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  トップページ > 税金のページ > 消費税 > 全国商工新聞 第3019号 4月16日付
 
税金 消費税
 

消費増税法案 世論広げ廃案へ全力!

 野田内閣は「社会保障と税の一体改革大綱」に基づいて3月30日、消費税増税関連法案を閣議決定し国会に上程しました。消費税収を年金、医療、介護、少子化対策の経費に充てるとしていますが、増税されても社会保障充実には1%分しか使われないことは政府も認めています。しかも、充実どころか「効率化」の名の下に給付削減のオンパレードです。法案の問題点を解説します。

社会保障充実しない
財源は税金の無駄遣い改め

図1 一体改革の消費税の使い道

 法案では社会保障の安定財源確保のため消費税を「年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策の経費」に充てる“目的税”にすることを明記しています。
 しかし、消費税5%増税のうち、社会保障の改善に使われるのは実質1%のみです(図1)。そのほかの4%は高齢化に伴う自然増、基礎年金財源の不足分向けに発行する交付国債償還などに充てられます。小泉内閣以降、「構造改革」の名の下に、年間2200億円の社会保障費が削減されてきました。今後も「一体改革」によりさらに削る方向で議論を進めています。
 2015年度に必要な社会保障にかかる公費は47・4兆円(政府試算)であり、仮に消費税を10%に上げて25兆円の税収を見込んだとしても到底足りません。全額を消費税で賄うとすればさらなる大増税を招くことになり、社会保障制度の充実など望むべくもありません。
 消費税は、社会保障制度を最も必要としている低所得者にも負担がかかり、財源としてふさわしくありません。
 財源は、不要不急の大型公共工事の中止や1機90億円もするF35戦闘機など軍事費の圧縮など税金の無駄遣いを改めることや、大企業・大資産家への応分の負担を求めることで生み出すべきです。

転嫁問題対策は無策
自腹切る業者の声に応えよ

図2 消費税を販売価格に転嫁できているか

 法案では、転嫁対策として「消費税の価格転嫁及び価格表示等に関しての指針」を策定するなど5項目を挙げ、価格表示については「実態をふまえつつ、さまざまな角度から検討する」となっていますが、消費税導入から23年間、大企業からは値引きを強要され、自腹を切って払わされてきた中小業者の声に応えられるものでないことは明らかです。
 税務署に消費税の納税をするのは、大企業、中小企業も含めた事業者です。消費税法では商品やサービスの価格に、消費税を上乗せして転嫁することを予定しているに過ぎず、売り値には消費税が含まれていることになります。「消費税は預り金」だといわれますが、「預り金」でも「預り金的」でもないことは、国税庁も「預り金とは根底が違う」と認めています。
 全国商店街振興組合連合会など、中小企業4団体が昨年行った「中小企業における消費税の転嫁にかかる実態調査」では、消費税が引き上げられたら、売り上げ1億円を超える企業でも50%が、1000万円から1500万円の売り上げ規模の企業では71%が転嫁できないと答えています(図2)。
 デフレが続き商品価格が下がり、激しい価格競争の下では、値上げなどができないのが現状です。
 今でも、全税目の半分以上の滞納は消費税によるもので、年々その比率が上がっているのです。中小企業の約7割は赤字決算ですが、それでも容赦なく重くのしかかるのが消費税です。10%になったら「商売は続けられない」の声は緊急切実です。

増税でも税収増えぬ
消費増やしてこそ経済成長

図3 1997年消費税増税の影響

 野田内閣は、消費税を上げれば、税収も増えて社会保障の財源も生まれ、財政再建も可能だといっています。しかし、景気は悪化し全体の税収が増えない可能性が高いことも指摘されています。
 消費税は導入から8年後の97年4月に税率3%から5%に引き上げられました。このときの消費税収は、96年度の6兆円から97年度9.3兆円に増えました。ところが98年から国の税収総額は前年度の53・9兆円から49.4兆円と激減しています。
 このときは、医療費の自己負担割合も増えるなど、国民に約9兆円もの負担が増え、大きな影響が出ました。図3が示すとおり、実質経済成長率はマイナスに、失業者数は230万人から279万人に激増しました。この年から自殺者が3万人を下回ることはありません。消費が冷え込み、景気が悪化した大きな原因は、消費税増税です。14年4月からの税率8%、15年10月からの税率10%への引き上げで予想される国民への負担増は13兆円であり、景気のさらなる悪化が懸念されるのは当然です。
 法案では経済条項を入れ「経済状況の好転を条件とし、名目3%程度、実質2%程度の経済成長率をめざした総合的な施策を実施。経済状況などを総合的に勘案した上で、増税の停止を含め所要の措置を講ずる」としていますが、97年の増税時にも、「条件付で5%」にすることを法律で規定し、今回の法案と同じことを言って、結局5%への引き上げを行ったのです。
 景気を底から冷え込ます消費税の増税では、社会保障の充実も、財政再建もできません。

大企業には優遇税制
特別扱いやめ応能の負担で

図4 所得税の税率の推移(イメージ図)

 増税法案には、所得の「税体系全体の再分配機能を回復」と書かれています。しかし、所得税の最高税率を5%引き上げ、45%にして得られる増収は1600億円に過ぎません。相続税の基礎控除引き下げと税率見直しなども行われますが、消費税5%による負担増13兆円に比べれば、まさにスズメの涙です。
 所得税の最高税率は1974(昭和49)年の75%(住民税と合わせて93%)から段階的に引き下げられ、現在は40%(同50%)です(図4)。ところが、高額所得者の多くは金融取引によって所得を得ています。分離課税と証券優遇税制によって、所得100億円を超える層の負担率は14.2%と所得1500万円超の層(15.1%)とほぼ同率しか負担していません。
 法人税率は1981(昭和56)年の42%から下がり続け、4月からは25.5%(法人地方税などを合わせた実効税率は約35%)です。
 日本経団連などは法人実効税率のさらなる引き下げを求めています。しかし、実際の負担率は研究開発減税や租税特別措置などにより、経団連会長の米倉弘昌氏が会長を務める住友化学は17.2%、ソニーのは13.3%など大幅な減税がすでに行われています。大企業の内部留保(ため込み金)は266兆円にも達しており、負担能力は十分です。
 税金は能力に応じて負担する(応能負担)に基づいて賦課されるのが原則です。所得の多い大企業や大資産家を高税率にし、税収を社会保障制度によって低所得者に分配するのが「再分配」です。この機能回復を図るためには最高税率の大幅引き上げを行うべきです。

国民本位の社会保障制度に
4月から値上げラッシュ/年金や手当ては削減

表1 4月からの負担増・給付減

 4月以降、社会保障の各分野で負担増が目白押しになっています(表1)。家計を温めることが求められているときに、野田政権は、消費税増税を強行しようとしています。
 75歳以上の高齢者が加入する後期高齢者医療制度では、12〜13年度の1人当たりの平均保険料(全国平均)は、10〜11年度と比べ312円高い5561円となります。
 現役世代では、中小企業の従業員が加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)の保険料率が、全国平均で0.5%増の10.0%(労使折半)と、初の二桁となります。
 年金額は物価下落に合わせるとして4月分(6月支給)から0.3%下げられます。物価下落といっても、消費者物価指数に反映されていない社会保険料は上がり続けており、高齢者の家計は厳しくなっています。新年度も、65歳以上の介護保険料は平均で1人月1000円近く上がる見込みです。
 国民健康保険料(税)は東京23区をはじめ各地で上がります。
 子育て世代には「児童手当」に名称が変更されただけでなく、所得制限が設けられ、しかも6月から住民税の年少扶養控除の廃止で子ども1人につき月2750円ほどが増税になります。
 また、原発事故への対応も不十分なままの東電などは「液化天然ガスなどの価格上昇」を理由に4月から企業向け電気料金の平均17%の大幅な料金値上げを通告してきました。「一方的な通告だけで値上げするなんておかしい」と批判の声が上がっています。
 これに加えて野田政権が狙うのが「一体改革」による消費税の10%への増税と、さらなる社会保障切り捨てです。今国会に提出されている国民年金改悪案が通れば、10月分(12月支給)から年金がさらに0.9%削減されます。
 こんな社会保障切り捨て、消費税増税は許すことはできません。

財政赤字の原因ではない/欧米より少ない社会保障予算

 財政赤字の原因は社会保障ではありません。
 政府は、財政健全化のために、社会保障を削って消費税を増税すると言っています。しかし、個人消費の低迷がデフレ経済の主因といわれる現状で、消費税を増税すれば消費はさらに落ち込み、企業の業績は下がり、賃金が下がるという悪循環でデフレを加速させるだけです。
 家計と内需を温ためる政策で、賃金を上げ経済を活性化させることこそ政府が第一にやるべきことです。
 財界と政府は、ヨーロッパと比較して、消費税率の高さが社会保障の善し悪しを決めるかのように主張します。これは、大きな間違いです。国税収入に占める消費税の割合を見ると、日本は今でも世界最高水準です(表2)。

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表2 各国の消費税率と国税収入に占める割合

 また、国の財政赤字は「社会保障に原因」があるという勝手な理屈を主張しています。
 日本は、対GDP(国内総生産)比で見ればヨーロッパに比べて社会保障給付も社会保障の公費負担も低いのが現状です。大企業や大資産家への減税の大盤振る舞いこそが財政赤字の原因です。
 各国の社会保障構成比では、日本以外の国は「事業主負担」が最も多く、次いでドイツを除く各国は「そのほかの税」で、以下「本人保険料」(イギリス、スウェーデンを除く)「消費税」(付加価値税)となっています。
 日本は、なんでも「消費税」と大騒ぎしていますが、福祉型財政のヨーロッパ諸国では消費税に頼らない財政構造になっています。

国民もてあそぶ財務省 ― "肩車論"をゲームで刷り込み

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 「胴上げ、騎馬戦、肩車」―。野田首相が「社会保障と税の一体改革」の理由に挙げる「肩車論」。高齢化の進展によって社会保障の支え手が減少するといいますが、これはまったくの暴論です。
 野田首相の論拠は、20歳から64歳までの人口で65歳以上の人口を割った数で、50年前は高齢者1人当たり11人(胴上げ)、現在は3人(騎馬戦)、50年後は1人(肩車)という計算です。
 これは、65歳以上の高齢者は何もせずただ食べるのみ。20歳から64歳は飲み食いせず働き続ける。19歳以下の若者は存在しない-という奇怪な社会を描いています。
 現実社会は、総人口(赤ちゃんからお年寄りまで)を労働者人口(年齢にかかわらず働く人)が支えています。したがって、労働者人口で総人口を割った数で考えなければなりません。2010年の総人口1億2806万人に対し、労働力人口は6814万人で全体を支えるのは1.88人。2050年の推計では総人口9577万人に対し、労働力人口は4668万人で2.05人とほとんど変化しません。
 問題は、この誤った情報を財務省ホームページのキッズコーナーでゲーム(写真)にしていることです。子どもたちにうそを刷り込むたくらみは直ちに中止すべきです。

全国商工新聞(2012年4月16日付)
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