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国連が56条問題の女性差別で勧告
国連女性差別撤廃委員会(7月20日〜8月7日、ニューヨークの国連本部で開催)はこのほど、女性差別撤廃条約(注)の日本での実施状況の審査結果について最終見解(総括所見)を出しました。全商連婦人部協議会(全婦協)の大石邦子会長と牧野由子事務局長も参加し、所得税法第56条の問題点を訴えていました(8月24日号既報)。最終見解の内容を紹介します。
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国連の女性差別撤廃委員会の様子
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最終見解は全60項目あり、48項目にわたって意見や勧告が出されています。
勧告は「日本政府は条約の全条項を計画的かつ継続的に実行する義務がある」と述べ、最終見解の内容が十分に実施されるように関係省庁・国会・司法官に徹底することを要請。また、条約が法的拘束力のある国際文書であることを認め、条約を国内法で取り入れ、選択議定書(個人が直接国際機関に人権侵害の救済を求めることができる)の批准を検討するよう求めています。
差別規定の改正撤廃を求める
差別的な法規の項目では、民法の改正を要請。前回の最終見解で指摘された婚姻年齢や再婚禁止期間の差別、選択的夫婦別姓、民法その他の法規における嫡出でない子の差別などの差別規定を改正、または撤廃することを求めています。
雇用の項目では、女性に対する差別や不利益な扱いを許さず、差別是正のために法改正を進めるよう提起しています。
女性に対する暴力の項目では、日本軍の慰安婦問題に触れ、「被害者への賠償」「加害者への処罰」を勧告し、「犯罪事実が教科書から削除されている」ことに懸念を表明しました。また、農山漁村女性も含めた「弱い立場にある女性」の実態と要求に対する施策を次回報告し、また政策やプログラムを導入するよう要請しています。
56条廃止の運動大きく励ます
所得税法第56条問題については、審査段階で国連委員から「56条の否定的影響はどうなっているのか」と質問がありましたが、最終見解では触れられませんでした。しかし全婦協は、女性差別撤廃条約の第2条「差別法規」で「家族従業者の差別撤廃」として、「所得税法第56条廃止」を同委員会を通じて初めて世界に知らせました。
国際的な人権機関で「中小業者とともに働く家族従業者の8割は女性であり、労働の対価が税法で事業主の所得とされるのは人権侵害ではないか」と取り上げられたことは、56条廃止の運動を大きく励ますものです。
(注)女性差別撤廃条約
第34回国連総会(1979年)で採択。企業や家庭などあらゆる領域で差別をなくし、法律だけでなく規則・慣習・慣行などの是正を求め、母性保護も規定している。09年7月現在、国連加盟国196のうち186カ国が締約。日本は85年に批准しています。
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