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  トップページ > 平和・民主主義のページ > 平和・憲法 > 全国商工新聞 第3208号3月21日付
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平和・憲法
 

戦争法Q&A 田中隆さん=自由法曹団常任理事 に聞く 野党と市民の共同広げ戦争法廃止の政府へ

 違憲立法の戦争法(安保法制)が3月29日に施行されます。しかし、世論調査(「毎日」5、6日実施)では戦争法を「評価しない」が49%を占めるなど、反対の世論は衰えていません。廃案を求める国民多数の声を受け、民主、共産、社民、維新、生活の野党5党が2月19日、戦争法廃止法案を衆院に共同提出しました。これを後押しするのが広範な市民が進める戦争法廃止を求める2000万人署名です。署名運動を進めるために、戦争法の危険な中身や中小業者への影響などを自由法曹団常任幹事の田中隆弁護士がQ&Aで解説します。

戦争法で国民を守る? 世界中に自衛隊が展開

Q戦争法廃止署名をお願いすると「国民を守るための法律は必要」と、断られました。「国民を守る法律」というのは本当でしょうか?
A戦争法は「国民を守るための法律」ではありません。

 戦争法に先立ち昨年4月、「日米防衛協力の指針」(ガイドライン)が改定されました。日本有事や周辺事態に限定されていたガイドラインを世界規模に拡大し、どのような事態に対してでも日米両軍の共同対処(共同作戦)を可能にするものです。
 戦争法は改定ガイドラインを実行するための「法律版」で、いつでも、どこででも、自衛隊が切れ目なく軍事行動を展開することを可能にしようとするものです。
 戦争法が全面発動されれば、米国とともに「海外で戦争する国」になり、中国、北朝鮮やイスラム過激派などと軍事的に対抗することになります。軍事的な緊張を高めることにはなっても、国民を守ることにはなりません。

自衛隊の活動内容は? 「米国の敵」にも武力行使

Q戦争法が発動されると、日本が米国と一緒に戦うようになると聞きました。具体的にどんな活動をするのでしょうか?
A自衛隊が「米国の敵」に武力を行使します。

 戦争法制は10本の法律(※)を「改正」する平和安全法制整備法と、海外派兵を恒久化する国際平和支援法の二つからなり、これまでできなかった「海外での戦争」が解禁されました。
 主なものを列挙すると―。
a、存立危機事態での武力行使(集団的自衛権行使)
 日本が武力攻撃を受けていなくても、政府の判断で存立危機事態を認定して「米国の戦争」に参戦し、自衛隊は海外で「米国の敵」に武力を行使して戦闘に突入します。原則として国会の事前承認が必要とされていますが、「米国の戦争」についての情報は秘密保護法で遮断されるでしょう。
b、海外で自衛隊が米軍を兵站支援
 重要影響事態法または国際平和支援法で海外に派兵された自衛隊が、戦闘を行っている米軍に、補給(武器を除く)、輸送、修理・整備、医療、通信などを実施します。「テロ特措法」やイラク特措法にあった「非戦闘地域」の限定はなくなり、「現に戦闘を行っている現場」以外はどこででも派兵可能です。
c、PKO法で治安維持活動
 PKO法によるPKO活動に、安全確保活動(治安維持活動)や「駆けつけ警護」が追加され、国連が管轄しない「国際連携平和安全活動」(アフガン戦争終了後の多国籍軍による治安維持部隊など)への参加も可能になります。自衛隊による「任務遂行のための武器の使用」(妨害排除のための発砲など)も認められます。
d、平時からの米艦警護
 米国の要請を受けて、平時から自衛隊が米軍部隊の警護にあたり、米軍部隊への発砲などがあれば武器を使って反撃します(武器防護のための武器使用)。
 いずれも極めて攻撃的な活動です。
※自衛隊法、国際平和協力法(国連PKO法)、重要影響事態法、船舶検査法、武力攻撃・存立危機事態法、米軍等行動関連措置法、特定公共施設利用法、海上輸送規制法、捕虜取り扱い法、国家安全保障会議設置法

戦争法は廃止できる? 圧倒的な民意示そう

Q戦争法廃止の展望は?
A選挙で戦争法廃止を求める議席を多数にすることです。

 戦争法に反対は60%、「この国会での成立」に反対は80%という成立直後の世論調査は、戦争法が国民の意思に反して強行されたことを示しています。また、ほとんどの憲法研究者や歴代内閣法制局長官・元最高裁判事が違憲とし、弁護士が全員加入する日弁連・弁護士会が反対を表明するなど、法律関係者は一致して違憲としました。戦争法は、立憲主義を破壊する違憲立法にほかなりません。
 2月19日、民主・共産・維新・社民・生活の5党は、戦争法廃止法案を国会に提出するとともに、廃止のための選挙協力を確認しました。7月の参議院選挙で「戦争法の廃止を求める勢力」が過半数の議席を確保すれば、戦争法の発動を阻止することができ、総選挙でも勝利すれば廃止の展望が広がります。「2000万人署名」をはじめ、戦争法廃止を求める声をさらに大きくしていくことが、焦眉の課題です。

自衛隊は安全なの? 攻撃を受ける可能性

Q「自衛隊員の安全を確保する」と言っていますが…
A海外の戦争で自衛隊が攻撃を受けます。

 これまでは、自衛隊が武力を行使するのは日本に武力攻撃があった場合に限られ、海外で米軍等の支援を行うのは「非戦闘地域」に限定されていました。これまで自衛隊が、一発も発砲せず、一人も殺さず、一人も殺されなかったのは、こうした厳格な「縛り」があったためです。
 戦争法で様相は一変します。
 米国が行っている「反テロ戦争」などに参戦すれば、日本も間断なく戦争を続けることになります。「まず兵站が狙われる」が軍事の常識で、米軍が戦闘を展開している「戦闘地域」で米軍へ補給・輸送を行えば、自衛隊が攻撃を受ける可能性は大きくなります。
 戦争法の発動第1号になると思われるのが南スーダンでのPKO活動で、政府は「駆けつけ警護」を活動に追加しようとしています。南スーダンは大統領派と副大統領派の間で内戦状態になっており、「駆けつけ警護」を行えばいずれかの勢力と交戦することにならざるを得ません。
 戦争法で自衛隊を送り出そうとする地域は「戦闘が行われている危険地域」で、行おうとする活動は国際的に見れば「軍事行動」以外のなにものでもなく、自衛隊員が安全なわけはありません。「自衛隊員の安全を確保する」との説明は、無責任極まりないものです。

中小業者も動員対象? 民間の協力が不可欠

Q中小業者も戦争に協力させられるのですか?
A民間の協力・動員は不可欠です。

 民間の協力・動員がなければ戦争はできません。土地・建物の使用、物資の保管命令(収用)や建設・輸送・医療従事者への業務従事命令(自衛隊法103条)は、そのための規定です。「徴兵は憲法違反」(政府答弁)としていますが、強制的な「徴発・徴用」は厳然として存在しています。
 自衛隊法103条が発動できない「海外の戦争」でも民間の協力・動員は不可欠で、「民間企業との契約」の形をとります。すでに「アフガン戦争で派遣された護衛艦の修理に軍需産業の技術者を派遣」「イラクへの陸上自衛隊の輸送に民間船舶を利用」などの実例もあります。「海外での戦争」が拡大して物資の輸送や施設の建築などに民間が組み込まれたら、中小企業の運送業者や建設業者などは元請け企業からの圧力で戦地に送られることになりかねません。
 「海外での戦争」が波及し、「敵」がテロやゲリラを含めた反撃に出れば、この国が戦場となり、武力攻撃事態(個別的自衛権)が認定されるでしょう。そうなれば自衛隊法103条などが全面発動され、「中小業者の扱う物資や燃料に保管命令」「工務店に業務従事命令」「自営業者の店舗建物を使用(収用)」などが現実のものになります。
 「海外で戦争をする国」になることは、「敵のいる社会」をつくることを意味しています。その社会では、愛国心や相互監視が要求され、自由が圧迫されることになります。戦争法を認めるかどうかは、「国のあり方」「社会のあり方」の問題で、自衛隊と自衛隊員だけの問題ではありません。

国民も巻き込まれる? 日本がテロの標的に

Q戦争法が発動されると国民も巻き込まれるのでしょうか。
A米国の「対テロ戦争」を支援すれば、日本もテロの標的になります。

 存立危機事態では、武力攻撃を受けていないにもかかわらず「米国の敵」に武力を行使します。「敵」の側から見れば、「日本を攻撃していないのに先制攻撃を受けた」となります。重要影響事態法や国際平和支援法で、戦闘を行っている米軍の近くで自衛隊が補給、輸送などの兵站活動を行えば、「敵」は「日本も攻撃に加わった」と考えるでしょう。「敵」が「テロ攻撃」を含めた反撃に出ることは必至です。
 そもそも「米国の戦争」は、圧倒的な空軍力や海軍力で正規軍や陣地をせん滅した後に、「地上戦」にかかるのが「常道」です。相手の軍隊は反撃などほとんどできず、「同盟国へのテロ攻撃」や「民衆にまぎれてのゲリラ攻撃」が主要な反撃手段にならざるを得ません。イラク戦争におけるスペインでのテロや、ISによるフランス等でのテロは、その現れといえるでしょう。
 戦争法を発動すれば、日本も同じ道をたどることになります。

全国商工新聞(2016年3月21日付)
 
   

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