマキを続ける安倍政権を終わらせる以外に、「出口」はないと言っても過言ではありません。
しかも、アベノミクスの6年で、「格差と貧困」は拡大し続けています。本来、税や社会保障などによる財政支出は所得の再分配機能を担いますが、日本は極めて不十分です。所得再分配前後のジニ係数(注)の改善度による国際比較では、OECD加盟国の中で最低レベルにあります(「厚生労働白書」平成24年)。
その要因は、第一に、最悪の大衆課税である消費税が導入される一方、応能負担原則に反する富裕層などへの減税が行われてきたこと。第二に、社会保障のためと導入された消費税が、結局法人税の減税財源とされたこと。第三に社会保障の切り捨てが進められてきたためです。社会保障は、国民の「自助」を基本に、「共助」の枠組みを強化し、国が責任を持つ「公助」は‘救貧対策’に限定化しようとしています。また、給付と負担は「公平」であるべきだとして、「負担に見合う給付」=社会保険の原理が持ち込まれました。
(注)ジニ係数は不平等さを表す指標(図)。係数の範囲は0から1で、係数の値が0に近いほど格差が少ない状態で、1に近いほど格差が大きい状態であることを意味します。
税と社会保障による所得再分配機能に、応能負担原則は不可欠です。この観点から、生活費控除原則を徹底した課税最低限の設定や、資産所得課税の減税措置等の見直しなど、担税力に応じた税制の再構築を行うことが求められます。全商連はこの見地から「納税者の権利宣言」(5次案)を公表しています。
財界・大企業、アメリカの要求でバラマキを拡大する一方、国民の暮らし向け予算を切り捨てるのは本末転倒です。消費税の増税や大軍拡、中小企業や社会保障予算のカットは中止し、歳入と歳出両面を見直して、所得の再分配としての財政の機能を取り戻す必要があります。
大企業・大資産家に応分の負担を求め、暮らし最優先の予算への組み換えが求められます。