全国商工新聞 第3335号11月5日付
大阪北部地震、北海道胆振東部地震、西日本豪雨災害、台風21号など大災害が相次ぐ中で、被災者支援、復旧・復興への公的支援の抜本的強化が急務です。被災者生活再建支援法では、全壊世帯などに最大300万円が支給されますが、圧倒的多数を占める一部損壊は対象外で、生活再建の足かせとなっています。京都府では支援法を拡充する独自の「地域再建被災者住宅等支援制度」を創設し、「一部損壊」も支援の対象に。被災自治体では「国として京都並みの水準へ支援法改善を」の声が高まっています。
京都府商工団体連合会(京商連)は、2013年9月の台風18号被害、2014年8月の福知山市水害など受け、被災者への公的支援拡充を求め府知事への要請を繰り返してきました。こうした中、府は2014年11月14日、「地域再建被災者住宅等支援制度」を創設し、その後6回の災害に適用しています。
同制度では、生活再建支援法の支援金が上積みされ、全壊で合計450万円となるほか、支援法が適用されない地域も支援対象としています。「一部損壊・床上浸水」も補助し、一部損壊等で50万円が支援されます。さらに、「住宅再建に関連して必要な、家具家電の購入・ハウスクリーニング等の経費」も対象にするなどの改善も図っています。
銭湯の倒れた煙突
また、「中小企業の再建への支援」として設備・備品の更新・修繕に対する補助金も創設されています。「中小企業等復興支援事業費補助金」(平成30年7月豪雨)は「大規模な設備の更新等」に補助率15%(上限100万円下限10万円)、「小規模な機器の修繕等」に補助率2分の1以内(上限10万円)などです(恒久制度ではなく、災害の度に措置)。
熊本県は一部損壊でも修理に100万円以上かかった世帯に対し、義援金から10万円を配布する仕組みを作っています。
北海道むかわ町でも、「半壊まはた大規模半壊」の住宅に対し、1戸当たり58万4000円の支援を決めました。
また、大阪北部地震では、大阪府内の民主商工会(民商)の要請などで、府内自治体が一部損壊も対象にした支援を創設しました(吹田市上限5万円、高槻市同5万円、枚方市同10万円、茨木市同10万円、箕面市同5万円など)。しかし、補修や修繕を後押しする十分な支援になっていません。また、店舗や工場の被災は対象になっていません。
北部地震と台風21号のダブル被害を受けた公衆浴場経営者は、「先行きを考えると不安で夜も眠れない」と再建の見通しも立たず、体調を悪化させています。大商連副会長の原田孝夫さんは、「被災を契機に廃業・退会した会員もいる。大阪府交渉を予定しているが、他府県並みの支援拡充を求めたい」と話します。
一部損壊が公的支援の枠組みから漏れる問題をめぐって、民商・全商連は「一部損壊にも支援の対象を拡大し、500万円に引き上げること。住宅・店舗一体も対象にすること」(2015年10月28日内閣府交渉)など支援法の改正・拡充を求めています。
野党6党は、今年3月、支援法支給額を最高500万円に引き上げ、支援対象の拡充を求める支援法改正案を衆院に共同提出しましたが、継続審議とされ、成立のめどは立っていません。