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  トップページ > 税金のページ > 徴税攻勢 > 全国商工新聞 第3191号11月9日付
 

マイナンバーどうする年末調整・確定申告

「番号記載あれば、厳密な本人確認が必要に?」

「番号記載なしでも受理。不利益・罰則ない?」

 今年の年末調整や来年の確定申告からマイナンバー(共通番号)の記載が求められます。番号漏えいやプライバシー侵害につながるなど多くの国民・中小業者から不安の声が広がっています。各地の民主商工会(民商)では学習会を開くとともに税務署と交渉し、番号が記載されていなくても書類は受理し、不利益や罰則もないことなどを確認しています。どんな書類に番号が求められるのか、制度の問題点と対策をあらためて考えます。

設けられる番号記載欄 

 共通番号は社会保障や税務関係の手続き、災害対策の三つの分野で利用されます。申請、給付、報告書などへの書類に番号記載が求められます。

 申告所得税の関係では2016(平成28)年の確定申告書から番号記載が求められます(2017年2月16日から3月15日までに提出するもの)。納税者以外にも配偶者控除や障害者控除、勤労学生控除などを受ける扶養親族、専従者の番号も求められます(図1)。

図1.所得税の確定申告書B※クリックすると拡大されます。

国税庁「未記載でも受理」【確定申告書】

 全国中小業者団体連絡会(全中連)の国税庁交渉(9月16日)では「確定申告書は番号未記載でも受理する。不利益や罰則はない」(下の表)などの回答をあらためて得ています。納税者一人ひとりで対応を検討しましょう。

 仮に番号を記載して確定申告書を提出すると、本人確認のためにマイナンバーカード、または通知カードと運転免許証など写真付き身分証明書が必要となります。税務署では、窓口混雑などを招く要因にもなりかねません。

 全国の民商は毎年、「3・13重税反対全国統一行動」に取り組み、集団申告を進めています。税務署員は番号記載を求めますが、集団申告に参加すれば、番号を記載しなくても安心して申告書を提出できます。

※クリックすると拡大されます。

番号記載で実務負担【源泉所得税】

 源泉所得税の関係では「2016年分給与所得者の扶養控除等申告書」から本人と控除対象配偶者や扶養親族の番号記載が求められます(図2)。

 扶養控除等申告書に個人番号が記載されると、事業者はその番号が本人の番号かどうか、従業員のマイナンバーカードまたは、通知カードと写真付き身分証明書で確認しなければなりません。

 法定調書関係では給与所得の源泉徴収票は用紙サイズがA6判からA5判に変更され、給与を受け取る本人、控除対象配偶者、扶養親族、雇用主の個人または法人番号の記入欄が設けられています(図3)。

 その他に法人税や消費税、相続税、贈与税、酒税関係などの書類にも個人番号が求められます。

図2.給与所得者の扶養控除等(異動)申告書※クリックすると拡大されます。

図3.給与所得の源泉徴収票※クリックすると拡大されます。

必要最低限の対応で【番号管理する場合は】

 地方税関係では来年5月までに届く特別徴収の住民税通知書に自治体が個人番号を記載して事業者に送ろうとしており、さまざまな問題点が明らかになっています(別稿)。

 事業者が従業員の個人番号を集めたり、書類に番号記載を求めれば、個人番号が漏れないように管理することが法律で義務付けられます。(1)マイナンバーが記載された書類は、鍵が掛かる棚や引き出しに保管する(2)ウイルス対策ソフトを最新版にするなどセキュリティー対策を行う(3)退職や契約終了で従業員の個人番号が不必要になったら確実に廃棄する―ことが必要になります。

 従業員などが番号提供を拒むときは番号を記載せずに書類を提出し、経過を記録する。取引先の関係で個人番号を管理・運用せざるを得ないときは必要最小限の対応にとどめる―などの対策を考えることが必要です。

個人番号の記載は違法 人権軽視の制度中止を【住民税通知書】

税理士 佐伯和雅さん

 住民税通知書(特別徴収義務者用)に、本人が提供をしていない個人番号がなぜ記載されるのか。10月24日に行った総務省担当者とのヒアリングの中で、さらに問題点が明らかになりました。(1)知らないところで個人番号がやりとりされる「個人」の問題(2)個人番号を一方的に通知される「事業者」の問題(3)通知を行う「自治体」の問題―の3点です。

 (1)「個人」の問題では、各自治体と事業主との間で個人番号がやりとりされることになれば、自分の個人番号が、いつ・どこから漏れたか分かりません。誰にも教えていないのに世間が個人番号を知ることになります。

 (2)「事業主」は、安全管理体制が整っていなくても、予告なく一方的に個人番号が通知されてしまい、番号が漏れれば厳しい罰則が課せられる可能性があります。また従業員より個人番号の提供を受けていない場合には、自治体より通知された番号を他に使うことはできません。提供を受けていない番号を所得税や社会保険手続きに利用した場合も処罰されることになります。

 (3)「自治体」は総務省より適正に管理運営せよと助言されています。普通郵便で個人番号を送付し、郵便事故により情報が漏えいした場合には損害賠償請求されることも想定されます。特定の郵便で送る場合には人的・金銭的コストの負担をすることになります。これは私たちの税金を使うことになりますから、自治体も頭を悩ませています。

 ヒアリングの中で、総務省側は事業者の実態を無視して「安全管理体制を整えてほしい」とか「郵便事故や番号漏えいは起こらないことを前提にしている」との非現実的な回答に終始しました。本人以外に個人番号が全国規模で通知される初めての事案にもかかわらず、余りにも無頓着な取り扱いであり、個人のプライバシーも無視しています。

 そもそも個人を無視して個人番号を役所と事業主で取り扱うこととなれば、この番号を個人番号(マイナンバー)とは呼べず、「国民総背番号制」と言わざるを得ません。

 国民と事業者に大きな負担を押し付ける住民税通知書への個人番号記載は中止するべきです。

形骸化させる運動を【利用範囲の拡大許さず】

 個人情報漏えい、成り済ましによる不正利用、国家による一元管理―。マイナンバー制度は導入前からさまざまな問題点が指摘され、反対の声が広がっていました。

 国は制度の目的について「公正な給付と負担の確保」とうたっていますが、狙いは預金口座に個人番号をひも付けして所得や資産状況を把握し、税や社会保険料などの徴収を強化する一方で社会保障給付を削減することです。税務調査にも利用されることが懸念されます。

 さらに個人番号を扱う中小業者は厳格に管理することが求められ、番号が漏れた場合は真っ先に責任が問われます。浦野広明税理士は個人番号「持たず、使わず、使わせず」の「非番三原則」を提唱しています。

 個人番号記載を求める書類は当初640種類ありましたが、国税庁は税務関係の記載対象書類の見直しを行い、今年4月から番号記載が不要となった書類を公表しました。さらに2016年度税制「改正」でも番号記載が不要な書類を拡大させ、番号記載を求める書類は300種類まで減らしています。運用されてから1年もたたないうちに番号記載の対象が見直されるのは、十分に内容が検討されないまま制度がスタートしたことを表しています。

 マイナンバーカードの普及が広がると行政手続きが簡素化され、国民の利便性が向上すると宣伝していましたが、カードの申請受付は1100万件にとどまり、普及率は10%にも届かない状況です。

 全国商工団体連合会(全商連)はマイナンバー制度の中止・廃止を求める署名に取り組んでいます。民間含め利用範囲の拡大を許さず、制度形骸化を図る世論と運動を広げることが大切です。

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