全域停電で被害3億円
北海道連1000人調査

全国商工新聞 第3342号2018年12月24日付

「休業で売上減」68%も 実態示し道に支援迫る

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被害実態アンケートの結果を示して北海道と交渉する北海道連の役員ら

 震度7の激震に襲われ、ブラックアウト=「全域停電」に追い込まれた北海道胆振東部地震(9月6日)から3カ月余。「ブラックアウトは人災」との指摘もある中で、北海道商工団体連合会(北海道連)は、「被害実態アンケート」を呼び掛け、わずか1カ月で1067人から回収。寄せられた声をもとに北海道と交渉するなど、その運動は民商にも大きな変化をもたらしています

 実態アンケートに取り組むきっかけは、地震から10日後に開催された緊急理事会でした。
 「地震、ブラックアウトですべての業種、業者に被害が広がっている」。この議論を受けて対策本部を立ち上げ、正確な実態把握のため「1000人アンケート」の実施を確認。期間は1カ月と決めました。
 「1000人からアンケートを集めること自体、大きな挑戦でした」と井上元美・北海道連事務局長。各民主商工会(民商)では電話や訪問による聞き取り、留守宅にもアンケート用紙を入れ、回収時間を決めて再度訪問したことも。
 9月17日にスタートしたものの、10月2日までに集まったのは200余り。改めて議論になったのが「何が被害なのか」でした。浮かび上がったのが「ブラックアウトで、仕事ができなかったことが被害そのもの」という気づきでした。
 役員、事務局はもちろん、婦人部、青年部、共済会とも協力し、訪問や電話も使って「数を集めること自体」に力を入れ、全道的な集約も1日3度実施。道内の各民商も被害実態を伝えるとともに、「民商ニュース」で集約を呼び掛け、10月25日には、1067件に達しました。

予想を上回る被害額に驚き

 「集約した被害総額は予想を上回るものだった」と驚いたのは、北海道連の井上事務局長です。
 会員数の6分の1にあたる1000人余で3億200万円。最も被害が大きかったのは「休業による売上減」。約2億700万円で68%と断トツ。以下、「建物・設備の損壊」16%、「物流の乱れ」7%と続き、業種別件数では、飲食438件、建設246件などとなっています。
 「私も最初は休業が被害と思っていなかった」と話すのは、江別市内で焼き肉店を経営するIさん。「電気のストップでダメになる冷凍・冷蔵の肉の10万円だけだと思っていたけれど、民商の調査を通じ、予約していたお客の2日分の売り上げ10万円も被害だったことに気づかされた」と振り返ります。
 アンケートで寄せられた声も深刻なものでした。
 「停電によりカニを廃棄。卸先のホテルの予約キャンセルによる影響も」(活カニ卸、被害額400万円)、「停電によりスタッフが出勤できず売り上げ減少」(スナック、同30万円)、「地元で出棺できず、苫小牧市まで運んだ」(葬儀屋、同10万円)、「売り上げが半減。10年間営業しているが初めて赤字になった」(居酒屋、70万円)、「搾乳した牛乳を廃棄せざるを得なかった」(酪農、60万円)…。

産業の衰退で人口減の不安

 震度6強を記録したむかわ町で洋菓子店を経営するOさんの店舗兼自宅は、地盤が20センチも沈下、建物の壁にも多くの亀裂が走りました。
 「重たい電気釜もずれました。停電で生クリームは溶け、被害額は50万円以上。もっと不安なのは、町の人口がまた減ってしまうことです」と話しました。
 ブラックアウトの影響は、直接の被害だけでなく、地域経済の疲弊による将来不安を広げています。
 北海道連は1000人のアンケートをもとに(1)被害実態の調査(2)被災した中小商工業者への具体的な経済支援(3)ブラックアウトの原因究明と、一極集中でない再生エネルギーを活用した分散型エネルギーへの転換-などを求め、道庁などと交渉を重ねました。
 11月2日の交渉で道庁は「分散型エネルギーを」との要望に「担当課が違うためこの場では回答できない」し、北海道電力(北電)の責任についても「今回の停電が北電の過失だとは、現時点では道としては見解を示していない」と無責任な回答に終始しています。
 対策本部長は言います。
 「集まったアンケートだけでも3億円余の被害。これだけの被害が出たのは、泊原発再稼働を最優先し、一極集中型の発電体制に固執したことが原因だ。その責任を追及しないばかりか、地域経済を支える小規模事業者に対する支援も脆弱だ。引き続き、『アンケート結果』をもとに業者の要望を実現させていきたい」

再生エネで分散供給を

北海道のエネルギー問題を取材する「ほっかい新報」佐々木忠編集委員の話

 今回のブラックアウトについて、国、北電、道も、技術的側面だけで“検証”しているが、大切なのは電源集中立地やリスク対策も含めた全体像の検証、原因と責任の究明だ。
 一つは電源を、国策によって、大規模な苫東厚真の火力発電に過度に集中させたこと、二つめに過度の集中に伴うリスク管理対策の欠如があった。03年の十勝沖地震で厚真町は震度5強の揺れでボイラーなどが損傷・停止したにもかかわらず、事後対策も取られなかった。三つめに、泊原発の再稼働を最優先し、巨額の資金を投入する一方、再生可能エネルギーの参入を事実上制限するなど、原発第一主義・一極集中に固執してきたことにある。今求められているのは、集中型から分散型エネルギーへの転換だ。

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