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  トップページ > 業種のページ > 製造・小売 > 全国商工新聞 第2884号 6月22日付
 
業種 製造・小売
 

変わる業界・新市場に挑戦する加賀友禅

激減する着物需要の打開を

 加賀百万石の武家文化の中で生まれ発展した加賀友禅―。絹生地に多彩な色で模様を染める技法で、石川県金沢の伝統的工芸品のひとつです。しかし加賀友禅の代名詞ともいえる着物は需要が激減し、市場は縮小。新しい市場・商品開発への挑戦が求められる中、作り手(作家)と卸業者(商社)の関係にも変化が生まれています。

 <加賀友禅とは>
 加賀友禅は500年前の加賀染を主体とし、江戸享保年間に京都から加賀に移った宮崎友禅斎がその技法を確立、発展を遂げたといわれます。「友禅」とは、布生地に手描き模様を描く際、色がにじむのを防ぐため米の糊を使う「技法」です。加賀友禅は、華麗な図案調の京友禅と比べ、「加賀五彩」と呼ばれる色を基調とし、草花模様を中心とする写実的な絵画調が大きな特徴といわれます。

作家・職人が懇話会結成
官民あげた協力・共同で


あでやかな模様が映える加賀友禅の反物(上)と防染糊で描かれた輪郭線(糸目)の模様に筆で染料を染めつける彩色作業(下)
 京都、沖縄と並び多くの伝統的工芸品を抱える石川県金沢市。加賀友禅はじめ、その種類は九谷焼、金沢漆器、金沢箔など26業種に及び、独自の文化を創りあげてきました。
 「しかし風習の衰退や生活の変化の中で着物の需要は大幅に減り、リーマンショックやらで消費ムードも低い。加賀友禅の業界は厳しい中で耐えているのが実際ですよ」
 商社や作家、職人などでつくる協同組合加賀染振興協会の石山外司郎理事長はこう言って表情を引き締めました。
 厳しさを裏付ける指標の一つが、加賀友禅の生産額。組合によると、最盛期の90年代初頭には200億円を超え「加賀友禅の作家が長者番付にも名前を連ねたこともあった」ものの、現在は42億円。20年間で5分の1に激減しました。
 金沢市が昨年8月に行った「伝統工芸品産業実態調査」でも加賀友禅の売り上げは「減少傾向」との回答が9割を超え、8割が受注量が減少したと答えています。
 組合員の8割を占める友禅作家も年々減少。225人が組合に登録しているものの「加賀友禅だけで生計を立てている作家は50人にも満たないのではないか」という声すら上がっています。

 組合運営にも変化を起こす
 売り上げの激減は、伝統文化を支えてきた組合にも新たな変化をもたらしつつあります。
 主な製作工程だけで九つある加賀友禅は、分業の発展とともに職種も分化。組合員の業種も八つに分かれています。構成員の8割は作家ですが、13の商社が運営の中心を担ってきました。
 「しかしこの5年間、商社から作家への発注がほとんどない。家、土地を売った作家も多い。それにもかかわらず、組合は有効な手を打ってこなかった」。こう話すのは金沢民主商工会副会長で(のり)置業の北澤寛司さん。
 昨年9月、作家・職人とともに「加賀友禅懇話会」を結成。同会事務局長も務める北澤さんは「この10年で商社が発注する製品単価は最盛期の半分から3分の1。もっと友禅の作り手の立場に立った組合運営をしてほしいという思いから立ち上げたんです」と言います。
 一方、石山理事長は「作家や職人の方にしわ寄せがいっているのは分かっているが、組合としてバックアップしようにも展示会を開く資金も苦しいのが実態」と苦悩をにじませます。

 作家たちの新しい挑戦
ガラスに友禅の布をコーティングした「クリスタル友禅」(右)と友禅を衝立に描いた久恒さんの作品(左)
 しかし、作家たちの新しい挑戦も始まっています。
 加賀友禅に携わって36年になる久恒俊治さんもその一人。懇話会代表世話人でもある久恒さんは20年前に「加賀友禅 工房久恒」を立ち上げ、需要が減ってきた10年前から「待っていたら仕事にならない」と自ら商品開発と営業に力を入れてきました。
 「加賀友禅」の技法を駆使し、着物だけでなく、木、皿、衝立(ついたて)行灯(あんどん)、金箔に手描き友禅を描いたものや、クリスタル友禅、友禅のランチョンマットなどを作成。作品をもって東京に出かけ、デパートでの展示・販売はじめ、銀座のすし店、料理店にも作品が置かれ、大手会社からも製作の依頼が出始めました。
 金沢市も7月には「加賀友禅技術振興研究所」を組合のビル内に開設することを決定。「技術の継承、後継者育成もあるが、着物を本流としながらも新商品開発、販路拡大に特に力を入れたい」と担当者は力を込めます。
 官民あげて力を入れる新商品開発と市場の拡大―。そのカギを握るのは、石山理事長、北澤氏ともに強調する「作家、職人、商社の協力・共同」です。
 厳しい現状にどう立ち向かうか。久恒さんは言います。
 「10年たてば加賀友禅はもっと厳しくなる。一人二人の力では、文化を支えられない。苦しい今こそ、必死で動き、もがくことで新しいものが見えてくるんですよ」
   
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