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不況打開の提言
1994年7月
  
一、今すぐ実行すべき緊急対策

 戦後最悪の不況は、中小業者に強烈な打撃を与えており、希望が断ち切られて自殺 に追い込まれる仲間さえ生まれています。
 私たちは、これ以上の廃業や犠牲者を出さないためにも、
@消費税率引き上げを阻 止し、廃止させ、公共料金の引き上げをやめさせる、
A緊急金融対策、返済猶予や借 り替えの実施、
B中小業者向け官公需を一割増やし、大企業に下請業者への発注を保 障させる
Cいのちと健康、老後の安定した生活のために国保、年金の拡充を―

と いう四つの柱の緊急対策をつよく求めるものです。
 この緊急対策は、その気になれば、すぐ実行できるものばかりです。

1、消費税率引き上げを阻止し、廃止させ、公共料金の引き上げをやめさせる
 消費税率引き上げは、物価を引き上げ、新たな税負担を中小業者と国民に押しつけ 消費不況をより深刻にします。また、インボイス(税額票)方式の導入は、零細業者 を取引から排除し、苦境にたつ中小業者の息の根を止めることにつながります。消費 税率引き上げは、どのような理由や形式でも絶対にやめることです。
 消費税を廃止し、少なくともただちに食料品非課税を実施し、大企業への適正な課 税を実施することこそ、消費不況打開の道です。
 公共料金の引き上げは、くらしを圧迫し、売上や工賃・マージンの減少に苦しむ中 小業者の経営をさらに圧迫します。政府は「安易な(公共料金の)引き上げは厳に慎 み」と決めたことを守り、公共料金の引上げをやめるべきです。

2、緊急金融対策、返済ゆう予や借り替え策の実施
 「資金は必要だが返済の見通しがない」という中小業者が利用できる様な、仕事の 確保や技術の指導と合わせた無担保・無保証人・無利子の緊急特別融資制度を、全市 区町村で創設することが必要です。
 また、現に利用している金融の返済猶予や借り替えのための融資制度を確立し、一 定期間の返済の棚上げや金利の引き下げ、経営の健全化に役立つようにすることです。
 政府は、銀行が差別・選別融資をおこなったり、「歩積み両建て」を要求すること を厳しく取締まり、資金の必要な業者に必要な資金がわたるよう全力をあげるべきで す。

3、中小業者向け官公需を一割増やし、大企業に発注を保障させる
 当面、地元中小企業・中小業者向け官公需発注を、国・自治体とも10%以上増や すことです。これによって中小企業・中小業者の仕事は約二兆円増えます。
 大企業の工場移転、規模の縮小や、下請業者への一方的な発注打ち切りなど、社会 的責任を放棄したり、ルールを無視した行為は目にあまります。この横暴をやめさせ るだけでも中小業者の発注減は大幅に是正されます。
 また、大企業の小売業分野への進出、増床、営業時間の延長を抑制するよう要求し ます。
 地場産業の危機打開のために、繊維製品等の輸入制限借置をとること、革製品の関 税の引き下げをやめることが必要です。

4、いのちと健康、老後の安定した生活のために国保、年金の拡充を
 この不況の時だからこそ、「すべての国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む 権利を有する。」(憲法25条)という規定を守り、生存する権利を確実に保障する ことが必要です。
 当面、国と大企業の拠出金を増やし、国保、年金の保険料の引き上げをやめ、多く の人が支払えないほど高額になっている保険料を引き下げることです。
 また、病気の早期発見、早期治療のためにも、健康診断を自治体が地域住民の組織 と連携して推進するなど、すべての住民が参加できるような方法ですすめるようにす ることです。
 自治体がやる気になればできるしくみになっている傷病手当をただちに実施するこ とは、「体が資本」の中小業者にとって、不況を乗り切る大きな力になります。

二、長期的視野にたった不況打開の提言

 今回の不況の特徴は、産業の構造を変えるような動きをともなっていることです。
 したがって、本当に中小業者がその社会的経済的役割にふさわしい発展をとげるに は、長期的視野に立った、経済のしくみを変えるような根本的な検討が必要です。
 私たちは、以上の趣旨に立って、この不況から脱出し、中小業者の営業と生活が安 定・向上に向かうための、次のような施策の実行を提言します。

1、国民のふところを豊かにするために

(1)国民が豊かになることが景気回復の決め手
 平成5年の勤労者世帯の収入調査(総務庁)によっても、前年同期比で可処分所得 は実質12年ぶりのマイナスです。これでは本格的な景気回復はできません。
 内需拡大を中心に景気の回復をはかるためには、国民が豊かになることが決定的に 大切です。
 そのための対策の基本は、第一に雇用安定、仕事確保、単価・工賃の引き上げ、中 小小売業者への納入価格の引き下げ、中小企業者とその家族の自家労賃を実現するな ど、国自治体、大企業がやる気になればできる対策で、中小業者・国民のふところに 入る額を増やすことです。
 第二に、消費税を廃止し、公共料金を引き下げ、課税最低限を4人家族で350万 円に引き上げるなど、幅広く国民に効果がおよぶ減税の実施など、国民のふところか ら出ていく額を減らすことです。
 第三に、国民健康保険、国民年金制度の改善など、社会保障制度の拡充で国民が安 心して暮せる環境をつくることです。
 とくに、公共投資を国民生活の向上や中小業者の受注拡大につながる福祉型重点に 転換することは、住民の利益になるだけでなく、不況打開の力にもなります。
 巨大プロジェクト優先の公共事業での不正談合をなくし、工事価格の決め方、発注 のやり方をはじめとした不透明や浪費をなくし、住宅、福祉施設など生活密着型に7 割、その他を3割という配分に切り換えれば、その効果は地域経済をすみずみまでう るおします。
 「官公需法」の精神を生かし、中小企業、中小業者向け発注を大幅に増やすために、 小規模工事や物品発注への大企業の参入を排除すること、分離発注を増やすなど発注 方法の改善をつめよることが国やすべての自治体で実施されるべきです。
 発注官庁は元請けから末端までの状況を掌握し、代金未払い等を機敏に是正するこ とも、今日の不況下でいっそう重視する必要があります。

(2)経済力も財源も十分にある
 国民のくらしを豊かにすることは、世界第2位の経済力を持ってあたれば十分に可 能なことです。
 大企業は124兆円(金融業を除く)も内部留保をためこみ、しかも、この不況 の中でも増やしており、中小業者や労働者の賃金・工賃・マージンを生活できる水準 に引き上げる資金を十分にもっています。
 大企業優遇の不公正税制では、6種類の引当金22種類もの準備金で大企業の利 益隠しが合法化され、毎年地方税も含めると3兆円4000億円もの税金を減免税してい ます。(引当金、準備金は、アメリカ2種類、ドイツ10種類、イギリス2種類です)
 また、大手ゼネコン・財界奉仕、軍事費拡大という税金のムダ使いをなくすことで す。例えば、日立、三菱重工など大企業への補助金は通産省分だけでも年間1000億円 を超え、軍事費は、世界第2位にふくらんでいます。
 こうした点にメスを入れれば、減税や福祉充実の財源は十分に確保できます。

2、大企業の横暴を許さない、国民の立場からの規制の強化を
 大企業が「事業活動を通じて地域社会の福祉の向上に努め」「すべての法令及びそ の精神を遵守」し、「自らがおうべきリスクや損失は他者に転嫁しない」(経団連企 業行動憲章)というのは当然のことです。
 したがって真の不況打開のためには、大企業、銀行、政府の責任を明らかにしつつ 根本的な仕組みに大胆にメスを加え、事業所数でも99%を占める中小企業を大切に する経済の民主主義を確立する方向に踏み出すことこそが唯一の道です。

(1)大企業の海外進出に対する規制を
 大企業の多国籍企業化が進行し、中小企業、地場産業は深刻な打撃を受けているの に、政府はこれをいっそう推進しようとしています。
 国や自治体から、補助や援助を受けながら、企業の都合だけで工場を縮小・閉鎖し、 安い労働力を求めて海外進出を強行する大企業の行動は、国内の設備投資や消費を低 迷させ、景気の足を引っ張るものです。このような姿勢で海外進出しても、日本より いっそう無権利な状態を世界中につくりだし、矛盾を広げ、海外派兵の口実をつくり だし、その一方で日本の国民がたたかいとってきた権利や労働条件を奪ってしまうだ けです。
 中小業者・労働者に犠牲を強いる大企業の生産拠点の移転、工場閉鎖・規模縮小等 に対する「規制法」を制定し、地域経済等への影響に応じて、計画の中止、変更など の措置がとれるようにすることが必要です。

(2)地域経済の振興に貢献する銀行に
 政府は、バブル景気をあおった銀行救済のために債権買取機構をつくりましたが、 救済すべきは中小企業です。中小業者の金利、元本の一切を引き受ける、中小業者の ための債務買取機構を創設するなどの思いきった対策が必要です。
 同時に、銀行など民間金融機関に、不況打開のために積極的な役割を発揮させるこ と、銀行など民間金融機関自らが、その公共的な役割を自覚し、社会的責任を果たし、 地域経済の振興に貢献することが大切です。

(3)「規制緩和」の名による中小業者つぶしを許さないために
 政府は「原則自由、例外規制」を基本方針にして、規制緩和をはじめとした強者本 位、「ルールなき資本主義国づくり」をめざそうとしています。
 「大店法」の運用基準をゆるめたことで大スーパーは、営業時間の延長や休日を減 らすなどしていますが、その影響で地域の中小業者がいっそう苦境に立たされている だけでなく、大型店で働く労働者にも労働強化が押しつけられる結果となっています。  食糧管理法つぶしをねらう動きも活発ですが、もし「食管法」がなくなればコメが 大資本のもうけの対象になり、消費者価格やコメの質が思いのままにあやつられ、そ の被害はコメを扱う多くの中小業者、消費者にひろがることは、昨年の冷害とその後 の経過を見れば明らかです。
 「大店法」の新運用方針を改め、地方自治体の意見を最大限尊重することや、大型 店の進出を都道府県知事の許可制とすることや、コメ生産者に再生産価格を保障し、 消費者に安い主食を提供する本来の「食管法」に改善するなど、規制緩和政策の抜本 的な転換が必要です。

3、中小企業者の社会的経済的役割を明確にした権利の確立を
 「小規模企業従事者の生活水準が向上するよう適切な配慮を加えつつ、中小企業の 経済的社会的制約による不利を是正するとともに、中小企業者の創意工夫を尊重、そ の自主的な努力を助長して、中小企業の成長展開をはかる」(中小企業基本法)ため に、国が保護育成策を取るのは当然のことですが、「中小企業従事者の経済的社会的 地位の向上」は、その権利が確立されてこそ実現できるものです。
 たとえば、「8時間で生活できる下請単価の保障」や「一方的な仕事の削減、打ち 切りの是正」をめざし、大企業・親事業者の横暴を規制し、発注元大企業の責務を明 確にすることや、法的権限を持った「下請基準監督官」を設置し、法令に違反した場 合の制裁、罰則を強化することが緊急に実現されなければなりません。同時に下請け 中小業者を一定数組織した業者団体に交渉権を保障するなど、中小業者が対等・平等 に大企業と交渉できる団結権、団体交渉権を確立すべきです。

4、地域の中小業者とともにすすめる地域経済振興計画
 大企業の相次ぐ身勝手な工場移転や進出中止などで、地域経済が衰退しています。 これに、巨大プロジェクトの破錠が表面化し、大企業誘致を基本にして「地域経済活 性化」をはかるやり方への批判、見直しの機運はひろがっています。
 いま大切なのは、それぞれの地域での中小業者の役割を正しく評価し、自治体の商 工行政が何をすべきか、国に対して何を要求していくべきかを明らかにすることです。
 中小企業・中小業者は、さまざまな製造、販売の技術を備えており、その能力を結 集するならば、地域経済の新しい振興の主役となることは可能です。また、さまざま な技術をもった業者が集積されているからこそ、新製品の開発も可能になるのです。
 こうした政策とともに、あらゆる業種の転業や開業支援のため、国・自治体の情報 の提供や技術支援の質量を画期的につよめ、転業・開業資金を借りやすくし、事業へ の意欲を高めることが、日本経済の健全な展開に欠かせません。
 このようにして、中小企業・中小業者が誇りと自覚をつよめることで後継者も育ち ます。実態調査を実施し、自然環境破壊、大企業中心の「地域開発」ではない地域経 済振興・活性化計画を作成する第一歩を歩み出すことが必要です。
 大規模工場を設置し、大量生産、大量販売という方式ではない、中小企業・中小業 者だからこそできる個性豊かな地域産業の振興をめざすことで、中小業者の展望がひ らけます。すでに、中小企業振興条例を作成し、「自治体の責務」「中小業者の努力」 「市民の理解と協力」を明確にして、地域ぐるみで立ち上がっている自治体もありま す。
 いま、自治体が、中小業者とともに地域経済振興の展望をきりひらく立場から、地 域経済振興計画を作成することは、中小業者に希望を与え、地域に根ざした商工業の 発展を求める機運をいっそう高めます。「計画」の作成は、地域社会を守る上からも 緊急の重要課題といえます。
 
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