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  トップページ > 全商連とは > 方針・決議 > 全国商工新聞 第2983号 7月18日付
 
政策・提言など
 

「日本版・小企業憲章」の提案にあたって

2011年7月10日 全国商工団体連合会

 2010年6月18日、中小企業を「経済を牽引する力」「社会の主役」と位置付ける中小企業憲章が民主党政権の下で閣議決定されました。
 それから1年が経過しましたが、いまだに憲章をよりどころにした政策展開はありません。それどころか、関税を撤廃し、大企業の海外展開や国内産業への外国資本の参入を促す政策が具体化されようとしています。社会保障の切り捨てと消費税増税、地場産業の集約化と道州制への移行、沖縄・辺野古への新基地建設の押し付け、原発依存のエネルギー政策の継続など、東日本大震災と原発事故を契機として、構造改革路線をさらに徹底し、財界とアメリカに奉仕する国・地方自治体づくりをめざす動きが強まっています。
 多くの国民の要求に背くこの危険な流れを食い止め、地域の隅々から、住民生活と中小業者の経営を再建・復興し、地域循環型の経済社会の構築をめざすことが求められています。
 私たちが提案する「日本版・小企業憲章」は、憲法が規定する幸福追求権をはじめ、生存権や財産権、職業選択の自由など民主的諸権利を踏まえ、小企業・家族経営の営業の自由が実質的に保障される経済社会の建設をめざすものです。
 そして、政府がとらえようとしない小企業・家族経営の存在意義や役割を明らかにするとともに、戦後続いてきた中小企業政策への反省を求め、自治体産業政策とも結んだ、きめ細やかで小企業に実益が及ぶ支援策の実現を迫るものでもあります。
 全商連は、小企業とほぼ同義の自営商工業者を組織する団体として、あらゆる業種・業態の実態と要求を明らかにし、60年の歴史を重ねてきました。この実践を踏まえ、わが国にふさわしい小企業・家族経営の憲章案を発表します。
 この提案が小企業・家族経営の圧倒的多数を極度の生活不安に追い込む社会のありようを転換する力となり、持続可能な地域経済の発展に生かされることを期待するとともに、その実現への国民合意をめざします。

日本版・小企業憲章(案)

2011年7月10日 全国商工団体連合会

一、小企業政策の根本的転換をすすめます
1、中小企業政策の根本的反省に立って
 日本において、小企業・家族経営を「社会の主役」とするためには、何より戦後日本の中小企業政策の根本的反省が求められます。それは、小企業・家族経営の盛衰・消長が、国による大企業支援と、それに沿った中小企業政策のあり方に大きく影響されてきたからです。
 戦後日本では、アメリカに追随しつつ、大企業の復活・資本蓄積を支援し続ける自民党が長く国家権力を握る下で、小企業・家族経営は常に冷遇され続けてきました。敗戦からの復興、高度成長期、そして80年代前半まで、確かに膨大な小企業・家族経営が誕生しましたが、それさえ決して日本政府の支援によるものではありませんでした。
 政府は、むしろ「近代化促進」や「構造改善」の名で、小企業を整理・淘汰してきたのであり、小企業・家族経営の発展は、敗戦による荒廃を体験した国民自らが、貧困や封建的諸制度からの脱却をめざし、生きるために粉骨砕身の努力を積み重ねてきたからにほかなりません。
2、小企業の倒産が激増する異常事態を直視して
 小企業・家族経営の倒産・廃業が開業を上回る事態は、80年代末から今日に至るまで続いています。その背景には、資本の横暴が野放しにされ、政府がアメリカに追随する姿勢をより強めてきたことがあります。
 消費税の導入・増税をはじめ、際限のない重税や社会保障の改悪が暮らしに多大な苦難をもたらし、衣食住に密着した小企業への打撃ともなってきました。無秩序な工場・大型店舗の進出とともに重層下請への犠牲転嫁や逆輸入、テナントやフランチャイズの一方的契約による収奪が大手を振るい、小企業の仕事は奪われてきました。そして、投機を優遇する金融政策は、地域の健全な資金循環の断絶さえ招いてきました。
 この弱肉強食の「構造改革」に沿って、中小企業基本法は改悪されました。格差の是正が放棄され、小企業・家族経営への支援の理念が消え去り、業者団体の役割さえ著しく軽視したものとなったのです。
3、資本の論理を正す小企業支援の探求こそ
 私たちは、これまで欧州などでの小企業に対する政策変化を探るべく、80年代から系統的に視察・調査を重ねてきました。強調したいのは、欧州の取り組みの根本に、経済政策の是非をめぐる真摯な態度と反省があることです。
 すなわち、欧州では、小企業の整理・淘汰が日本より早く進み、まちやむらの荒廃を招いた原因が「資本の論理の放置にあった」ことを政策担当者たちは認めてきたのです。
 この現実を直視し、他国から進出してきた企業に原材料や部品などの国内調達を義務付ける「ローカルコンテント法」など大企業を民主的に規制し、小企業を保護・支援する具体策が取り組まれてきました。また、行政と小企業の関係でも、許認可のありよう、あるいは租税のあり方も含め、小企業支援の方向を探求してきたからこそ、「小企業憲章」という新たな政策展開が起き、さらに「家族経営の繁栄」さえ位置づけた議定書も確立されたのです。
 これに比べ、日本においては、こうした結果責任に基づく政策転換が「中小企業憲章」を閣議決定する過程においても、まったく見受けられませんでした。
4、あらゆる業種・業態の小企業の実態を正確に把握して
 日本の中小企業政策について、政府は度々、その政策メニューの豊富さを誇ってきました。しかし、対策予算の驚くべき低水準が、小企業・家族経営の全体を支援対象にしていないことを如実に示しています。また、中小企業の動向と施策は毎年、年次報告として「白書」にまとめられてきましたが、国会ではまともに審議されてきた経緯もありません。
 現実を直視するなら、あらゆる業種に「活力ある多数」として存在する小企業・家族経営の実態を、経済産業省の一外局である中小企業庁では把握できません。「中小企業憲章」を閣議決定しても、旧態然とした「縦割り」行政を改めようとしないこと自体に、反省のなさが示されています。
 小企業政策の根本的転換は、今日の異常な経営環境の下で、小企業・自営商工業がどう役割を発揮しているかを、支援する立場から正しくつかむことから開始されるべきです。

二、小企業・家族経営の役割を正当に評価します
 小企業・家族経営は、強い独立心を持っています。そして、苦労をいとわず、経営努力を積み重ね、磨いてきた技術や技能、味やサービスを次代に引き継ぐという使命感や進取の精神を発揮しながら日本経済に活力を与えてきました。
 小企業・家族経営の存在が、戦後のわが国の復興や驚異的な経済成長を支え、度々発生する大災害から地域を再生させるなど、大きな役割を果たしてきたのも事実です。
 地域の隅々に多様な小企業・家族経営が存在することが庶民の暮らしを豊かにします。そして、小企業・家族経営は以下のように多様で貴重な経済的、社会的役割を発揮しています。この役割を正当に評価し、事業の継続発展を保障することこそ、行政の責務です。
1、小企業・家族経営は生きる糧を自ら生み出す活力にあふれ、地域に密着した社会的存在です
 「三方よし」(売り手よし、買い手よし、世間よし)の精神で、人々に喜ばれることを一番に心がける小企業・家族経営は、信用を重視し、生きる糧を自ら生み出す活力にあふれ、地域に密着した社会的存在です。
2、小企業・家族経営は持続可能な地域づくりと地域経済の再生に不可欠です
 小企業・家族経営は、地域内の産業ネットワークを形成し、資金の地域内循環などを通じて、「地域内再投資力」を高め、雇用や仕事、所得を生み出すなど、地域経済の再生になくてはならない存在です。
3、小企業・家族経営は高齢化社会を支え、新しいモノとサービスを生み出します
 小企業・家族経営は、劣悪な社会保障制度の中で高齢者の安全・快適な生活を支えています。そして、個性と技術を生かした「オンリーワン」のモノづくりや行き届いたサービスは、小企業・家族経営の真骨頂です。
4、小企業・家族経営は人間性の回復に欠かせません
 競争に駆り立てる社会に異議を唱え、共生と人間性回復の要求に応えることができるのは小企業・家族経営です。各地でスローライフやフェアトレードなど、若い感性と新しい経営形態への挑戦を応援しています。
5、小企業・家族経営は日本の風土を熟知し、技術を生かして地域社会の存続と安全確保に知恵と力を発揮します
 日本の風土が育んだ伝統建築の継承、再生可能エネルギーの活用など、風土と地域の特徴をつかんでいるからこそ、快適な環境づくりに貢献できます。地域住民との密接な関わりを生かした防災・人命救助など、小企業・家族経営は環境の保全や地域社会の存続、安全確保に知恵と力を発揮しています。
6、小企業・家族経営は高齢者や障害者、女性に働く場を提供し、地域の雇用を守っています
 多くの小企業・家族経営は従業員の家族構成やその暮らしぶりを熟知しています。だからこそ、厳しい不況が続く中でも、高齢者や障害者に手に職をつけることを援助し、女性の働ける条件に合わせて雇用するなど、地域に働く場をつくり、雇用を守っています。
7、小企業・家族経営は環境・リサイクルに貢献します
 使い古しの家具や電化製品を修理して再利用を可能にし、余り布から手織りの技術で新製品のカーペットを生み出すなど、小企業・家族経営はモノを大切にし、環境・リサイクルに貢献しています。
8、小企業・家族経営は文化を継承し、地域に豊かさと元気と展望をもたらします
 小企業・家族経営は、歴史や風土、文化や伝統に根ざしたモノづくりを担い、その技や知恵を継承してきました。地域の子どもを見守り、まちのオアシスとなって明日への活力を生み出しています。インターンシップで学生にモノづくりの楽しさや中小業者としての生き方を伝えるなど、小企業・家族経営は、地域に豊かさと元気と展望をもたらします。

三、小企業・家族経営の経営環境を改善する政策方向
1、庶民が生き、くらし、働く基盤づくりを最優先にします
@あらゆる税制に、生活費非課税の原則を貫きます
 小企業・家族経営の発展を阻害する要因の一つに、生活費に食い込む容赦のない課税があります。自営業は勤労世帯でありながら自家労働を認めない税制の下で、課税最低限はもっとも低く、申告形態も記帳によって差別され、家族の働き分さえ経費に認められていません。さらに消費税では取引の力関係によって身銭を切らされ、赤字でも納税を迫られています。
 同時に、小企業・家族経営の多くは庶民の生活必需品を供給することで、生業を営み、まちやむらの繁栄に貢献しています。生活費非課税を実現し、その結果、庶民のふところが豊かになることが「売り手よし、買い手よし、世間よし」の基盤となります。
A行政の許認可を「官僚的規制」としない政策調整を図ります
 小企業・家族経営の発展を阻害する要因の二つは、規制改革のあり方です。この間にも新車を購入できなければ廃業を余儀なくされるディーゼル車排ガス規制や、駐車場も整備されない中での路上駐車の機械的取り締まり、実情を無視した建築確認申請の厳格化などが行政の許認可に基づく規制として押し付けられてきました。
 小企業・家族経営は、経営環境の変化に最も敏感に反応する存在であり、官僚体制の過度な負担を強いられれば、真っ先に被害を被るのです。このことを踏まえ、「消費者利益」と小企業支援との整合性がとれる政策展開こそ求められています。
B小企業に対する資金供給の円滑化を図り、地域再投資を推進します
 小企業・家族経営の発展を阻害する要因の三つは、投機を優遇し、公共性を投げ捨てた金融政策です。広範な小企業・家族経営を収益性の低さから不良債権扱いし、寡占化した都市銀行が目先の利益を求めた結果、リーマン・ショックによる金融危機さえ勃発しました。
 小企業・家族経営に対する融資で、担保・保証人を不要とし、業種・年齢・性別などでの差別や納税要件をなくします。地域再投資を促進する法体系を整備し、金融機関に地域貢献義務を果たさせるとともに、暮らしの資金融通も助ける基盤づくりを進めます。
C社会保障、生活保障給付を小企業支援に生かします
 小企業・家族経営の発展を阻害する要因の四つは、社会保障に「自己責任」原理が導入され、過重な負担と貧困な給付が徹底されたことです。国民健康保険制度でも、家族経営には「高すぎる」国保料(税)が押し付けられてきましたが、その背景には、国庫負担削減という社会保障切り捨て政策があります。また、大企業がリストラ・人減らしで健康保険料を含む法定福利費を削減し、大量の不安定雇用労働者を国民健康保険に移行させたことも見逃せません。
 小企業を極度の生活不安に追い込まないことが、社会保障の崩壊と財政危機を防ぎ、まともな経済運営を可能にさせます。小企業・家族経営は、例えば、生活保障の給付を部分的に受けつつも事業を継続できるなら、その能力は生かされます。
D生活密着型の公共工事や官公需の分割発注で小企業の仕事確保を促します
 小企業・家族経営の発展を阻害する要因の五つは、公共工事や官公需から小企業・家族経営が遠ざけられてきたことです。外国資本や大企業の受注拡大のためのWTO(世界貿易機関)政府調達協定、入札から締め出す税金完納要件、受注に必要な資格や許認可基準の引き上げが小企業・家族経営の受注機会を奪ってきました。低価格を競わせ、デフレの加速と経営悪化を招くリバースオークション(競り下げ入札)など、もってのほかです。
 無駄な大型事業よりも生活密着型の公共工事を重視すべきです。「地域の仕事は地元の業者に」「仕事おこしに納税要件はつけない」のルールを確立し、小企業・家族経営の仕事おこしに役立つ施策と受注確保を促します。
E事業継承と創業支援を進め、伝統や技術を守り、雇用の場を広げます
 事業主の高齢化が進むなか、後継者がいなければ世代交代もできず、廃業がふえ、蓄積された技術・技能も失われます。とりわけ、伝統産業分野での後継者不足は深刻で、産業の存続すら危ぶまれる状況です。
 伝統文化やモノづくりの技術を守り、就職難を解消するためにも、小企業・家族経営の発展を阻害するあらゆる要因を取り除くとともに、事業継承の円滑化や人材育成の促進、事業規模の差による給与格差の是正、自営商工業の社会的存在意義と価値を啓蒙する教育の充実など、施策の具体化は待ったなしです。また、創業支援策を充実させ、創業後3年間を事業継続支援期間と位置付け、専門家による経営指導を事業主の負担なしで行うなど、小企業・家族経営を存続させる制度の充実は、庶民が生き、暮らし、働く基盤づくりに役立ちます。
2、小企業・家族経営への不公正取引を是正する制度・体制を確立します
@「規制緩和万能」を無批判に取り入れる独占禁止政策の転換を図ります
 公正な取引ルールの確立は、政府も財界も必要性を認めていますが、その中心に「効率性」や「国際競争力」が位置付けられ、小企業・家族経営は、「非効率な存在」とされてきました。このため、銀行の貸し渋りをはじめ、際限のない単価たたき、突然の取引停止、原価を下回る「安売り」、無法なFC契約、納入業者への負担強要、技術のかすめとり等が横行しています。しかし、その取り締まりは極めて限られていたのが現実です。
 競争は本来、経済取引の手段であって目的ではありません。公正取引委員会が「競争」政策に偏重することなく、力の強いものの横暴を規制し、「公正な取引」を促進することで、小企業・家族経営の創意が生かされるようにします。
A大企業に公正取引を義務付け、被害救済の「違反金」を課します
 取引の現場では、大企業が重層下請けを通じて、あるいは優越的地位を乱用して、不公正取引を強要しても、被害を受けた小企業・家族経営の告発は極めて厳しいのが現実です。なぜなら、執拗な報復措置や訴訟の費用負担を覚悟せざるを得ず、不透明な国際取引が広がる下での新たな取引先の開拓は極めて限定されるからです。
 優越的地位の乱用を防ぐため、何より、不公正取引の実態を告発しても事業を維持・継続できる環境づくりが不可欠です。取引上、行われる大企業の違反行為を根絶するために、公正取引委員会が持つ権限を最大限に行使させるとともに、優越的地位の乱用に課徴金を課すなど、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」(独占禁止法)が厳格に運用されなければなりません。財界が要求する審判制度の骨抜き・廃止を許さず、違反には課徴金だけでなく被害救済の「違反金」を課すなど、法改正を図ります。
B小企業の自主的な協同化や異業種交流を支援します
 小企業・家族経営は、個々の努力によっては解決できない外的な要因によって経営危機に直面することが少なくありません。それを打開するために団結し、共同することで、大企業の横暴から営業とくらしを守ることは当然の権利です。
 独占禁止法は、大企業にはカルテルやトラストなどによる独占を禁止する一方、中小企業には組合を組織し、団結して経済的利益を守ることを認めています。
 大企業や銀行、税務署などの横暴を事実を持って明らかにし、団結による行動で小企業・家族経営の営業とくらしを守ることが民主主義を発揚させます。小企業・家族経営同士の結社の自由と団結権を尊重し、欧米やアジアを含め広く国の内外から経験や知恵と工夫を交流する共同や、経営発展をめざす異業種交流を支援します。
C公正取引に向けた小企業・家族経営の自主的努力を自治体が支援します
 公正取引を確立する上で、国とともに地域に責任を負う自治体が、小企業・家族経営の権利主張を支援できれば、その効果は高くなります。
 公契約条例により、再生産費用を保障する積算単価・マージンを確立して「原価割れ」を防ぐとともに、契約書類に基づく取引の透明化を小企業への過度な負担とならないように配慮しつつ推進します。また「優越的地位の乱用に関するガイドライン」や下請2法(「下請代金支払遅延等防止法」「下請中小企業振興法」)、建設業法などをあらゆるメディアを通じて普及し、説明会を充実させるなど、権利主張の法的根拠を広く明らかにします。
3、均衡ある内需拡大と地域循環型の経済・エネルギー政策を推進します
@農林水産業との連携を強化します
 小企業・家族経営は、歴史的に日本の山河と大地、庶民の生産と労働の中で生成され、地域の風土・資源を活用した生産・流通・サービスを担ってきました。日本列島は、山地や盆地、平野とさまざまな地形と四季折々の気象変化があり、防災や災害復旧でも、地域に急こう配の河川や長大な海岸線、世界有数の地震や火山に対処する方策も地元の事業者に蓄積されてきました。自然と結びついた生業こそ、失ってはならないわが国の宝です。また、開墾、干拓、河川改修、用水事業なども地域住民がともに生きていくための術といえます。
 農林水産業と中小商工業の連携を、単なる経済活動ではなく、食料主権を確保し、国土を保全する施策として探求します。
A小企業・家族経営中心の内需振興策で地域内循環を活性化させます
 大手流通資本による身勝手な出退店は、「買い物難民」を広げ、地元の問屋や卸売市場の機能を壊し、売上を本店に集中させるなど、地域の活力を低下させ、地場産業の振興を阻害しています。大企業の誘致や規制緩和政策によって地域経済の活性化を図ろうとする産業政策を見直し、大企業・大型店の無秩序な出退店を規制します。
 また、内需の拡大には、地域内で仕事と資金を循環させる仕組みをつくることが欠かせません。小企業・家族経営が担ってきた衣食住を中心に、暮らしに必要な製品づくりやサービスの提供を活発にすることが大切です。手間と労力が必要とされる道路・橋、上下水道、河川など生活基盤の維持・改修や福祉のあるまちづくりに小企業・家族経営の力を生かし、安心・安全の地域づくりを進め、内需振興を図ります。
B再生可能エネルギーの利用拡大に小企業・家族経営の力を生かします
 原子力発電の危険性を直視し、再生可能エネルギーの活用を高めることは持続可能な地域づくりの力になり、地球の温暖化対策にも役立ちます。
 太陽光・熱や小水力、小風力などを利用した発電設備はすでに町工場の力が生かされています。地域の特性を踏まえた再生可能エネルギーの自給を進めることによって、小型の発電・蓄電設備の製造や保守点検など中小業者への新たな仕事と雇用が生まれ、その売電収入が地域に循環します。
 再生可能エネルギーの活用を拡大する財源確保のために、国のエネルギー特別会計の活用や、電力会社が独占してきた発電と送配電事業を分離し、あらゆる再生可能エネルギーを電気料金より高い固定価格で買い取る制度を確立します。
4、中小企業基本法を改正し、省庁横断の地域経済振興策を貫きます
@中小企業庁設置法の目的に沿って中小企業基本法を改正します
 中小企業基本法の改悪によって、国の中小企業支援政策は後退・縮小させられてきました。中小企業基本法を改正し、少なくとも、中小企業庁設置法の目的に沿うものにしなければなりません。その内容は「健全な独立の中小企業が、国民経済を健全にし、及び発達させ、経済力の集中を防止し、かつ、企業を営もうとする者に対し、公平な事業活動の機会を確保する」ということです。この間、削除・改定されてきた「大企業と中小企業間の格差と不利の是正」「一部の業者を選別する支援策ではなく既存の中小業者を対象にした救済・活性化と小規模企業者への支援」「国の自立と自主権に基づく輸入の制限・規制」「中小企業団体への支援」を復活させ、より充実させます。
A中小企業庁を内閣府直轄にし、省庁横断で小企業を支援します
 地域住民の合意と参加に基づくまちづくりの推進と小企業支援は深く関わっています。国の「タテ割行政」が、消費者利益との関係でも、公正取引との関係でも大きな弊害となっており、行政組織の総合性、機動性および透明性を向上させる上で、中小企業庁を内閣府直轄にすることが欠かせません。
 日本版・小企業憲章の制定は、それ自体が、政府・省庁の責任を明確にし、閉鎖的体質を改善するものになります。
B中小企業振興基本条例と結び、自治体産業政策を国が後押しします
 地方自治体の中小企業振興の理念、施策の方向を示した「中小企業振興基本条例」が各地で制定され、中小業者の受注や資金繰りを支え、地域経済を守る力となっています。
 すべての自治体が中小企業振興基本条例を制定し、条例による支援、およびその有効性を憲章による政策と結び、小企業・家族経営の多様性を生かすものにします。
 地域の資源や特性、歴史や文化を生かし、衣食住という人間生活の基本的部分を中心とした循環型・内発型の自治体産業政策を国が後押しします。

四、むすびとして
 憲章とは本来、憲法に準じた政策体系の「礎」であり、その基本理念を通じて具体化した施策は絶えず検証・発展されなければなりません。
 世界を見ても、欧州(EU)は小企業憲章に基づき、政策の進捗状況を検証し、新たな発展を図っています。中国では、「社会主義市場経済の重要な構成部分」と明記した憲法をもとに、中小企業促進法などを制定しています。
 こうした実践に学び、日本国憲法の優れた平和と民主主義の諸規定も生かしながら、政策発展を推進することが求められています。
 日本経済が行き詰まり、少子・高齢化が進み、地域社会やコミュニティーの土台が危うくなるなかで、小企業・家族経営の存在と役割発揮の重要性が鮮明になっています。小企業・家族経営こそ、健全で人間性豊かな経済社会を発展させる力です。
 地域に根ざした小企業・家族経営が意欲と希望を持って活躍できる時代を築くために、この憲章に基づく政策実現を図っていきます。

全国商工新聞(2011年7月18日付)
   
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