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  トップページ > 経営のページ > 公正取引 > 全国商工新聞 第2873号 3月30日付
 
経営 公正取引
 

セブン・イレブン本部を公取が独禁法違反で調査
FC加盟店の権利守る法制化の必要性が浮きぼり


■勇気あるオーナーたちの告発におされて
 公正取引委員会(公取)は先ごろ、独占禁止法違反容疑で、コンビニ最大手のセブン−イレブン・ジャパンを立ち入り調査しました。弁当など売れ残った商品を値引きした加盟店に対し、契約打ち切りをにおわせるなどして、値引きを不当に制限した疑いです。「本部が値引きを禁止するのは不当だ」と立ち上がったオーナーたちの告発が行政を動かしました。

■大量の食品廃棄強要、値引きは禁止?
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コンビニ最大手のセブン−イレブンは全国1万2000
の加盟店を持ち年間2兆5000億円を売上げている
 「オーナーたちの思いが届いてようやく、公取が立ち入り調査に踏み切った。値引き販売の禁止を含めて、これまで本部が加盟店に対してどんなに不当なことを強要していたか、怒りは収まらない。徹底的に調査して、厳しい処分を出してほしい」と激しい口調で訴えるのは、セブン−イレブンのオーナーになって10年になる鈴木肇さん(仮名・55歳)。本部から値引き販売を禁止され、苦しめられてきました。「値引きをするかどうか、オーナーが決められないのはおかしい。商品価格を決めるのはオーナーの権限ではないのか。大量の食品を廃棄するのも倫理上、問題がある」と憤りをぶつけます。立ち入り調査が発表されてから、鈴木さんは見切り商品の値下げ禁止を強要されたときの書類を公取に「申告」しました。

■スーパーは賞味期限で値下げ販売
 スーパーでは賞味期限が近づいた食品は値下げして販売されていますが、コンビニではなぜ値下げが禁止されているのか――。それは会計上のカラクリ。コンビニでは弁当など廃棄した商品にもロスチャージが課せられ、値下げをするとそのロスチャージ額が本部に入る額が減る仕組みになっているのです。
 鈴木さんの店舗の損益計算書を見ると、最高で年間500万円を超える商品が廃棄されています。本部はその廃棄商品額を売上原価から差し引いているのです。売上総利益が膨らみ、それに伴ってチャージ額が増え、利益が減ります(別表)。

    ある現役加盟店の会計上のカラクリ計算例
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 上記は現役のセブン―イレブン加盟店オーナー・北一郎さん(仮名)の例。表左は、北さんが経営している店舗の損益計算書。表右は左の損益計算書を一般に妥当と認められる会計処理実務に基づき計算しなおしたもの(北野弘久氏が監修。1,000円以下は切り捨て)。
 見ての通り、左表と右表には同じ額の売り上げが計上されている。だが、左表で「総売上原価」から、「商品廃棄損等」「棚卸増減」等が差し引かれた(6:営業費の項目に計上した)結果、原価は圧縮され、その分売上総利益が数字上は大きくなっている。これは、仮に4:「セブン―イレブン・チャージ」を支払う必要が無い場合、最終的な利益も変わるわけではない。だが、各加盟店がフランチャイズ本部に支払う「セブン―イレブン・チャージ」はあくまで3:「売上総利益」を元に計算されることから、左表の会計法では、必然的にチャージの負担額も大きくなることになる。こうして、左表と右表の「チャージ」差額はこの月だけで44万2,000円もの金額に膨れ上がる。
 北さんの店は、本来ならばこの月62万8,000円の黒字を出せたはずだが、本部に支払うチャージ負担が44万円分も増えることによって、手元に残る利益は、わずか3分の1以下、18万6,000円にまで圧縮されている。

『セブン―イレブンの正体』(金曜日出版)から 本紙作成
 

■5年前、近くに説明なく新店舗オープン
 鈴木さんはこうした会計処理をおかしいと感じていましたが、本部には何も言えずに、もんもんとしていました。本部への不信を募らせたのは5年前。本部は何の説明もなく、近くに駐車場や店舗面積が広い新店舗をオープンさせ、鈴木さんの店舗の売り上げは激減。毎週、近所にチラシを手配りし、新商品が出たら販売に力を入れるなどの努力をしましたが、売り上げは回復せず、前年比割れの状態が続きました。
 06年のバレンタインデーのときのこと。2月14日を過ぎてから、残ったチョコレートを100円均一で販売しました。本部の担当者は「何をやっているんですか。契約解除に値しますよ」と言い、売値の半値まで戻すように指示。その上で、半値との差額を売り上げに計上し、現金をレジに入金させました(このときの書類を公取に「申告」)。
 「なぜ、こんな理不尽なことをさせられるのか」。やり場のない怒りを感じた鈴木さんはインターネットでオーナーたちと情報を交換し、勉強会にも参加。値下げ販売禁止の強要が本部の優越的地位を利用した不公正な取引だと確信しました。

■「FC法制定まで断固たたかう!」決意
 鈴木さんは昨年3月、公取に出向き、「商品価格を決めるのはオーナー」との回答を得て、本部に値下げ販売を申し出ました。5月になってようやく担当者が来て「値下げはちょっと待ってほしい。売り上げを伸ばすための対策を考える」と提案。建物を移動して駐車場を拡大する対策案を示してきましたが、対策は一向に進みませんでした。
 「神奈川のマンションを売り払って引っ越し、必死に働いてきた。法律で規制しないから、本部の横暴がまかり通る。会計処理を一般会計に戻し、加盟店の権利を保護するFC(フランチャイズ)法を制定してほしい。断固たたかう」と鈴木さんは決意しています。


・「優越的地位の乱用」を公取委員長が国会答弁
 売れ残り商品や見切り商品販売を本部が制限している問題について、日本共産党の塩川鉄也衆院議員が経済産業委員会(07年6月6日)で取り上げ、公正取引委員会の竹島一彦委員長は「正当な理由がないのに、見切り販売を制限して廃棄することを余儀なくされることを本部がした場合には独禁法上、優越的地位の乱用にあたる場合がある」と明言しています。


・FC問題弁護士連絡会で相談受付中 中野和子弁護士のはなし
 今回、公正取引委員会がセブン−イレブンの本部に立ち入り調査をしたのは、値引き(見切り販売)禁止強要の実態をオーナーが告発するなどの行動が大きな力になったと思います。
 公取は「不公正な取引」があったとして「排除命令」(独禁法20条)を出す可能性があります。「排除命令」が出れば、訴訟を起こして損害賠償を請求できます。
 今、大事なのはどのチェーンに対しても本部に書面で値下げしたいことを申し入れ、「値下げはやってはいけない」と言われた場合は、書面に書いてもらうこと。それを値引き制限の証拠として公取に「申告」して下さい。
 また、特段の証拠がなくても、過去に申し出をして本部に拒絶された場合、その前後1年間の損益計算書と「廃棄が少ない。もっと出すように」などという指導レポートを添えて申告することです。
 弁護団のHPで相談を受け付けていますので、ぜひ活用して下さい。


・本部契約書に規定はなく、民法違反で無効−北野弘久日大名誉教授 
 店の経営上通常生じる商品廃棄損は、自動的に売上原価を構成する。このことは大企業を含めて企業会計の常識。国税庁税務大学校でもそのように教えている。本部の契約書には単に「売上総利益」(粗利益)にチャージを課するとあるだけで、商品廃棄損は売上原価を構成しないという特約規定がない。
 実は、同特約規定は本部の株式上場前までは存在した。本部は株式上場審査にあたって審査に不利になるので、密かに同特約規定を削除。本部はこのことを秘匿しかつ特段の説明もしないで、オーナーへの本件契約を強要。私はこのような契約は民法95条(要素の錯誤)違反で無効、仮にかつてのように明文の特約規定を設けたとしても、同特約規定自体が民法90条(公序良俗)違反で無効、と考えている。
 要するに本部は実際に商品廃棄分までにも高率のチャージを課しているわけである。商品廃棄分にまでチャージが課されると、よほどの立地条件に恵まれない限り、店を維持することはできない。
 本部の売上値引禁止強要は独占禁止法19条(不公正な取引)違反であるが、その背景には値引き販売をすると商品廃棄にはならないので、本部としては廃棄分チャージが取れなくなるという事情がある。今回の売上値引禁止強要も、本部の「現代の蟹工船」「詐欺的戦略」の一環であることを洞察すべきだ。

   
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