全国商工新聞 第3346号2019年1月28日付
「101兆円予算 不安が募る『過去最大』」(朝日)、「膨張101兆円 景気優先 かすむ財政規律」(日経)、「初の100兆円 借金漬けでも野放図とは」(毎日)など、初めて100兆円の大台を突破した2019年度予算案について、各紙は報じました(12月22日)。消費税増税を前提に、効果が疑問視される経済対策の大判振る舞い。大軍拡の一方、社会保障費は削減する、欺瞞と粉飾の亡国の予算案について解説します(2回掲載)。
2019年度予算編成で最大の焦点になったのは、10月に予定される「消費税税率引き上げへの対策」。消費増税前の駆け込み需要とその反動減をならすために、総額2兆円を超す対策が盛り込まれました。
対策の柱は、買い物客のキャッシュレス決済を促すために、中小店舗などでカード決済した人に最大5%のポイントを還元。さらに低所得者や子育て世代向けのプレミアム商品券、すまい給付金、次世代住宅ポイント制度、防災・減災、国土強靭化等で総額2兆280億円を計上しました。増収分の約1兆3000億円を上回ります。
「ポイント還元」は、混乱と不公平を招くことが必至で、「天下の愚策」と批判が集中しています。「複数税率」とセットとなることによって、買う商品が食料品か非食料品か、買う店が大手スーパーか中小小売店かコンビニか、買い方が現金かカードか-この三つの要素の組み合わせによって、税率が3%、5%、6%、8%、10%と5区分となります。
あまりの複雑さに、増税をやむなしとする日本チェーンストア協会など流通3団体は、ポイント還元に「混乱が生じる」と撤回を求める要望書を提出しています。日本商工会議所も「評価する声は聞かない」と述べます。
世論調査では、ポイント還元やプレミアム付き商品券の導入には「反対」が過半数を占めます(「毎日」17日付など)。
増税に伴う景気刺激策の一環として、1兆3475億円が計上されている国土強靭化向け予算も問題は少なくありません。3年間の事業規模はおおむね7兆円程度と巨額です。災害・減災は喫緊の課題とはいえ、何をどう整備するのかが問われます。
例えば、老朽化が進む水道施設の耐震整備等に対する支援なども含まれていますが、政府の方針は上下水道事業の広域化と「多様なPPP/PFIの導入を促進」することであり、「成長力を高める生産性向上のためのインフラ整備への重点化」を求めていますので、循環型経済の観点から、果たして地域に仕事と雇用を生むのか問題です。
また、相変わらず大型公共事業の増額も目立ちます。総事業費が膨れ上がっている整備新幹線は37億円増の792億円です。道路ネットワークに3731億円(209億円増)を計上。住民の反対を押し切って進められている東京外かく環状道路など、大都市圏環状道路も含まれています。「首都圏空港等の機能強化」は157億円(5億円増)、「国際コンテナ戦略港湾の機能拡充の加速」は790億円(24億円増)と巨額です。
さらに、軍事費が5兆2574億円と、またも史上最高を更新しました。新しい「防衛計画の大綱(新大綱)」と19年度からの5年間で27兆円余に上る「中期防衛力整備計画(中期防)」に基づき、「いずも」型護衛艦の空母化やアメリカからのステルス戦闘機・F35の100機購入など「爆買い」を進めようとしています。
一方、社会保障は、厚生労働省が概算要求で求めた18年度比6000億円分の自然増を認めず、約4800億円増へと圧縮。低所得者向けの後期高齢者医療の保険料軽減措置の廃止などが盛られています。
中小企業対策費はマイナス31億円の1740億円で、歳出に占める割合はわずか0.2%です。「ものづくり補助金」に50億円、小規模事業者の販路開拓を支援するために自治体が独自に実施する「持続化補助金」として10億円を当初予算として初めて盛り込みましたが、両方合わせてもF35の1機分にも及びません。18年度の補正予算のものづくり補助金は1100億円でしたので、補正での上積みがなければ大幅減です。
経産省は信用保証制度を運営する日本政策金融公庫への出資金を減らしたためと弁明しますが、「稼ぐ力」のある地域の中核企業を支援する「地域未来投資促進事業」に158.6億円の計上や消費税転嫁状況対策32.5億円を含めるなど、そもそも中小企業対策とは言えないものも含まれるなど、実質減は明らかです。
(つづく)